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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/12/26
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今回は、ニコ生ゼミ12月16日(#261)から、ハイライトをお届けいたします。

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 第二次大戦の傑作機 “零戦” とアメリカを変えた真珠湾攻撃

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 じゃあ、“ファーストマン” ことニール・アームストロングの人生というのを、これから語って行くんですけど。

 まず、どこから説明しようかと思った時に、やっぱり、ここから話すのが話が早いなと思ったのが“零戦”(レイセン)なんです。


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 まあ、「ゼロ戦」と言った方が世間的には通りが良いんでしょうけども。


 “零式艦上戦闘機21型” は、『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎が生涯の全てを掛けて開発した第2次大戦の傑作機です。

 高度6000mまで上昇するために必要な時間は、なんと7分!

 これ、どんなことかというと、当時、零戦のエンジンよりも20%くらい性能の良いアメリカの戦闘機は、高度6000mまで上っていくのに12分掛かったんですよ。

 それに対して、零戦は7分しか掛からない。

 おまけに、同時期のアメリカの戦闘機の航続距離が、なんとか1000km行くか行かないかという時に、こいつは、機体下部に燃料タンクを付ければ3300kmも飛んだという、もう、バケモノのような飛行機なんですね(笑)。


 なんでそんなバケモノのようなものを作れたのかというと、極端なまでの軽量化。

 「弾が当たっても知らん。その時は最後だ。だって、海軍の仕様書にはそんなこと書いてねえから」と堀越二郎は言ってたそうなんですけども(笑)。

 そこまでの極端な軽量化によって、ものすごい性能を実現した。

 そういうバケモノのような飛行機です。


 この零戦のあまりの高性能によって、大日本帝国海軍は夢を見ちゃうんです。

 「この飛行機があれば、太平洋のど真ん中の空母という安全な後方から、零戦や、これの爆撃機とかを発進させて、ハワイの真珠湾を襲えるんじゃないの?」と、彼らは考えちゃったんですね。

 そして、本当にそれをやっちゃったんです。

・・・

 1941年12月8日の日曜日、日本海軍は真珠湾を奇襲攻撃をしました。

 このニュースは、一瞬でアメリカに流れました。


 当時、その奇襲攻撃があった日に11歳になっていた少年のニール・アームストロングは、アメリカのど真ん中にあるオハイオ州で、お父さんの手伝いとして裏庭で薪を割ってたんですけど。

 お父さんが、ものすごい勢いで「ニール、こっちに来い!」って言うんですよ。

 呼ばれたニール少年が走って行くと、お父さんはラジオのツマミを上げました。

 すると「今、真珠湾に日本が奇襲攻撃を掛けている! 我が国は宣戦布告を受けていない!」ということを言っていたんです。

 お父さんも興奮して走りまわっています。

 このお父さんは、ちょっと変人で、山の上の一軒家に家族で住んでたんですけど、車で街へ降りてみると、街中も大騒ぎでした。


 これは、ニール・アームストロングが自伝の中で書いてるんですけど、「その日から、とにかくアメリカ中の街の様子が変わった」と。

 それまでは普通に生活していたのに、ありとあらゆるポスターが全て “戦争絡み” になって行ったそうなんですよ。


 新聞とか雑誌はもちろん、たとえば町内会の回覧板みたいなやつから「ダンスパーティをするぞ」という普通のポスターまで、全部どこかに軍人が描いてあったり、爆弾が描いてあったり、戦闘機が描いてあったりするようになった、と。

 そんなふうに、アメリカ中が戦争一色にバーっと変わって行ったそうです。

・・・

 たぶん、アメリカの歴史の中で、このように “一瞬で世界が変わった” ということが、これまで3回あるんです。

 その1つ目が日本による真珠湾攻撃なんですよ。

 2つ目が、ソ連が人工衛星スプートニクを打ち上げた時。

 これも、やっぱり「アメリカが一夜にして変わった」と言われてます。

 そして、3つ目が、“9.11” 。

 世界貿易センタービルへのテロ攻撃なんですね。

 この3つが、アメリカが一夜にして変わり、それまでの風俗とか、言われていたことが丸々ゴロッと変わっちゃった事件なんですけど。


 お父さんに呼ばれてラジオを聞いた、11歳のニール・アームストロング少年はビックリしたんですけど、それから4年間、アメリカは「なにかというと戦争の話題しか出ない」という “戦争漬け” の状態になったんですね。

 ただ、同じく戦争漬けだった日本とは、ちょっと事情が違ったんです。

 日本では「徐々に戦争に負けて、爆撃があって、酷い目に遭う」というものだったんですけど、アメリカにしてみれば、戦争は本国には全く届かないんですね。


 「ハワイが襲われた! さあ、次はカリフォルニアか!?」と怯えてたんですけど、それから4年間、アメリカ本土が襲われることなんて本当に1度もなく、海の向こうの戦争を「どうなるか? どうなるか?」と見ている間に時間が過ぎて行くという時代が続きました。

 最初は劣勢だった太平洋戦線だったんですけど、なんせハワイの艦隊が空母以外、全部やられちゃいましたから。

 しかし、徐々に徐々に日本を押し返します。

 同時に、ヨーロッパ戦線でも、ナチス・ドイツをどんどん追い詰めて行きました。

・・・

 当時のアメリカの世論というのは「ファシズムは人類の敵である!」ということを、絶対のように言ってたんですね。

 アメリカというのは “ヒットラーは” 憎んでいたわけですよ。

 アドルフ・ヒトラー率いるナチス党を憎み、その結果、ドイツを憎んでたんですけども。


 でも、イタリアのムッソリーニにしても、日本の天皇ヒロヒトにしても、正直言ってアメリカ人にとっては “ついで” なんですよ。

 「とりあえず、一番悪いのはヒットラーであって、同じファシストの日本とイタリアも許せない」くらいの感じだったんですね。

 しかし、開戦から3年後くらいには、ノルマンディー上陸作戦が成功して、ドイツはもうすぐ降伏するというのが見えてきちゃったわけですね。


 そうすると、厄介なのが日本との戦争なんですよ。

 はっきり言って、アメリカにとって日本やアジアなんかどうでもいいんです。

 だって、アメリカというのは、独立国家というか「世界については我関せず」なモンロー主義の国だったので。


 実は、アメリカは植民地というのを持っていなかったんですね。

 だから、フランスとかイギリスに対しても「お前ら、植民地なんか持ってるから、要らん戦争を起こすんだ!」なんて言ってたんです。

 アメリカは、アジアに植民地なんか全くないので、実は太平洋で戦争しても何の利益もないわけなんですね。


 利益以外の面で言っても、アメリカというのは移民国家であり、ヨーロッパは多くのアメリカ人にとって “実家” みたいなものなんです。

 だから「その実家がヒットラーらナチスのファシストによって苦しめられている」と聞くと、アメリカ人としては「そりゃ、戦わないとな」という切迫感がちょっとあったんですよ。


 当時のアメリカでは、ドイツ系の移民でさえ「ドイツではなく、ヒットラーと戦うんだ! ヒットラーとファシストを倒して、ドイツ国民を解放するんだ!」という理由で、ちゃんとヒットラーを憎んでいたわけですね。

 そういう状態だったので、そのナチスドイツが降伏しちゃったら、国民の感情的に、これ以上戦争を続ける理由が全くなくなってしまう。

 「ヨーロッパで勝ったんだから、もういいじゃん」と。

 こういった世論に、実はアメリカ政府議会はですね、ちょっと困ってたんですね。


 そんな中、ちょうど太平洋の真ん中辺りで「日本軍の潜水艦の攻撃によって、ある一家の兄弟のほとんどが全滅する」という事件が起きたんです。

 これは後に『プライベートライアン』のお話のモデルになって、物語の舞台をヨーロッパに置き換えて映画として公開されたんですけど、実はあれ、対日本戦争の話だったんですね。


 なんか「戦地に出ていた未亡人の4人の息子だかが、1つの船に乗ってたもんだから、1発の魚雷で全員死んじゃった。

 だから、唯一生き残っていた息子を、アメリカはなんとしても救い出さねばならない」みたいな話があったんですけど。


 そんなふうに、そろそろアメリカ人としても、国民の心情的に「これ以上死者が出るのは嫌だ」という話になってきたんですね。

・・・

 というのも、アメリカから見た日本というのは、ドイツよりも先に降伏するはずだったんですよ。

 だって、自慢の連合艦隊をミッドウェイのレイテ沖でほとんど失ってしまった上に、戦争初期には無敵だったはずの零式艦上戦闘機も、アメリカが毎月出てくる新製品みたいに新型戦闘機を開発したおかげで、とっくに時代遅れになっているわけですから。

 でも、アメリカ人からしたら、なぜか日本人は降伏しないんですよ。


 「なんで?」と。「ちょっと待って」と。「あの世界で一番頭がおかしいと思ってたヒットラーでも降伏したじゃん!」と。

 「それどころか自殺までしたじゃん!」と。

 「それに比べて、お前らには絶対勝ち目がないの、わかってんでしょ? わかってないほど頭が悪いとは言わせないよ? だって、こんなの(零戦)作れるくらいだから、お前ら、頭も切れるはずだろ? なのに、なんで負けるというのがわからないの?」っていうふうなことで、もう、すごい不気味に思えてくるわけですよね。


 日本は降伏しない。

 アジアの植民地を次々と失って、石油などの資源を失って、どう考えても勝てるはずのない戦争に降伏しないどころか、“カミカゼ・アタック” という特攻まで使って、なんかヤケクソじみた熱意で戦い続けてくる。


 もう、アメリカは困り果てて、こんなビラまでバラ撒きました。

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 これは戦争中によく撒かれたビラなんですけど。

 表面がB-29が飛んでいる写真が印刷されていて、その下に日本の都市の名前がズラリと書いてあります。

 これは「もうすぐこの都市を爆撃します。だから、皆さん、早く逃げてください」というビラなんですね。

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 裏面を見ると、文字が書いてあって、「軍部がこの勝ち目のない戦争を長引かせるために使う兵器を、アメリカ空軍は全部 破壊します。」と宣言しています。

 もう、「勝ち目のない戦争を長引かせるための兵器」と言ってるんですね。

 「ご存知のように、人道主義のアメリカは、罪のない人たちを傷つけたくありません」と。

 もう、言いたい放題なんですけど(笑)。


 しかし、この身も蓋もないビラも、なんの効果もありませんでした。

 誰も逃げないんですよ、これらの都市から。


 当たり前なんですよね。

 というのは、このビラを憲兵たちが見張ってて「ばら撒かれたビラを拾っただけで牢屋行き。もし隠していたら懲役10年」というふうに言われたんですよ。

 
 懲役10年なんて言ったら、戦争、終わっちゃいますよ(笑)。

 まあ、そこら辺の、追い詰められた時のムキになるおかしさというのが、アメリカ人を恐怖させたんでしょうね。

・・・

 というわけで、アメリカは戦争には勝ってるはずなのに、日本は降伏してくれないんですよ。

 いわゆる、喧嘩ごっこしてる時に「参った」って言わない相手には、もう殴る力を徐々に強くして行くくらいしか方法がないのと同じ状態なんですよね。


 でも、日本に被害が出るのは、アメリカ人としてはしょうがないことなんだけど、自分のところの兵隊にも、どんどん被害が出るんです。

 そして、段々と「実は無敵のナチスと戦ったヨーロッパ戦線よりも弱小の日本相手に戦っている太平洋戦争の方が人的被害が大きい」ということに気が付いてきたんです。


 その上、ドイツの時にベルリンまで行って戦わなきゃいけないみたいに、日本に上陸して占領しなきゃいけないということになったら、いったいどれだけの犠牲者が生まれるかもわからない。


 ということで、「日本の本土に乗り込んだらどうなるんだろう?」という恐怖心から、アメリカは実に変なものを作りました。

 それが “B-29爆撃機” という宇宙船なんです。

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