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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/03/06
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今回は、ニコ生ゼミ2月25日(#219)から、ハイライトをお届けいたします。

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 途絶えてしまった 責任感のある科学 “錬金術”


 錬金術というのは、なんでそんなに分かりにくく書くのか。

 フルカネリの本 『大聖堂の秘密』 も、もっと分かりやすく書けばいいのに。

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 ヘルメス的というやつで、すごくもったいぶった言い方で、“○○の象徴” “××の象徴”というふうに、言い換えて言い換えて しょうがないんですね。


 なんでこんなに分かりにくく書くのでしょうか?

 ・・・

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 『ノートル=ダム・ド・パリ』の舞台は、ヴィクトル・ユーゴーの生きていた時代である1830年頃の350年ぐらい前。

 1482年です。


 この時代は、ちょうどフランスにルネッサンスの嵐が吹き始めた時代ですね。


 ルネッサンスというのは、まぁだいたい14世紀ぐらいから始まって、15世紀、16世紀とヨーロッパを北上していく。

 イタリアから始まって、北上して行くんですけども。


 それはですね、秘密主義“ゴシック” の終わりの時代でもあったんですね。


 ゴシックが本当に盛んだったのは、11世紀から13世紀あたりで、ルネッサンスによって滅ぼされてしまった。

 それが、このゴシックです。


 つまり神秘主義が終わって、理性主義が始まった。

 それがルネッサンスですね。


 で、このルネッサンスの事をフルカネリは、「安っぽいイタリア人の合理主義」というふうに言っていたんですね。

 「ルネッサンスと呼ばれる、物事の表面しか見ない、バカどもの思想」というふうに言っていました(笑)。


 物事の表面しか見ない。

 “理性主義” というものを、そういうふうに捉えていたんですね。


 で、ルネッサンスで合理主義が はびこって、フランス革命で世界が科学の時代に、いわゆる光が当たった時代になったときに、イギリスで一つの団体が生まれました。

 その名を “フリーメイソン” と言います。


 フリーメイソンはですね、元々は、残っている一番古い記録では、14世紀ごろの中世の石工。

 いわゆる石をカンカンカンカンと切り出したり彫ったりする人たち。

 つまり、このノートルダム寺院を作ったオッサンら。

 こういう人たちの集まりだったんですね。


 でも、その14世紀ごろの石工の組合が、ルネッサンスによって石造建築というものが 大分 減ってきた事によって、レンガとかの時代になったんですね。

 それが17世紀ぐらいの かなり後の時代になって、もう建築とか石屋さんに関係なく、貴族とか紳士とか知識人たちをドンドン入れようというムーブメントがあった。

 それで、その後は変質してしまったと。


 このときにフリーメーソンというのは、職人団体から友愛団体に、普通の組織に鞍替えしたんですね。

 それで今回のポイントというのは、それらの新しいフリーメーソン。


 僕はコレを “二代目フリーメーソン” と呼んでるんですけど。

 二代目フリーメーソンは、今の流れにつながるフリーメーソンです。

 だから、今のフリーメーソンは どんなに調べても、中世の頃に石を彫っていた錬金術のフリーメーソンの事は まったく分からないんですね。


 そうではなくて、もっと昔にあった“初代フリーメーソン” というのは、どんな組織だったのか。

 この初代フリーメーソンたちが、ノートルダム寺院を作った。

 ヨーロッパ各地の教会建築を作って、そこに錬金術の知識を隠していったんですね。


 彼ら、初代フリーメーソンは、フルカネリのいう “隠された意味” とか錬金術の秘密を知ってるわけですよ。

 だって、彫るわけだから知ってるわけですね。


 それでキリスト教っぽいデザインとか、あとあのストーリーに紛れて、自分たちだけの秘密の知識っていうのを彫るわけだから。

 当然、知ってなきゃいけないわけですね。


 なので、初代フリーメーソンというのは、錬金術とかキリスト教以外の “錬金術” という神を信じていたわけです。


 ただ、今に流れる二代目フリーメーソンは、そういう知識の流れを受け継いでないんですね。

 なので今のフリーメーソンって、儀式とかが全部 秘密なんですけども、あれはムダなんですよ。

 ムダに秘密なんですね。


 今、コメントで“ネオ・フリーメーソン” って書いていて、いい名前だなと思ったんですけども(笑)。


 現代のフリーメーソンというのは、実は かなり博愛主義の団体です。

 たとえば、これですね。

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 「フリーメーソンが世界を支配している証拠だ!」と言われる、1ドル札の裏ですね。

 これは “プロビデンスの目” ってヤツなんですけど。


 このプロビデンスの目っていうのは、「我々がお前たちを見張っているぞ!」「支配しているぞ!」ってふうに言われているんですけども、実際にはこれは “理性主義” なんですね。


 理性主義の象徴。

 あと、教育の象徴として出てくるものなんですよ。


 で、この上に書いている文字はラテン語で「神は我々の企てを支持される」って書いてますね。

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 下の方には「時代の新しい秩序」と書いてますね。

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 それで、このピラミッドは見て分かるとおり、建築中なんです。

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 建築中のピラミッドであって、アメリカという国を作り上げるって事を神様は支持しているという意味で、実はかなり理性主義なんですね。


 なので、フランスの人権宣言の版画にも、このプロビデンスの目っていうのは描かれてるわけですね。

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 これで分かるとおり、かなり理性の象徴と言ってもいいんですけどね。

 現代のフリーメーソンは。

 これをシンボルの一つにしてるから。


 実際のシンボルは、石工時代のコンパスとかなんですけども。


 プロビデンスの目もシンボルの一つに使ってるんですけども、それは何かっていうと、「すべての人に教育を」とかですね。

 この世界全体に、理性とか合理の光を照らして、変な “まじない” とか不合理なものを無くしていこうという。


 フリーメーソンというのは、その意味ではわりと開明主義的な団体なんですね。

 秘密主義にする必要が、まったく無いんです。


 で、なんで今も そんな秘密主義になったのかというと、初代の石工時代のフリーメーソンが秘密主義だったので、なんとなく その伝統だけを受け継いじゃったから。

 もうね、構成メンバーが変わってるんですよ。


 当時じゃなくて、弁護士さんとかお医者さんとか貴族とか政治家とか、そういう人がフリーメーソンに入っちゃったんだから、まったく秘密主義の必要が無い。

 なのに、秘密主義という部分だけは初代から受け継いでるっていう。


 何かこう、ネオ・アトランティスのような歪んだものを、僕は感じてしまうんです。

 「今のフリーメーソンは歪んでいる」って言ったら、すげぇ怒られそうだけども(笑)。


 なんかね、ちょっとそういう “歪み” みたいなモノを感じます。


 初代から秘密主義を受け継いで、二代目は初代にあった秘密主義というのをやめて開明主義に。

 どちらかというと合理主義というのが、二代目フリーメーソンの特徴です。

 
 じゃあ何で初代のフリーメーソンは秘密主義だったのか?


 高度な技術や職業上の必要から錬金術の知識を持っていたので、秘密主義になったわけですね。

 で、現代の解釈では、「そういう秘密がバレると、技術が独占できないから」とか「パクられるから」って考えられて、大体そう書いている本が多いです。

 錬金術では。


 でも、実際には違うと僕は思います。

 ・・・

 知識を持つものは、その知識を世界に与えるかどうかの責任を持つっていうのが、このゴシック時代の錬金術の末裔の科学者の考え方なんですよ。

 今の科学者の考え方は、まったく違うんですね。

 そうじゃなくて特許主義、発表主義ですから。


 まぁ、キレイごとで言えば、「隠す権利が無い」「一瞬でも早く発表すべきだ」と。

 「その知識を、良く使うか悪く使うかは、それはもう人類に任せよう」という性善説っていうのが、キレイごとなんですよ。


 でも悪く言えば、「ちょっとでも発明したものは先に発表して、自分の手柄にしたい」「それで特許料を得たい」「栄誉を得たい」という人間の功名心が、科学を発展させるんだというものもあるんですね。


 錬金術師とかヘルメス主義者たちは、責任感がある科学者なんですね。

 だから自分たちが持っている科学知識っていうのは、使い方によれば破壊兵器にも使える。


 水銀なんてものは、本当に自分たちで実験したら分かるとおり、すごい体を蝕むわけですね。

 なので、人間っていうのを殺すのは簡単で、たとえば水銀みたいな物を撒けばいいっていうのは、研究結果でいくらでも出てるんですよ。

 錬金術師って。


 でも、ずーっと数百年間、それを彼らは発表しなかったんですよね。

 だから、そういう責任感のある科学としての錬金術と、責任感の無い科学としての論理とか、一般の僕らが知っている科学っていうのは、実は「そういう科学が、どうあるべきなのか?」というのを、僕らはそのゴールだけを見てるんですね。


 結果的に、ゴールとして、責任感のある科学というのは途絶えてしまったんですね。

 倫理的な科学というのは途絶えてしまって、とにかく研究発表というのはドンドン出して、それをどうすればいいのかっていうのは、そのつど毎にケースバイケースで議論して考えましょうよという。

 すべてがオープンにされた体制というのしか、僕らは知らないんですね。 


 でも、ヴィクトル・ユーゴーがいた時代。

 どんな時代かというと、フランス革命で宗教に光が当たって、すべてを合理的に説明できるようにした。

 それで、ノートルダム寺院の中ですら祭壇を破壊して、理性の神様というのを称えた時代なんです。


 ユーゴーはそれを見て、それを良しとしながらも、同時にゴシック建築が失われていく事を悩んでいた。

 その神秘主義、錬金術っていうのは何かっていうと、「必要とされる責任があるものだけが知識を持っていればいいんじゃないのか?」っていう前の時代の悩みっていうのも、この中にとどめているわけですね。


 ヘルメス主義から見ると、現代の科学っていうのは安っぽいイタリア人の合理主義であって、ルネッサンスと呼ばれる物事の表面しか見ないバカどもの結論でもあるんですけども(笑)。


 錬金術の秘境性とか閉鎖性は責任感の故。

 だから面白い事にゴシック時代の大工たちは、何を彫ったのかに関しても、ほとんど記録が残ってないんですね。


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