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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/03/21
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今回は、ニコ生ゼミ03月10日(#272)から、ハイライトをお届けいたします。

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 今、一番オススメの映画は『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』


 Twitterで「今、一番オススメの映画を教えて」って聞かれて、困ってるんですけども。


 アニメを見るんだったら『スパイダーバース』だと思うんですよ。

 映画を見る人なら『グリーンブック』か『運び屋』だと思います。

 SFが好きな人だったら『移動都市モータルエンジン』というのをすごくオススメします。


 で、バカ映画が好きな人だったら、前回も紹介した『翔んで埼玉』か、『パペット大騒査線 追憶の紫影』というのを見て欲しいと思うんですけど。

 この辺の「なぜオススメなのか?」というのは、後半で話します。前半は、あともう10分くらいしかないので。

 僕が今、一番語りたいのは、それらの映画でだいたい予告編として入っている『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』の話なんです。

・・・

 この『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』、すごいっすよ?

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 これは、“ラドン”、“キングギドラ”、“モスラ” です。

 こんなふうに「本当かよ!?」みたいな派手な映画として宣伝されているんですけども。

 この最新の予告編から、ようやっとこの映画で何がやりたいのかというのが見えて来ました。


 レジェンダリーフィルムが作っているこのシリーズというのは “モンスターバース” と言われています。

 モンスターバースというのは、スパイダーバースと同じく、モンスターの存在する世界、多元宇宙ということですね。


 たとえば『ゴジラ』と『キングコング』というのは、本当は別の世界観を持った映画なんですけど、「そんな怪獣映画の世界というのを1つの世界にミックスしてお届け!」というのが、モンスターバースシリーズなんです。

 このモンスターバースは、2014年に『ゴジラ』、2017年に『キングコング』をやりました。

 そして、今年の5月に公開されるのが、『キング・オブ・ザ・モンスターズ』このキングギドラが出て来る話ですね。

 で、来年の5月……本当は7月って言ってたけど、予定を前倒しにして来年の5月に公開するのが、『ゴジラ対コング』いわゆるキングコング対ゴジラをやるわけですね。

・・・

 何がすごいかって、このモンスターバースの世界観です。

 この世界では、ゴジラ達は、怪獣、いわゆるモンスターじゃないんですね。

 彼らは、かつてこの世界を支配していた神々で、映画の中では “タイタン” と呼ばれています。


 この「タイタン」というのは、ギリシャ神話とかの神々の名前であって、いわば神の獣というようなものとして扱われています。

 なので、モンスターじゃないんです。石炭紀あたりの地球に生息して、この地球をかつて支配していた神々なんですけど。

 彼らは、その後の気象変化を避けるため、地球の内側に籠もって数十億年間眠っていた存在なんです。

 “地球空洞説” における地球の内部ですね。


 では、そんな彼らがなぜ今頃になって目覚めたのかというと、「人間が地球を破壊しようとしている」からです。

 なので、彼らは文明の暴走を止めるために復活したんですね。

 なぜ、原爆とか原子炉にゴジラが反応していたのかというと、ゴジラは “人類の敵” ではなく “文明の敵” だからです。

 いわゆる「犯罪者を裁くけど、市民の味方である」という、バットマンとかスパイダーマンと同じ。

 地球の自然の自警団として出てくるわけですね。

 だから、人類文明に対抗しているんだけど、人間そのものを否定しないんですね。


 この辺りのやり方が上手いと思うのは、元々、バットマンとかスーパーマン、スパイダーマンの自警団文化を取り入れているからです。

 自警団文化というのは、アメリカだけじゃないんですよ。

 昭和30年代とか40年代の日本でも “ヤクザ映画” というのがメチャクチャ流行ってたんですね。

 なぜかというと、「大衆」と、「犯罪者」と、それを裁くはずの「警察」という形で三竦みになって誰も動けない状況を解決する装置として「ヤクザ」というのを機能しているというふうに、東映の任侠映画とかが主張していたからです。

 だから、昭和の時代の日本にはヤクザ映画がすごく多かったわけですね。


 この大衆、犯罪者、警察、このそれぞれが互いが手を出せないような状況になっているのと同じく、アメリカでも「大衆」、「マフィアなどの組織犯罪者」、「警察」という、どうにもならない三竦み構造を、「スーパーヒーロー」と呼ばれるバットマンやスパイダーマンという自警団が解決するという話が流行しました。

 この辺りがその自警団を使わなければ、正義が執行されないアメリカの悩みであり、昭和の日本の悩みでもあったわけですね。


 話を戻しますけども、このモンスターバースに出てくるゴジラ達、タイタン達、神の獣達は、「人類」と、行き過ぎた「文明」と、それを制御できない「国家や巨大企業」という三竦み状態を解決するために復活してきたんです。

 だから、実は、さっきも言ったように「地球の自然の自警団」でもあるんですね。

・・・

 しかし、復活してきた怪獣、タイタンと違う系統にいるのが、“モンスター・ゼロ” と映画の中で呼ばれるキングギドラです。

 キングギドラだけは、南極で氷漬けになっていたんです。

 なぜなら、宇宙怪獣で、太古の時代にゴジラ達と戦い南極に封じ込められていた。


 この設定で、もうおわかりの通り、実はこのモンスターバースというのは “クトゥルフ神話” なんですね。

 古代の地球には旧支配者と呼ばれる巨大な神々がいて、それに対して別の宇宙から古き者というのが襲って来た。

 彼らの戦いは人類が生まれる以前に終わってしまったんだけど、しかし、南極や世界中から、そういう神々達が復活しつつある。

 これがクトゥルフ神話なんですけど、それと全く同じなんですよね。

 『狂気の山脈』とかで書かれていることと。

 ゴジラを現代に復活させるにあたって、まさかクトゥルフを持ってくるというのは、意外だけど大正解。


 予告編のね、渡辺謙のセリフがカッコいいんですよ。

 渡辺謙が「我々に必要なのは、どのタイタンが人類の味方で、どのタイタンが人類を滅ぼそうとしている敵なのかだ。それを慎重に見分けなければいけない」と、どのタイタンに味方するべきかを決めようと演説すると、それを聞いていた、お偉いさん方が、ちょっと冗談っぽく、からかうように「じゃあ、我々はゴジラをペットにするとでも言うのか?」って言うんですね。

 すると、それを聞いていた会場の人達も、みんなニヤニヤと皮肉に笑う。

 そしたら、渡辺謙は、彼らよりももっとすごい笑顔をニヤッと浮かべて、「No.We will be his.」って言うんですね。

 どういうことかっていうと「違う。 “我々が” ゴジラのペットになるんだ」と、ものすごい皮肉な笑みを浮かべて語るという、もう、悶絶する程カッコいいシーンがあるんですよ(笑)。


 「超大国とかグローバル企業同士がぶつかりあって支配権を争う」というのが、現代という時代なんですけど、そういう現実の中で人間は、そんな超大国やグローバル企業の中の “お気に入り” になって生き残るしかない。

 このシーンは、そういう現代の世界というのを丸々反映した世界観として出来てるんですよ。

 すごい。


 この渡辺謙のセリフといい何といい、なんか僕、今のところこの予告編全てがカッコいいなと思ってるんです。

 「もう、この『キング・オブ・ザ・モンスターズ』が公開される5月まで、絶対に死ねない!」と。

 「世界というのは面白いことだらけだな!」と。

 「まだこれから先も面白い映画が出てくるんだ!」と思ってるんですけども、楽しみにしております。

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