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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『紅の豚』ジーナとポルコは最後どうなったのか? 2 】宮崎駿の私小説としての『紅の豚』」

2018/11/22 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/11/22
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今回は、ニコ生ゼミ11月11日(#256)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【『紅の豚』ジーナとポルコは最後どうなったのか? 2 】宮崎駿の私小説としての『紅の豚』


 さて、この辺から、私小説としての『紅の豚』の解析になるんですけども。

 この「妻を家に待たせて、外で恋愛するのは、浮気じゃないからOK」というのは、スタジオジブリでの宮崎駿の生き方そのものなんですね。

 “不倫” じゃないんです。

 “恋愛” なんですよ。

 これは、ジブリスタッフはみんな知ってるし、鈴木敏夫もラジオや講演や対談の中で何度も話しています。

 そして、『夢と狂気の王国』という、スタジオジブリのドキュメント映画の中でも撮影されています。

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 このドキュメンタリーの中に、スタジオジブリで働く三吉(みよし)さんという女性スタッフが出てきます。

 スタッフの間では「サンキチさん」というふうに呼ばれているんですけど。

 そのサンキチさんという女性スタッフは、このドキュメンタリーが撮影された当時、『風立ちぬ』を作っていた当時の “宮崎駿のお気に入り” だったんですよ。


 これが、当時の宮崎駿の作業机なんですけど。

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 机の奥のところに、イラスト入りの張り紙があるのがわかりますか?

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 この「原画チェック頑張って」とか、「あと何カット残っているのか?」というかわいいイラストが入った張り紙を描いたのが、サンキチさんという、まあ、すごい童顔で可愛らしい、もうひと目で “宮崎駿お好み” というのが誰にでもわかる女性なんです。


 この『夢と狂気の王国』というドキュメントの中でも、宮崎駿とこのサンキチさんはすごくイチャイチャしてるんですよ。

 どれくらいイチャイチャしているのかというと、宮崎駿がコンテをやっと完成させたという時に、まず、サンキチさんだけに話すんですよ。

 で、サンキチさんが「本当ですか? 良かった!」と言うと、宮崎駿は…

 …あの宮崎駿がですよ?

 自分から彼女に “ハイタッチ” をしようとするんですね。

 「ハイ! ハイ!」って。

 サンキチさんは、一瞬「え?」という顔をした後で、「ああ」とわかって、ハイタッチに応じる。

 そんな、はしゃぐ宮崎駿の様子が収録されているんですけど。


 このサンキチさんに限らず、宮崎駿には常にお気に入りの女性のスタッフであったり、もしくは雑誌の記者がいるんです。

 もう、周囲からは態度でバレバレなんですけどね。

 実は、どうも本人としては隠してるつもりらしいんですけど。


 これについては、鈴木敏夫も、すごく嬉しそうに「もう本当に宮崎さんは可愛い。あれで隠してるつもりだ」って言ってるんですけど。

 あまりにも態度が違うので、他人から見たら「ああ、この爺さん、恋をしてるんだ」って分かるんです。

 でも、それを完全にプラトニックに、ストイックに、自分の中で抑えてるから、宮崎駿は他人にはバレてないと思ってるんですよね(笑)。


 この『夢と狂気の王国』を撮った砂田麻美という女性監督さんも、実はこの関係に気が付いています。

 それを示すように、このドキュメンタリーの中にはサンキチさん絡みのエピソードやカットがすごく多いんです。

 
 宮崎駿の「恋愛してるんだけど、それに関して自分でもわりと無自覚な様子」とか、「周りにバレてないと思っている様子」というのを、意地悪に…

 …という言い方もナンですけど、すごく丹念に掬い上げて編集して残しているんですね。


 だって、この『夢と狂気の王国』の中には、サンキチさん絡みのシーンが本当にいっぱい入ってるんですよ。

 遂には「サンキチさんの結婚式」というところまで収録されているんです。


 もっと重要で、普通のドキュメンタリーだったら収録すべき「ジョン・ラセターが、わざわざ来日して宮崎さんと話している」というところは、一切ないのに。

 あのジョン・ラセターが出てこないドキュメントなんて、普通はありえないんですけど。

 まあ、そういう配分で見せています。

・・・

 さて、そのサンキチさんが、このドキュメントの中で結婚することになったんです。

 だけど、もし「サンキチが結婚する」なんて話が宮崎駿の耳に入ったら、ものすごくショックを受けるだろうし、仕事全体に影響するはずだから、なかなか言えない。

 「どうしよう?」と。


 ということで、宮崎駿以外のジブリのスタッフが「誰が宮崎駿にこのことを告げるか?」という相談をしたんですね。

 で、その結果、鈴木敏夫が「しょうがない。じゃあ、俺が言うよ」となったんです。
 

 ……何が「しょうがない」なのか、もうわからないんですけど(笑)。


 そして、話をするために鈴木敏夫が宮崎駿をジブリの屋上に呼び出したんですよ。

 この様子も、砂田監督はこのドキュメンタリーの中でバッチリ撮ってるんです。


 すごく遠くから望遠で撮っているから声は聞こえないんですけど。

 「話がある」と屋上で横を向いて語る鈴木敏夫の横で、宮崎駿は、それを小石を蹴りながら聞いていて、「わかった」みたいなことを言ってるんですけども。

 こんなシーンまで入ってるんですよね。


 宮崎駿というのは、やっぱりプラトニックだし、大人だから、その後、ショックから立ち直り、なんとサンキチさんの結婚式の主催までやったんです。

 みなさんも調べたらわかります。スタジオジブリはブログをやっているんですけど、その2011年9月28日の日記を、後で調べて見てください。


 このブログには、サンキチさんの結婚式の写真まで載っているんです。

 サンキチさんが描いた「原画チェック頑張って」という張り紙にあった可愛らしいイラストのウェディングケーキの写真が載っています。

 そのブログによると「新郎新婦の2人が、神父の前でなく “宮崎駿の前で” 愛を誓う」というセレモニーまであったそうなんですけど(笑)。


 いや、もうね、ここまでいくと立派ですよ。

 宮崎駿の恋の仕方って、すごいストイックで、プラトニックなんです。


 つまり、「カッコイイとは、こういうことさ」と、宮崎駿は言ってるんですよ。

 このドキュメンタリーの中でも、宮崎駿が毎日、奥さんが作った愛妻弁当を持ってジブリに出勤している姿が映されているんです。

 この「奥さんが作った愛妻弁当を持ってジブリに出勤して、そして、その現場で他の若い女の子相手に恋愛をしている宮崎駿。でも、浮気じゃないからOKだ」と。

 宮崎駿はそれを「カッコイイとは、こういうことさ」と言っている。


 これについて僕は、中年のオジサンの考え方としてわかるんですよ。

 いわゆる、家に奥さんがいてお小遣いを貰っている普通の中年のオジサンが、そのお小遣いでキャバクラに行ったり、仕事終わりに飲み屋に行って、店の女の子とかママに対してちょっと口説いたふうなことを言ってみるんだけど、決して深入りはしないという関係は、もう昭和のオジサンにはメチャクチャある話じゃないですか。

 そういった昭和のオジサンの中にある「ある種ストイックなのかスケベなのかわからない感じ」というのを全面的に肯定した上で、私小説として「俺もそうなんですよ!」と告白した。


 そういったところを僕は「カッコいいな」って思うんです。

・・・

 でも、この「浮気してないんだからOKじゃん!」という宮崎さんの考え方については、鈴木敏夫もちょっと変だなと思ったようで、からかったことがあるそうです。

 「その結果、宮崎駿を怒らせてしまった」というエピソードを鈴木敏夫本人が語っています。

 この様子はニコニコ生放送で配信されたので、まだ映像も残っていると思います。


 2012年、ニコ生で押井守、鈴木敏夫、川上会長の三者鼎談というのをやった時、押井守が鈴木敏夫に「『紅の豚』のポルコって、最後は奥さんのところに帰るんでしょ?」と聞いんです。

 すると、鈴木敏夫は「いや、その話はやめようよ」と、一瞬、止めたんですね。

 だけど、押井守はそれを許さずに「え? だって鈴木さん、前にそう言ったじゃん?」とさらに追求。

 すると、遂に鈴木敏夫も諦めて「いや、言ったんだけど、その件で宮さんのことをちょっと怒らせちゃってさ」と言う。

 押井さんが「ポルコって、宮崎さんのことでしょ? あの豚のお面をパッと取ると、宮崎さんの顔になってるわけじゃん? 絶対そうでしょ?」と言うと、「いや、まあ、ちょっとその時のことを言うと、こっちも気が緩んでいて、こんなやり取りがあったんです」と、鈴木敏夫は渋々話すんです。

 
 物語の最後、ポルコが自分のアジトに帰って来る。あの島の奥には小屋があるんです。

 これですね。

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 実は、この小屋の奥はだいぶ先まで続いていて、奥へトントントンと行くと、そこにはポルコの奥さんが住んでいる本宅があって、最後、彼が家の中に入ろうとすると、いきなり「ゴミ捨てしといてって言ったでしょ!」と怒られる。

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 「それで終わらせたらどうですか?」と、てっきり笑ってくれるかと思って鈴木敏夫が話したら、それを聞いていた宮崎駿は全然 笑ってくれなかったという件があったそうです(笑)。


 プロデューサーの鈴木敏夫の “脳内” では、ポルコは嫁さんの作った弁当を持って、毎日毎日、空賊退治に行っている。

 で、晩御飯だけ、ジーナのところへ食べに行っている。

 そして、フィオみたいな若い子と、プラトニックに遊んでいる。


 「そこが日本の中年サラリーマンのカッコいいところだし、中年のオジサンを本当に応援するアニメなら、そこまでわかりやすく作ってもいいんじゃないの? だって、宮崎さん、現にあなたは毎日、奥さんの愛妻弁当を持ってジブリに来て、そこでサンキチとイチャイチャしてるじゃん!」ということを、冗談としてチラッと言ったら、宮崎さんは本気で怒ってしまったらしく、返事をしてくれなかった。

 「だから、その件について話すのはやめてくれ」と、押井守に頼むというシーンがあったんです。


 宮崎駿自身は、そこまで割り切って作品を作ってるわけじゃないんですね。

 これ、『もののけ姫』の時もそうなんですけど「どんな話を作りたいかが分かっていたら、それは言葉で言えばいいことだし、分かった瞬間に映画なんか作る必要がない。 分からないから映画を作る。 一生懸命に作っていたら、“自分のために作っている作品” ではなく “映画のために作らされている作品” になる。 そうなって初めて、1本の映画として完成する」と言ってるんです。

 だから、宮崎駿も一度は「いまだにモテたいと思っているポルコ」というラストシーンを描いて、JALの機内上映までは許したんだけど、完成版ではこれをカットして、ジーナと一緒のシーンはあえて描かないまでも「今でも空を飛んでるポルコ」というのを描くというところで抑えたわけですね。

 映画のラストとしては、これで正解なんですよ。

 今、DVDで公開してるバージョンもそうですし、金曜ロードショーで公開しているバージョン、このラストで正解なんです。


 「いまだにモテたいポルコ」で終わらせたら、レオンって雑誌で “チョイ不良オヤジ” を気取っているジローラモとかと同じになっちゃうんですよね。

 それをラストで見せていたら、たぶん、かなりの女性層から反発を食らったと思うので、こっちで良かったんじゃないかと僕は思います。

・・・

 というわけで「ジーナとは結局どうなったのか?」の解答編の、岡田斗司夫の答えとしては。

 ポルコはジーナの元に行った。

 しかし、まだ秘密基地には通ってて、そこには最新のサボイアがある。

 ジーナのところに置いてるのは古いバージョンのサボイアなんですよね。


 そんな、最新式のサボイアのある秘密基地に毎日出勤して、空を飛んで、女の子をナンパしているというのが、僕の解答です。


 ポルコ・ロッソというのは、あくまで自由……というのもナンなんですけど、ずーっと1人で飛ばしてやらなきゃダメな人間なんです。

 それはもう、宮崎駿も同じなんですよ。


 宮崎駿にも、ジブリ以外に “二馬力” という個人事務所があって、そこに毎日、意味もなく出勤しているんですね。

 そこでカーテンを開けて、奥さんのお弁当を食べて、その後でジブリに行って仕事をしている。


 そんなふうに、やっぱり、縛ることが出来ない人なんです。

 ……まあ、もっとすごいのは高畑勲だったんですけども(笑)。


 なので、まあ「そういう爺さんだ」と思っていればいいんじゃないか、と。それが大人になってから、もう一度『紅の豚』を見た時の、中年のオジサンの生き方を肯定する見方なのではないかなと思います。


 なんか「奥さんのところには古い方の機体を置いている」というのが、やたらリアルですよね。

 「いや、よくそこまで正直に描いたな」と。


 庵野秀明は『紅の豚』を見た時に「宮崎さんも、やっとパンツを脱いで見せましたね。いくらモノが小さくても、見せたことは評価します」って言ったんですよね(笑)。

 庵野秀明もなかなか酷いことを言うんですけど。

 まあ、その辺は「どこまで自分というものを晒すのか?」というのが私小説の作り方ですので。


 この辺を「ジーナとはどうなったのか?」の解答とさせてください。

 
 
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