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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「人類はAIでなく機械に職を奪われる? その3」

2018/08/15 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/08/15
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今回は、ニコ生ゼミ8月5日(#242)から、ハイライトをお届けいたします。

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 人類はAIでなく機械に職を奪われる? その3


 「機械に仕事を奪われる!」という恐怖は、19世紀の後半から20世紀前半まで、メチャクチャ大きかったんですよ。

 それを示す事例をもう1つ出します。


 チャップリンが『モダン・タイムス』を作った少し後、アメリカで初のコミックヒーローが誕生します。

 “スーパーマン” です。

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 これは、1938年に出版された “アクションコミックス” の創刊号なんですけど、スーパーマンが車を持ち上げて破壊しているイラストが載っています。


 ここで重要なのは「なぜ、車を破壊しているのか?」ということなんですよ。

 この創刊号から2年くらいの間、スーパーマンの表紙はこんな感じの構図が多いんです。

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 「戦車を破壊する」とか、「列車を片手で止める」とか、「飛んでいる飛行機に乗り込んで戦う」というように。

 面白いことに、初期のスーパーマンというのは、機械と戦うことが多かったんです。


 スーパーマンを表す描写の中に「高いビルもひとっ飛び!」というのと同じくらい、「迫り来る汽車を素手で止める」というシーンが必ず出てくるのはなぜかと言うと、機械に対する人間の優位性というのを見せなきゃいけない時代だったからなんです。

 「スーパーマンのパワーというのは、機械よりも強いんだ!」って。

・・・

 1930年代くらいまでの人間、特に庶民というのは、それくらい、機械によって自分たちの労働を奪われることを恐れていました。

 そういった恐怖の現れの1つが、この “ジョン・ヘンリー” です。


 これは、アメリカのある町にある銅像なんですけど。

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 ジョン・ヘンリーというのは、19世紀のアメリカに実在したとも言われているし、あくまでも民話だとも言われている大男です。

 黒人だったと伝えられている場合が多いんですけど、そうじゃなくて、インディアンだったという説もあります。


 彼は、アメリカ横断鉄道の工事が行われている時に、“犬釘“ というレールを固定するための釘を大きなハンマーでガンガン打つ仕事をしていました。

 仲間内で最も身体が大きくて力が強いジョン・ヘンリーは、誰よりもいっぱい犬釘を打ったヒーローだったわけです。


 しかし、ある時、鉄道会社の経営者は、蒸気で動く “自動ハンマーの機械” を導入します。

 そして、ジョン・ヘンリーたち労働者に対して「この機械があるから、お前ら人間の職人たちは全員クビだ」と言いました。


 ジョン・ヘンリーは、それに怒って「じゃあ、俺とその蒸気の機械と競争させろ! もし俺が勝ったら、そんな蒸気の機械より人間の方が優秀だということだから、そんなものを使わずに、これからも俺たち人間を雇え!」と約束させて、経営者や他のみんなが見ている中、蒸気ハンマーと一騎打ちを始めます。

 そして、丸24時間、蒸気ハンマーと戦った結果、最後にはジョン・ヘンリーが勝利を収めます。

 しかし、勝ったんだけれども、みなが歓声を上げて彼の元に駆け寄った時には、ジョン・ヘンリーは心臓麻痺で、すでに死んでいた……という、悲しいお話です。


 こういったジョン・ヘンリーの話と似た話が、アメリカ中の田舎町に残っているんですよ。

 アメリカの鉄道がいろんな町に敷設されていくに従って、「ジョン・ヘンリーはうちの町の人物だった!」と語り始めるくらい、いろんな土地で語られている話なんです。

 なぜかと言うと、この1870年から1930年くらいまで、アメリカやイタリアなど、世界各国の庶民というのは、ひたすら機械に仕事を奪われていたからなんです。

 だからこそ、こういった民話が残るし、「スーパーマンが機械に勝つ」という物語が必要とされたんですね。


 スーパーマンのすごさは「ただ力が強いこと」ではないんですよ。「力が強くて機械に勝つ」というところが当時の庶民に愛された理由だったんです。

 ここら辺、僕らはなんとなく “アメコミヒーロー” の系譜で見ているから、スーパーマンというのを、そういう存在として見ていないんですけど、元々は「機械と戦う庶民の味方」という意味合いがすごく強かったんですね。

・・・

 この「機械がどんどん仕事を奪っていく」というのは、実は “契約違反” でもあったんですよ。


 イタリアにしてもアメリカにしても、元々は農業国家だったんですね。

 その農業国家の農民たちに対して「これからは工業の時代なんだから、もう農業なんかやっても仕方がない。

 そんな貧乏くさい仕事をやるよりは、都会に来て工場で働けよ!」と言って、働かせていたんです。


 そうやって、渋々か、お金に釣られる形で、みんな農地を捨てて、故郷を捨てて、都会に集まったんです。

 「儲からない」とか「古臭い」と言われ、農家としての誇りを奪われて、町に連れて来られて、工場で手工業で働かされたわけですよ。


 そこを今更、「君達の代わりは機械がやってくれるから、もう君達は必要ない」と言うのは酷すぎる。

 なぜって、彼らには帰る故郷がないんですから。

 生まれ故郷に帰っても、農地は、とうに荒れ果てているか、誰かに占領されて失くなってしまっていたんです。


 この辺りのことを書いたのが、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』という小説です。

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 オクラホマ州にある大農地で働いていた農夫たちが、環境汚染によって砂漠化が進み、農地に土が吹き込んでトウモロコシとかが採れなくなったという理由があるにしろ、みんなロサンゼルスやカリフォルニアなどの都会へと流れて、工場労働者になろうとしたんです。

 ところが、行ってみた先では、工場労働者はすでに機械に置き換えられつつあった。

 彼らは、土地を捨てて田舎から出てきたので、帰るところもない。


 こんな話を書いて、ノーベル賞を取ったのが『怒りの葡萄』という小説であります。

・・・

 このように、人間というのは、機械産業が誕生した時から仕事を奪われ続けてきたんです。

 だからこそ、スーパーマンは「夢がある」と言われたんですよ。


 スーパーマンが生まれた時代、『モダン・タイムス』の時代には、「素手で機械を叩き壊す人間」というのは、そのまま “人間賛歌” だったんですね。


 それと同様に、人工知能という概念が生まれると同時に、「今度は頭脳労働まで奪われるのか!」という恐怖が吹き出してくるのも辺り前なんですよ。


 僕らは、ちょうど100年くらい前のご先祖さま達が味わっていた「機械に仕事を奪われる!」という恐怖を、もう一度、時代を変えて味わっている最中なんですね。


 さて、人間より力の強い機械が生まれるのは当たり前なんですよ。

 自動車の方が人間よりも走るのが早いだろうし、蒸気ハンマーの方がジョン・ヘンリーより強いでしょう。


 だけど、“人間より賢い機械” というのは、本当に現れるのだろうか?

 これが、ここから先の第2部「人智を超えるAIは可能か?」という話であります。

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