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今回は、ニコ生ゼミ04月07日(#276)から、ハイライトをお届けいたします。
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「【『平成狸合戦ぽんぽこ』解説 2 】 宮崎駿が試写会で涙した本当の理由」
「なぜ、『平成狸合戦ぽんぽこ』は自然保護がテーマなのに、自然を美しく描かないのか?」って。
この理由も、今の話に照らし合わせてみると分かるんだ。
宮崎駿がやってるみたいな、たとえば、木や苔の上を伝う雫を描いて、それでもって美しく見せたり、もしくはシシ神が地面を踏んだらそこから花が咲く。「それが美しいと言っても、そんなシーン、実際にないじゃん」と。
それで自然を美しいと思った子供が、自然に行ったらどう思うのか?
「ジブリみたいじゃないじゃん。もっとジブリみたいなところはないの? もっとジブリみたいな綺麗なところはないの?」と、世界の絶景みたいなところに行って、「うわー、まるでジブリみたいだね!」と喜ぶようになってしまう。
果たしてこれが「自然は美しい」と言っていることになるのか、と。
そんなふうに、もう本当に本質的な大批判をするんだ。
高畑勲というのは、別に宮崎駿だけじゃなく、自分が以前に作った物をも全否定して、「常に “新しいもの” を作りたい」と考える作家だから。
それをセルの動きや水滴でもって、もっと美しく見せようというのは、かえって自然本来の美しさを幻滅させてしまう。
「まるでジブリの世界みたいに美しい」というのは、決して褒め言葉ではないよ。
「我々が大衆に嘘の美しさというのを与えすぎたから、みんなジブリとの比較でしか自然を語れなくなってしまった」ということになるんだ。
共産主義者的に言えば「宗教はアヘン」なんだけど、今や「ファンタジーはアヘンであって、今、アニメを作る者は、そんなアヘン中毒から観客を救い出すべきだ」というふうに高畑さんは言っている。
なぜ宮崎駿が泣いたのかというと、僕が思うに「この全否定が嬉しかったから」なんだよ。
「やっと高畑さんが戻って来てくれた!」と。
『紅の豚』を作ってしまった後、宮崎駿はマルクス主義者としては「そういうのはな、人間同士でやんな。俺はファンタジーで構わないよ」なんて、ちょっとキザに逃げてたところがあるんだよね。
しかし、そんなふうに「そういうのは人間同士でやんな」とポルコ・ロッソのカッコいいセリフで逃げようとした宮崎駿を、高畑勲は「おい、ちょっ待てよ!」と、キムタクみたいに呼び止めたわけだよ(笑)。
「俺たちが真剣にアニメを作ったって、所詮、客にとってはデートや家族で楽しむことしかしない。みんな心が綺麗になるファンタジーばっかり見たがる。イコールみんな無限にアヘンを欲しがる。……それでも俺とお前は、ちゃんとしたアニメを作らないとダメだろ!?」と、説教をしてくれたわけだよね。
だから、宮崎駿は、おいおい泣いちゃったと、僕はそうだと思ってるんだけども。
だからね、心を入れ替えて『もののけ姫』が作れるわけだよ。
でなかったら、ポルコ・ロッソを作った後に『もののけ姫』には行かないよ。
あれは、本当に、高畑勲に大説教されて、ちょっと心を入れ替えたから出来たものなんだよ。
それぞれのキャラクターが誰かということがわかるように作ってあるんですよ。
あのなかに出てきた権太、あれは宮さんだよね。
特攻隊で死んじゃうんですけどね。で、正吉は自分だしね。
映画が完成した日のことは、忘れもしませんけども、高畑さんと宮さんとぼくで並んで観てたら、最初から最後まで泣いてたのは宮さんですよ。
だって、自分たちの青春が描かれてたから。
高畑さんはそういうの得意ですよね。
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つまり『ブレードランナー』というのは、ファンタジーを“信じさせる”方向に出来ているんだけど。
でも、『平成狸合戦ぽんぽこ』を見て、「昔は狸って喋って化けたんだよ」とか、「実は、隠してるだけで、人間の中にも狸が住んでるんだよ」なんて言い出す人はいない。
つまり『ぽんぽこ』というのは、ファンタジーとして成立してないんだ。
あの中に描かれている世界というのは僕らにとって「あるべきもの」とか「いいもの」、「憧れるもの」に入らない。どちらかというと、「変なもの」になっているんだよね。
そんな、どちらも「人間でないものが、人間に憧れて、人間を憎んで、人間に近づき過ぎた故に滅ぼされる」という姿を描いたコインの裏表。
『ブレードランナー』と『平成狸合戦ぽんぽこ』は、そんな作品じゃないかというふうに思います。
今日は「『ぽんぽこ』って、実は『ブレードランナー』なんだぜ」ということだけ、覚えて帰ってくれたら結構です(笑)。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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