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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「“人類初の宇宙船” の名誉を得られなかった悲劇の宇宙船 “X-15” と、そのパイロットの話」

2018/12/25 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/12/25
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今回は、ニコ生ゼミ12月16日(#261)から、ハイライトをお届けいたします。

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 “人類初の宇宙船” の名誉を得られなかった悲劇の宇宙船 “X-15” と、そのパイロットの話


 12月13日の木曜日のニュースですね。

 ヴァージン・ギャラクティック社の宇宙旅客船 “スペースシップツー” は、高度82キロに到達しました。

 宇宙旅客船とは、お客さんを乗せて飛ぶ宇宙船ですね。


 そして来年から、一人あたり2800万円を支払ってもらって、すでに予約済みの人が600人もいる宇宙飛行を開始するそうです。

・・・

 これがスペースシップツー。

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 スペースシップツーっていうのは、この真ん中の部分なんですけども。


 この大きい飛行機みたいなやつがですね、高度13000メートルまで上昇して、宇宙船を切り離すと。

 それで切り離したあと、この宇宙船・スペースシップツーがボーンと点火して、そのまんまマッハ2,9で高度82キロ、82000メートルまで上がるそうです。

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 で、一部のネットニュースでは「高度100キロ以上じゃないと宇宙ではない」、「高度80キロ以上が宇宙だ」といろんな説が乱れ飛んでいるんですけども、大丈夫です。

 高度80キロからは宇宙です。


 「高度100キロからが宇宙だ」っていうのは、元々 “カーマン・ライン”って呼ばれてるんですけどね。

 カリフォルニア州には、NASAのジェット推進研究所という所があるんです。

 ボイジャーとかを開発して運用している所ですね。


 そのジェット推進研究所には“X-15”っていう実験機があって、このX-15が高度100キロ以上を達成したときに、まったく翼がきかなくなったと。

 まったく翼がきかなくなって、そこの初代所長のセオドア・カルマンってオジサンが「これはもう、まったく空気が無い宇宙空間だ」という事で、「高度100キロを宇宙とする」って言ったんですね。

 もう本当に、それだけの話だったんですよ。


 ところが後に空軍のレポートによると、高度80キロからもう舵がきかなくなってると。

 つまり「事実上、空気がまったく無くなってるので、高度80キロが宇宙だ」っていうの。

 これが空軍説なんですね。


 それでジェット推進研究所のあるNASAは100キロ説をとっていたんですけども。

 ところがさらに最近の研究では、人工衛星を打ち上げる時に最低の軌道、地球から遠い所じゃなくて、地球に一番近づく所で、80キロ近辺の所だったら、あんまり空気の影響を受けないというのが分かった。

 つまり軌道がずれないので、今の所、人工衛星の打ち上げ業界では、「高度80キロを宇宙」というふうに定義していると。


 それで、これのデータを受けてスミソニアン協会が「空軍とNASAが “宇宙” の定義で揉めているけど、もう空軍のラインにしましょう」と提案をしているんです。

 「カーマン・ラインを修正して、空軍の言っている限界値ラインの高度80キロにしましょう」と。

 そんなふうな事に、来年あたり決まりそうです。

・・・

 しかし、このスペースシップツーのシステムはヴァージン・ギャラクティック社が運用しているんですけども、実はこれは60年前に実現するはずだったんですよ。

 60年前に、これともう本当にそっくりのシステムが動いてました。

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 これです。

 B-52戦略爆撃機の下に付いてる黒いヤツです。

 
 1959年9月17日。

 ま、かなり昔ですね

 僕が生まれた1年後の写真です。


 それで、この巨大な飛行機ですね。

 “X-15” をぶら下げてる巨大な飛行機は、戦略爆撃機のB-52。

 『博士の異常な愛情』って映画の中に出てくる機体ですね。


 それで吊り下げられてるのが、宇宙船 X-15。

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 宇宙船と言いましたけど、そうなんですよ。

 タッチの差で、“人類初の宇宙船” という名前をソ連のボストークに取られてしまった、たいへん不幸な宇宙船であります。


 で、今日はこのX-15の話もするつもりなんですけども、X-15は、ヴァージン・ギャラクティック社のスパースシップツーとまったく同じシステムなんですよ。

 高度13000メートルで切り離してる所も同じです。


 しかしスペースシップツーはマッハ2,9を出しましたけども、X-15はそれどころかマッハ6,4を出すんですね。

 だからヴァージン・ギャラクティック社のスペースシップツーよりも、遥かに性能が良かったわけです。

 わずか90秒で高度108キロ。

 今のNASAでも充分に認める “宇宙” まで到達する事が出来たと。


 それで実はこのX-15による宇宙飛行というのは、ガガーリンの人類初の宇宙飛行の一年前ですね。

 すでに “宇宙” と呼べる最低高度の80キロの半分の、40キロぐらいの辺りまで来てたんですね。

 なので、このままどんどんテストを続けていれば、絶対にガガーリンよりも先に宇宙に行けたんですよね。

 その証拠に1959年から61年にかけて、いろんな雑誌がこのX-15を特集しています。

・・・

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 これは『SPACE AGE』という雑誌なんですけども、1959年の6月号です。

 試験機の黒色ではなくて、完全にアメリカ空軍のシルバーの塗装になっていますけども。

 空軍塗装によるX-15です。

 ミサイルより速い究極の宇宙ロケットとして紹介されています。

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 または『MEN INTO SPACE』という雑誌。

 これの中身はマンガなんですけども、この雑誌も1960年の5月号ですね。

 垂直に月に着陸するX-15が描かれています。


 1959~60年あたりは、実はこのX-15こそが宇宙飛行の最右翼だった。

 「あれだったら、いけるだろう」と言われていたんですね。

・・・
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 それで、その当時に出ていた図鑑の『ROKET TO THE MOON』、「月へ行くロケット」って雑誌があるんですけども。

 これは不思議な本で、たとえばこれは扉を開くと、ここに楽しいスライドが入っていて、スライドで映写が出来るようになっているんですね。

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 それで、ここを見たら分かるとおり、月面にこのX-15がロケットを付けて垂直着陸をするようなイラストが描かれています。

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 また、真ん中辺りのページを見ると、X-15の打ち上げ方法が描かれています。

 このX-15を巨大なロケットの先に付けて、このまま月へ持って行こうと。

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 これは以前に話した月着陸の方法の “直接方式” ってヤツですね。

 それを大真面目で考えていたと。

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 それで最後のページには、若き頃のウォルター・クロンカイト。

 アメリカで一番有名な解説者ですね。

 その人のレコードが入っていてですね、ウォルター・クロンカイト自身の解説で「宇宙飛行というのは可能なのだ!」という事を大々的に謳いあげています(笑)。

・・・

 以上の雑誌でも分かるように、実は1959~61年にかけてX-15こそが宇宙船であって、マーキュリー計画とかジェミニ計画というのは、あまり誰も知らない、というか、気にされない存在だった。

 まぁ、まだ発表されてなかったんですけども。

 ところが、政治の壁や軍部の権力争いのせいで、X-15のテストは何度も中断されました。


 本当はガガーリンよりも先に宇宙に行けたはずの宇宙船 X-15は、何度もテストを中断されて、ようやっと「もう宇宙へ全能力をかけて行ってもいい」と言われたのは、NASAによるアラン・シェパードやジョン・グレンというヒーローたちの後の1963年だったんですよ。

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 もうこの時代の世間の注目は、完全にライトスタッフだった。

 つまり、彼ら “マーキュリー計画” の宇宙飛行士たちの方に世間の目は奪われていたので、誰もX-15の偉業に注目する事は無かったんですね。


 X-15は誰にも期待されないまま1968年に、アポロ11号の月着陸の1年前にですね、全プロジェクトを終了しました。

 現在はスミソニアン博物館にその機体が飾られています。

 世界初の宇宙船になるはずだったX-15は歴史の中で忘れられていきました。


 これは貴重なX-15の写真です。

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 手前で笑っているのが、若干30歳のパイロットです。

 この当時の “宇宙” を意味した銀色の服を着ていますね。


 これは飛行服なんですけども、こういう銀色のコスチュームを “ロケット” といわれるモノに乗っている人が着ていたから、宇宙は銀色のイメージがあったんですね。

 この男の人こそ、悲劇の宇宙船に乗りながら、「もうキャリアは終わりか」と思われながら、8年後にアポロ11号で人類で初めて月着陸を成し遂げたニール・アームストロングその人です。


 元々この人はX-15のテストパイロットだったのが、途中で無理やりキャリアチェンジをして、憎いアポロ計画に再就職して、なんとアポロ11号で人類初の月に降り立つという偉業を成し遂げた、わりと根性のあるヤツだったんですね(笑)。


 ガガーリンに先を越されて、さっき言ったマーキュリー計画のライトスタッフたちにX-15を潰されて、それでも必死にNASAに潜り込んだ。

 実は、まったく偶然の結果、最初に月に立つ事になった “ファーストマン” なんですね。

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