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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/02/02
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今回は、ニコ生ゼミ1月21日(#214)から、ハイライトをお届けいたします。

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 『ゼルダ』の世界を歩いてみよう! 『ブラタモリ』的なゲームの楽しみ方・中編


 では、僕が『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ワイルド』の世界で、どんな体験をしてきたかを語ってみましょう。

 ちょっと立って話をしますね。

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 (巨大な『ゼルダの伝説』の世界地図を見せる)

 これは、ゼルダ世界のマップです。
 本当は、このマップはもっと広大で、これはその中の3分の2を切り出したものなんですけど。

 この世界の真ん中あたりに、“ハイラル城”という場所があります。
 このハイラル城は、今、悪のガノンというヤツに支配されているんですね。

 100年前、「ガノンが復活する」という予言があったので、ハイラルの国は、一応、それに備えてもいたんです。

 だけど、それでもこの城をガノンに奪われてしまいました。


 ハイラル国は、外国に対する備えというのは していたんですよ。

 周囲に存在する衛星国家との外交もちゃんとやってたし、海の向こうの国との戦争にも備えていたんです。

 たとえば、海外から攻めてくる外敵への最終防衛線として“アッカレ砦”という難攻不落の要塞を築いて準備はしていたし、ハイラル城自体も、周囲が山脈に囲まれている天然の要害のような盆地に造られていて、防衛線としては強力だったんですよ。

 ところが、内部からの攻撃にはひとたまりもありませんでした。
 復活したガノンというのは、内側から攻撃を仕掛けてきたんですね。

 おかげで、数千人規模の兵隊たちが、城を捨てて逃げ出すことになってしまったんです。

 それと同時に、城下町や周囲の土地に暮らしていたハイリア人達も、町全体で一斉に避難することになってしまいました。

・・・

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 (地図上にマスキングテープを貼って説明しながら)

 ハイラル城を脱出した数千人規模の王族と騎士団は、少し南下して、それから東のロマーニ平原を突っ切って、橋を渡ります。

 この逃走ルートを実際に歩いてみると分かるんですけど、ここは整備されてない街道なんですよ。

 そんな道を、数千人規模の軍団が突っ切って、このようなルートを辿って、ようやっと高原の方へ抜けて、最後にはアッカレ峠にたどり着きます。


 城を急襲されたので、一度、盆地へ逃げて、街道を辿りながら、追いかけてくる敵と必死で戦って、この要塞に逃げ込んだ。

 これが、軍の通ったルートです。


 それに対して、リンクとゼルダ姫が辿ったのコースはどうかというと、彼らは、焼け出された民衆たちと共に逃げたんですよ。

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 城から逃げた軍隊とは違い、ハイラル城のある盆地全体に住む民衆を率いながらの逃避行となったので、リンクたちは街道を通り過ぎて、南に進路を取ります。

 このあたりの地図に等高線が集中している所があるのがわかりますか?

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 『ゼルダ』の何がすごいかって、地図上の等高線が全てリアルに再現されているんですけど。
 ここは“双子山”といって、偶然、山の間が上手く割れている場所なんですね。

 この、すごく険しい山の間に、偶然、開いていた抜け道みたな場所を通って、クロチェリー平原という場所に移動します。

 ここまでいけば“ハテノ砦”という砦があるんですね。リンク達はここへ逃げ込みました。

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 では、全体で、もう一度 説明しますね。

 復活したガノンがハイラル城を占拠して、そこから数万、数十万くらいの殺人ロボットが、この国中にワーッと溢れ出してきました。

 軍隊は、この黄色のラインを通って、最終防衛線である、無敵無敗のアッカレ砦へと逃げ込みました。

 それに対して、ゼルダ姫とリンクの主人公チームは、逃げ惑う民衆と一緒に南下して、山の間を通って、クロチェリー平原というところを通ってハテノ砦へと逃げ込みました。

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 これが、全体の概況です。

 
 「双子山の割れ方は断層かな?」(コメント)

 ゼルダの世界では、1万年以上前にさらに進んだ文明があって、それがもう、わからなくなってるんですね。

 この山の割れ目というのも、その当時のビーム兵器か何かで割れたような、明らかに活断層ではないような綺麗な切り口なんですけど、そこら辺は、ゲームの中では全く説明されていません。

・・・

 さて、ゼルダ姫とリンクは、民間人達と一緒に城下町から南下して、双子山の狭い街道を抜けて、クロチェリー平原に向かいました。

 狭い街道なら、敵に囲まれなくても済むからですね。


 『ゼルダ』の何がすごいかって、今しているのは、ゲームが始まる100年前の話なんですよ。

 だから、ゲーム内を歩いていると、100年前にリンクたちと戦ったと思われるロボット達の遺跡化した残骸が、そこら中に落ちてるんですよね。


 クリアする前は、「ああ、なんかいっぱい落ちてるな」って思う程度なんです。

 だけど、クリアした後で、よくよく落ち着いて歩いてみると、ここが過去の戦場跡であることがわかるんです。

 そして、そうやって眺めると、「ここは道幅が狭くなってきているから、左右から襲われにくかったんだな」とか、逆に「この平原では、どこにも逃げ場がないところで戦闘が行われたんだな」ということがわかるんです。


 さらに、剣士であるリンクと戦って破壊されたロボットの残骸は、脚などが切られているのに対して、ゼルダ姫の超能力みたいなもので倒されたロボットは、手足が全部揃った状態で、逆さ向きになって倒れている。

 そういったロボットの死に方を見るだけで、「そこでどんな戦いがあったのか?」という事まで、メチャクチャわかるんですよ。


 これが、ブラタモリ的な『ゼルダ』の楽しみ方なんですね。

 ここに残されているオブジェクトというのは、「ゲームデザイナーが雰囲気を出すための小道具として適当に配置した背景の1つ」ではないんです。

 実はこれ、ものすごく考えて配列されてるんですよ。
 なので“読む”ことができるんですね。

 そして、これらのオブジェクトを、「単なるゲームの中の背景だな」と思って通り過ぎるのではなく、「どういう意味があるのか?」と読み解いていくということが、メチャクチャ面白いんです。

・・・

 「両側を崖に挟まれた狭い街道なら、囲まれなくて済む」ということで双子山の山道を通っていたリンクたち。

 ところが、そこを抜けると、広い広いクロチェリー平原が広がっていたんですよ。

 そして、100年前に起きた、このクロチェリー平原での戦いで、リンクは力尽きて息絶えてしまうんですよね。


 ……あ、大丈夫です。これはネタバレではありません。

 「リンクが息絶えた」というのは、ゲームを始めて10秒後くらいに教えられることですから(笑)。


 なぜ、超絶的な剣士であるリンクが倒れたのかというと、双子山の狭い街道を抜けた平原で、ロボット達から一斉に襲われたからですね。

 それまでは、民間人達を守りながらの撤退戦のしんがりを務めて、背後から迫る敵だけと戦っていたリンクは、双子山を抜けた辺りで四方から敵に襲われ、倒れてしまいます。

 しかし、このリンクの働きによって、民間人達は、なんとかハテノ砦に逃げ込むことができたんです。


 この逃亡行では、一緒に戦ってくれる軍隊もいない中、この時点では能力も発現していないゼルダ姫と一緒に、ほとんどリンク1人だけで撤退戦をしてたわけですね。

 そのおかげで、民間人達は奇跡的にハテノ砦に逃げ込むことに成功した。

 これが “ハテノ砦の奇跡” です。

・・・

 このハテノ砦の奇跡というのは、クロチェリー平原に残っているガーディアンたちの亡骸や、町や村の廃墟を見れば分かります。

 「ああ、この位置に100年前まで集落があって、だから街道があるんだ」と。

 ここに街道が通っていたのは、かつてはこの場所に町があったから。
 実際に街道を歩いていると、ポイントポイントで、その廃墟があるのがわかるんですよ。

 でも、繰り返しますけど、ゲームをやってる最中は、僕も全く分からなかったんです。


 街道を移動している途中も「馬で通るには便利だな」とか、町の廃墟を見つけた時も「あ、なんか宝物が拾えるかな?」という浅ましい心でしか見てなかったんです。

 これは、ゲームを攻略している最中なら、しょうがないんですよ。

 でも、ゲームが終わってから、しみじみと歩いてみると「こんなすごい場所だったんだ。こんなすごい激戦地だったんだ。ここででは民間人も一緒に戦ったんだ」ということがわかるんです。

 こういった遺跡には、当時、民間人が一緒になって戦ったことがわかる痕跡というのが、いくつも残っているんですね。


 たとえば、倒れたガーディアンの残骸の周りに、“木の棒”とか、“棍棒”みたいな武器が落ちてるんです。

 クリア前に歩いていた時は、「お宝だと思ったけど、どうしようもないアイテムだな。こんなの戦闘の足しにもならない」って思ってたんですけど。

 でも、そんな武器が周りに落ちてるということは、「ここを通る段階では、民間人達も、粗末な武器を手にリンクと一緒に戦っていた」ということなんです。

 
 そう思った瞬間、もう背筋がゾクゾクしてくるんですね。

・・・

 剣士リンクとゼルダ姫は、逃げる民間人を守りながらクロチェリー平原で戦ったんですけども、そこで、持てる力を全て出しきっちゃったリンクは、力果てて倒れてしまった。

 そして、絶望したゼルダ姫は、ついに封印されていた能力を使ったんです。

 そんな出来事から100年後のクロチェリー平原には、ハテノ砦の前方に地平線まで広がっている大地が残っているんですけど、もう、見渡すかぎり、ガーディアンの残骸で埋め尽くされているんですよ。
 
 ゼルダ姫の能力によって倒された、何千という数の死骸が、地平線までウワーッと広がってるんですね。


 これも、ゲームやってる最中は「ここら辺、ガーディアンの死骸が多いな。生き残ってるヤツがいるんじゃないか? 怖いなあ。でも、なんかいいものが拾えるかもな」とか思う程度なんです。

 だけど、ゲームが終わって、全てのお話が頭の中に入ってくると、ここがいかにすごい激戦地だったかということがわかる。

 「ここで人間が助かったからこそ、ハテノ砦の近くにハテノ村というのが生まれて、100年かけてようやく復興しつつあるんだ」ということが身にしみてくるんですね。


 この地平線まで埋め尽くすようなガーディアン達を、ゼルダ姫が最後の力で倒したという、このすごさ。

 「100年前ってすごかったんじゃん!」というのがわかるんです。


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