岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2020/01/03
今日は、2019/12/15配信の岡田斗司夫ゼミ「『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』特集」からハイライトをお届けします。
結論を言います。
『スター・ウォーズ』だと思うからわからないんですよ。あれはね、『ドラゴンボール』だと思ってください。
『ドラゴンボール』だと思ったら、急に全体がわかりやすくなりますから。
2015年から始まった、続スター・ウォーズというのは、前のシリーズとは時代が違う、後の世代のお話なんですけど。そこに出て来るキャラクターというのは、だいたい前のシリーズのキャラクターの子供達なんですね。
だから、『ドラゴンボール』で言えば、孫悟空ではなくて、孫悟飯が主人公になったと思ってください。『ドラゴンボール』にもあるじゃないですか。ハイスクール編というヤツが。僕、結構、好きなんですけど。
悟飯君が高校生になって、学校に通いながら、謎のスーパーヒーローになって、同級生のビーデルちゃんという女の子から「あんた怪しいんじゃないの?」とか言われる話。アレだと思ってください。アレをやっているんですよ、延々と。
ところが、みんなは「悟空は出てこないの?」「悟空はまだ?」と言う。作っている側としては、「いや、この新キャラの高校生の悟飯を見てください」って言ってるんですけど。
その高校生の悟飯に当たるのが、カイロ・レンとか、レイという新キャラなんですよ。ところが、その新キャラの裏にいる、ルークとかハン・ソロというヤツが、もうお馴染みすぎて、みんな「あいつらはまだなの? まだなの?」って思ってる。その結果、『ドラゴンボール』では、やっぱり孫悟飯は主役になれなかったわけですね。
今の『スター・ウォーズ』シリーズの悲劇というのは「レイとかカイロ・レンというキャラが弱い」と言うか、「前のキャラが強過ぎる」ってことなんです。やっぱり、みんな、ベジータや悟空が出てきたら、喜んじゃうんですよ。その辺りだと思ってください。
ということで、前の主人公の悟空のイメージが強過ぎて、なかなか主人公になりきれなかった孫悟飯の話というのが、今の『スター・ウォーズ』なんです。
今回の主人公のレイというも、まあ、前のシリーズのルークやアナキンのイメージが強すぎて、霞んでしまっている。
まあ、だから、『最後のジェダイ』を楽しむ1つ目のコツは、「『最後のジェダイ』って、やっと孫悟空が出てくる話」なんですよ。つまりルーク・スカイウォーカーが出てくるんですね。
なので、「これはルーク・スカイウォーカーを見る話だ」と割り切って見たら、かなり楽になるんですね。
『最後のジェダイ』は、レイがルーク・スカイウォーカーに会うところからスタートします。
というか、正直に言うと、その前に20分もあるんですけども。レジスタンスとファースト・オーダーという、2つのやつらの宇宙船の艦隊決戦とかがあるんですけどね。ここは、録画で十分なんですよ。金曜ロードショーで見る時も、最初の20分は録画しておくだけでいいです。見なくても大丈夫です。
とにかく、「レイという身体中に包帯巻いた柔道着みたいな服を着たお姉ちゃんが、ルーク・スカイウォーカーに会う」という、「ようやっと悟飯君が悟空に再会する」というシーンを、ワクワクしながら見てください。
「やっと悟空と悟飯が会えたぞ! どんなやり取りをするんだろう? オラ、ワクワクすっぞ!」みたいな感じで見てると、ちょうどなんですよ。艦隊決戦は、後でビデオで見るので大丈夫です。
孤児の悟飯君は、宇宙の最果ての島みたいなところで、もはや世捨て人になった孫悟空と会うんですよ。
まあ、この悟空は、本当のお父さんではないので、拗ねてた時期のピッコロさんみたいなものだと思ってください。
「ピッコロさん、僕を修行して鍛えてください!」と悟飯君は言うんですけど、ピッコロさんは「俺はもう地球とは関係ない」とか言う。そんなところから始まるんですよね。
ところが、悟飯君はなんでこんな所に来たのかと言うと、フリーザ一味みたいな敵がいるわけですね。本当はファースト・オーダーと言うんですけど、それも、もう覚えなくていいです。
「フリーザ一味みたいなやつらから宇宙を救ってください」と言いに、ピッコロさんところに来たんですけども、ピッコロは無視した。仕方なく、修行だけをさせてもらうんですよ。いわゆる『ドラゴンボール』で言う「気」の修行ですね。気の修行のことをこの世界では「フォース」って言うんですけど。
あの、『ドラゴンボール』の気と『スター・ウォーズ』のフォースは、ほぼ同じ意味だと思って問題ないです。それを使って飛ぶことも出来れば、場合によってはレーザー光線止めることも出来るという。「何でもありだ」と思っておいてください。わりと似てるんですよ、フォースと気って。
そうやって押しかけ弟子になるんですけども、ピッコロは冷たく、「関係ない、関係ない」と言うんですね。
どうも、ピッコロさんの心の中には、昔の弟子に裏切られたというトラウマがあるみたいなんですね。この昔の弟子は、カイロ・レンというやつなんですけど、まあ、ベジータみたいなやつだと思ってください。
この辺から、『最後のジェダイ』という映画は、レイという主人公の女の子はどうでもよくなって、ルーク・スカイウォーカーの話がどんどん面白くなっていくんですよ。
なので、ルークは後に……彼には、すでに死んでいる亀仙人みたいな師匠がいるんですよ。小柄な亀仙人みたいなヨーダっていう師匠なんですけど。まあまあ、死んだ亀仙人と話したり、「オラがいないほうが、宇宙のためにもいいんだ」みたいな、一時期の悟空みたいなことを言い出したりするんですけど。
この辺まで見たら、ようやっと巻き戻して、最初に録画したレジスタンスとファースト・オーダーの宇宙艦隊の決戦を見てもいいです。
それを見ると、ずーっと追っかけっこやってて、いよいよ「燃料がないよ! どうしよう!」という話になっています。
その途中で、年を取ったブルマみたいなおばさんの、レイア姫というキャラクターが出てくるんですけど、そのレイア姫が真空の宇宙空間の中にバーンと吹っ飛ばされるんですよ。
そしたら、気の力、フォースの力で戻って来たりするんですけど。あれも、『ドラゴンボール』の舞空術だと思えば納得出来ると思います。「宇宙空間に吹っ飛ばされたブルマが舞空術で戻ってくるという話だ」と思ってくれたら、まあ、ほぼ間違いないですね。
この宇宙艦隊に追いかけられるという追いかけっこを解決するために「ヤムチャみたいな黒人とアジア女とのコンビが、別の星に行く」というくだりがあるんですけど、後で、これが全くの無駄足だったとわかります。
本当に「何のためにこのシーン入れたの?」というような話だから、ここも後で時間が空いた時に見るので大丈夫です。
『最後のジェダイ』って、こういう実は要らなかった話がすごい多いんですよ。
これって、それぞれのキャラクターを描くためには必要なんですよ。「ストーリーの本質には関係ないんだけど、キャラクターを描くために必要」という。
つまり、これって、どう考えても、テレビシリーズ用の脚本なんですよ。テレビシリーズで考えていた、もともとのシナリオを、無理矢理、映画にしたような感じになったから、こんなことになったんだと思うんですけども。
とにかく、レジスタンスの人達は、ようやっと隠れ家の星に逃げ込んだ。
その一方で、孫悟飯ことレイは、因縁のベジータ、つまりカイロ・レンにとっ捕まって、フリーザ様の前に連れて行かれます。しかし、ここでまさかのベジータの裏切りで、フリーザ様は死んでしまうわけですね。
「フリーザ様」ってずっと言ってますけど、本当はファースト・オーダーのスノークっていう悪いやつです。まあ、でも、もうフリーザと覚えて大丈夫です。
ここで感動の「孫悟飯とベジータが2人で力を合わせて戦う」という良い展開があるんですけど。しかし、ベジータが「俺達2人で宇宙を支配しよう」と、まあ、ベジータだったらいかにも言いそうなことを、カイロ・レンというヤツが言うんです。それに、レイはドン引きして、そのまま逃げてしまう。
フラれちゃったベジータは、かつての同僚で今は部下の、ナッパみたいな、軍服を着たヤツがいるんですけど。そのナッパと一緒にムキになってレジスタンスの隠れ家に最後の攻撃を仕掛けに行くんですよね。
この辺りも、もう、見ててちょっとイライラします。
なぜかと言うと、レジスタンスって、さっきの追っかけっこの結果、もう、ほとんどが死んでるんですよ。最後の隠れ家みたいな星に行った時には、30人くらいしか残ってないんです。「30人のレジスタンスをそんなムキになって追いかけるか?」という問題が1つ目。
もう1つは、追いかけて行ったファースト・オーダーの宇宙艦隊が……『ジュラシック・パーク』の第1作で女の博士役をやってたローラ・ダーンという役者がいるじゃないですか。このローラ・ダーンが、宇宙船の艦長になっていて、その人が最後にワープを使った特攻を掛けるんですね。そしたら、それだけでファースト・オーダーの宇宙戦艦は、ほぼ全滅しちゃうんです。「そんな手があるんだったら、なぜ『スター・ウォーズ』の第1作から使わないんだ?」と。
そんな、ワープ特攻のおかげで、ファースト・オーダー艦隊は、ほぼ全滅なんですよ。なのに、意地になって隠れ家の惑星へ乗り込んで行くという。
片や、逃げる30人程度のレジスタンス。片や、ジュラシック・パークのローラ・ダーンにやられてしまい、僅かな残存勢力のファースト・オーダー。そんなのが、隠れ家惑星で最後の対決するんですけど。
……いや、疑う人がいるかもわからないですけど、本当に『最後のジェダイ』ってこんな話ですからね? これを最初に頭の中に入れておかないと、何を見ているのかわからなくなるんですよ。
さっき話した「途中で関係ない星に行く」っていうシーンでも、そこはギャンブルばっかりやっている惑星なんですけども、見せ場はいっぱいあるんですよ。でも、それを本気で見ていると、「あれ? これ、何の話だっけ?」ってわからなくなるんですけど。
メインストーリー、今言ったようなものなんですね。
さて、いよいよレジスタンスは全滅かと思ったら、そこにルーク・スカイウォーカーが瞬間移動で現れるんです。
もう、本当にアレですよね。「オラ、ナントカという星で瞬間移動の方法を聞いてきた」という孫悟空みたいな感じで現れるんですよね。「ちょっと待てよ!」と。「宇宙船もないのに、お前、どうやって来たんだ?」って。
ポンとルーク・スカイウォーカーが現れて、ラストは孫悟空とベジータの一騎打ちが始まるわけです。カイロ・レンが十字架型のライトセーバーを出して、ルーク・スカイウォーカーと、ライトセーバーでの一騎打ちが始まるんですけど。
ルーク・スカイウォーカー役をやっているマーク・ハミルって、もう、60超えたジイさんですから、動くのがやっとの状態なのを、たぶん、スタントマンを使ったりアングルを考えたりして、何とか互角の戦いをやってるように見せてるんですけど。
しかし、「その孫悟空の正体は、実はフォースで作ったホログラムだった!」というような、まあ、驚きのオチというのがあって。またまた関係ない話だったわけですね。もう本当にこの映画、「クライマックスかと思ったら実は関係なかった」というのが多過ぎるんですよ。
で、まあ、このカイロ・レンというベジータは、ルーク・スカイウォーカーが出てきたもんだから、艦隊の生き残りたちに「ちょっと待て。みんな、手を出すな」とわざわざ言ってから、1対1の対決を始めるんですね。
しかし、ルーク・スカイウォーカーと……まあ、ホログラムなんですけど。1対1のチャンチャンバラバラに気を取られ過ぎてその間に、30人しかいないようなレジスタンスに、むざむざと逃げられてしまうという。本当にね、酔っぱらいが考えたようなストーリーでしょ? こんな話なんですよ。
でも、孫悟空ことルーク・スカイウォーカーは、気を使い過ぎて、まあまあ、死んでしまうわけですね。
たぶん、このルーク・スカイウォーカーの死に方も、わりと良い死に方なので、界王様にお願いしたら、あと1回か2回くらい出番がありそうな感じ満々なんですね。
「これ、界王様いるな」と。たぶん、『スター・ウォーズ』世界には、界王様みたいな存在は出てこないだろうけど、「これは、居るな」という感じで、出てきそうなんですよ。
「たぶん、界王様にお願いしたら、ちょっとくらい、こっちに帰って来れるから、あんまり悲しまないでくれよ」と。「悟飯、あんまりオラのことは気にするな。母さん(レイア姫)のことは頼んだぞ!」みたいな感じで死んじゃうわけですね。
・・・
だいたい、こんな感じなのが『最後のジェダイ』のお話です。
聞いてわかる通り『最後のジェダイ』で進んだ話というのは、まず、「一番悪いスノークが死んで、カイロ・レンが悪役トップに成り上がった」ということ。
次に「頼りになるルーク・スカイウォーカーが死んじゃった」ということ。
「主人公のレイは、ちょっとだけ強くなった気がする」ということ。まあ、修行をちょっとだけやったので。
で、「レジスタンスもファースト・オーダーも、両者とも大打撃を受けたので、実はこの時点でお話は、ほぼ終わっている」ということ。
最後に「途中、カジノの星とか、ルークとレンの対決とかがあったんだけど、まあ全部が無駄だった」ということ。
なので、実は、来週から公開される新作映画の『スカイウォーカーの夜明け』って、おそらく、これまでの経緯を気にせずに見に行っても大丈夫だと思ってます。というのも、両者の力関係とか人物関係が、全部リセットされているんですよ。
ここまでの話って、たぶん、テレビシリーズの12話くらいでやったら、メチャクチャ面白いんです。それのダイジェストだから、僕が今言ったような、とっ散らかしたような感じになっちゃうんですけど。僕は「これ、テレビシリーズの企画をそのまま映画化したというのが失敗だったんじゃないかな?」と思っています。
この『スカイウォーカーの夜明け』とか、あとは、2022年からまた3部作を作るって言ってるんですけど。それがどんな話になるのかというのは、限定の方でちょっと話をしてみようと思います。
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