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小飼弾の論弾 #131 「リクナビ問題のヤバさと、福祉を人質にされた労働者」

2019/09/21 07:00 投稿

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 「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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 今回は、2019年8月6日(火)配信その2をお届けします。

 次回は、2019年10月8日(火)20:00の配信です。

 お楽しみに!

2019/08/06配信のハイライト(その2)

  • リクナビ問題と「福祉を人質にしている」現状
  • 『天気の子』の気象兵器と裏『まどマギ』
  • 表現の不自由展と「物理的な可能なものというのは、全部表現」

リクナビ問題と「福祉を人質にしている」現状

【01:05:48】

山路:じゃあリクナビなんですが、これはちょっとリンク出しますか。ええと、これか、就活生の辞退予測。このリクナビって、もうエントリーシート、本当に新卒生が就職しようと思うとここに登録して、やるわけなんですが、その登録した就活生の情報をAI、AIといっていいのかな、機械学習とかで分析して、どれくらいこういうタイプの人は内定辞退するのかというその情報を加えて、企業に販売していたというのが、大変な話題になってることなんですけれども。

 これ個人情報の観点からいっても、その1人1人を紐付けして、この人はこうだから、だいたい何%くらい内定辞退率みたいなふうな感じで企業に販売してたように読めるんですけどね。あのリリースとか記事を読む限りは。どういうふうな画面で出てくるのかまでは、公開されていないんですけども。

小飼:じつはですね、人材紹介業というのも、規制産業じゃないですか、要は誰でも勝手にやっていいわけではないですよね。だから、かつてはその就職斡旋の相談というのは職安。

山路:ああ職業安定所。今のハローワーク。

小飼:でもハローワークって、誰が考えた名称なの? 本当、頭痛くなってくるんだけどもね。

山路:意味不明っちゃあ意味不明ですよね。

小飼:意味不明だよね。もうわけわかんない。

山路:何というかとにかく優しいイメージということで、とりあえずはなんか選ばれた、あんまり考えてない感じはしますけども。そういうけっこうかなり厳しい規制の必要な事業であると。

小飼:と、見られていたところで、我々くらいの、山路さんや僕くらいの年齢の人間にとって、リクルートがやっていることというのは、アルバイトですとか、パートタイムジョブとか、そういったものの紹介だったんですけども、一般的な雇用でも今はこういう形でやっているわけですよね。
 エントリーシートというのを、いっぱい出せというのは、別に日本固有の事情ではなくって、アメリカとかでも職探しの時とかっていうのは、もうメールをもうそれこそ何十何百社と送りつけるんですけども。その時にリクルートみたいな、総取りまとめするような会社というのはアメリカの場合、ないんですよ。

山路:それは何でなんですか? なんかあってもよさそうなものだけども。そういう会社がそれこそ取りまとめて、企業と契約して送る、そういうのって出てきそうなものなんだけども、それは規制があるからなんですかね? 法的な。

小飼:逆に法的な規制がないからかもしれない。簡単にクビに出来るからかもしれない。だからとりあえず採っておいて、「やっぱいいや」がしやすいのよ、米国のほうが。
 だからわざわざサードパーティに安くもない金を払ってというのは。

山路:なんか日本の場合は、ある意味その終身雇用というか、正社員に入るため、その日本型企業のそのそういう終身雇用とかのやつに乗るための仕組みになってたりするところで、位置づけがちょっと違うということなんですかね?

小飼:位置づけがちょっと違うということですね。実際、あの米国にはそもそも新卒採用というのが、概念すらないのよ。たいてい職を募集している会社というのは、直に自分のウェブページで募集してたりもするでしょう。

山路:うんうん。インターンとかはあったりするし、けっこうその大学生とかインターン、でも向こうの大学生なんかでもインターンとして、いろいろな、凄え働かされたりとかして、大変みたいな話は聞きますが。

小飼:じゃあわざわざインターンになるのに、わざわざリクルートを通すわけ? そもそもリクルートという言葉は、英語の一般名詞だった筈なのに、今や日本の固有名詞になっているよね、リクルート社の。

山路:新兵の、まぁそういうことですもんね、リクルートって。

小飼:実際にリクルートするという。

山路:これ、この内定辞退確率というのを、個人情報を個人と紐付けてやったということが、大変な非難を食らっているということではあるんですけれども。これのヤバさというのは、最近だとGoogleとかFacebookなんかも個人情報の扱いとか、凄い世間的な非難を食らってたりするじゃないですか。そういうことを。ここんところで、けっこうまた大胆な、大胆なというか、明らかに批判を食らいそうなところをやっていいのかなというのが、びっくり。

小飼:いや批判でなくて、それこそどんな罰金食らうんだと。

山路:今の風向きからしたらちょっとヤバすぎて、手が出せないと思うんだけど。

小飼:でも真にヤバいのは、これ言っちゃうとまあ、僕自体もある程度自己否定になっちゃうかもしれないんですけども、リクルートのような会社が世にはばかっているのがいいのかどうかと。

山路:やったもん勝ち的なということ?

小飼:いや、やったもん勝ちなのではなくって、リクルートのようなエントリーシートを取りまとめて、各企業に送りつけてというのをあの規模でやっているものというと、マイナビくらい? いちおう、Competitorはいるんだよね。でもCompetitorはいるにしても、寡占状態なわけじゃないですか。

山路:そういうガッツリ人の、新卒生の人生とかをコントロール出来るようなところに、大きな企業が影響力を持っててみたいな、今の在り方。

小飼:というよりも何と言えばいいのかな、他の国であれば、雇用主と被雇用者がサシでやってるところに、中抜きをするわけじゃないですか。

山路:そんなコスト効果の悪いことを、他の国だったらしなかった、しないで済んでた。でも日本は、そういう中抜きを会社を敢えて入れる、その理由がまああるんでしょうけどもね。

小飼:いや、だから日本の場合、たとえば履歴書とかっていうのも、フォームがあるわけじゃないですか、所定の。

山路:どこの学校出て、みたいな。

小飼:どこの国でもあるものではないですよね、あれは。中国では似たようなものを見かけました。ただし日本では見かけないようなフィールドもありますよね、民族とか。

山路:ああ!

小飼:都市戸籍の有無ですとかね。

山路:より怖いですね。より怖いな、それは。そういうところの、リクルート、こういう就職を斡旋するような企業というのは、もうちょっと影響力を避ける方向に行くべきとかそういうことですか? 規制をもっと強めた方がいいっていう。

小飼:そういうことというよりも、今はネットがあるわけですよね。求人情報というのは、自分のところのウェブページに直に載せられてますよね。だからそこに直に応募してっていうのは、別に日本の企業だってやっていいですし、実際やっているわけですよね。

山路:うんうん。

小飼:なのになんで、リクナビに頼むんだろう? っていうのは。

山路:最近日本企業でも、新卒から年俸1000万とか2000万支給というのを、ちょっと話題作りもあるんでしょうけども、出してくるところも出てきたじゃないですか。あれって別ルートだったりするんですかね? つまりそういうリクナビとかじゃなくて、ああいうのは1本釣りして、スター選手は引っ張って来たりするんですかね? ああいうやつは。

小飼:そう、だから1本釣り業者は日本にもいるわけですよ。自分のところにもけっこう、釣り針が来たりしますけどもね。それはさておき。

山路:いわゆるヘッドハンター的な。

小飼:そうそう。なんだけど、リクルートとかのある意味凄いところっていうのは、トロール漁船。

山路:だからそういう年俸何千万とか出す新卒生を、このリクナビで探しているわけでは企業側もない気がするんですよね。もうちょっと、言ってみたらスター選手ではない、もっと兵隊的な人を求めている。

小飼:いや、でも兵隊的な仕事自体が減っているんですよね。だから結局、兵隊であればクローンかドロイドのほうがいいわけですから。

山路:まあまあそうですわな。

小飼:それは日本でも変わらないですよ。

山路:これ、仮にそういうリクナビみたいなものがなくなったと、今なくなったとしたら、企業ってけっこう混乱はするわけですよね?

小飼:どうなんでしょうね? そこは。

山路:その膨大なエントリーを自分ところで、全部データ分析して、ふるい分けして。

小飼:逆に言うと、従業員というのは、ほとんどの企業にとって1番重要なアセットですよね。人材ポートフォリオというのは、もうその企業の体質そのものと言っていいですよね。
 そういったところを、人材斡旋会社ごときに任せるの?

山路:うーん、それこそ企業が1番コストかけて、しっかり選んで。

小飼:あるいはしっかり育てて、まあどっちでもいいんですけれども。

山路:「本当の天才がリクナビ登録するか」(コメント)みたいな、コメントが(笑)

小飼:それは日本でもあんまりしないでしょう。

山路:「リクナビがなくなったら、膨大なエントリーがなくなるのでは?」(コメント)「リクナビのせいで大量のエントリーが増える」(コメント)、うんうん。これはただそのリクナビがなくなったら、そういうことって改善されるものなのかな? とか思ったり。結局今までリクナビが存在していなかった時もあるわけじゃないですか。

小飼:うん。

山路:そういう、そうなることはないのかな? もはや。リクナビがなかったような時代には戻れないのだろうか? 企業がやっぱりそういう仕組を、採用を選んで、自社だけでセレクションをするような仕組みって構築するのにけっこうな時間が、ノウハウを積み上げるのにまた時間がかかるのかな。

小飼:でもどうなんだろうな。けっこうというわけでもないけれども、まず凄い小さなところとかというのは、リクナビというのは高すぎて使えないよね。
 ベンチャーとかはもうリクナビとか高すぎて、おかげでウォンテッドリーみたいなところが出てきて、だけどもな、人材斡旋業ってろくなのいねえよな(笑)という感じがしないでもないんだけれども。

山路:最近テレビCMなんか打ってる、そういう人材斡旋業とかっていうのは、企業の採用担当者からみて安い、コストが安いですよみたいなことをかなり謳ってたりしますね。どういう方向に行くのがいいのかっていうのは。ようわからんのですけどもね。

小飼:いや、ようわからんではなくって、もうそもそも、リクナビとかというのはもう、たとえば独禁法の範疇に入るんじゃないのかと。

山路:コメントで就活生ですかね、「就活生が有名企業に行きたがりですよね」みたいな。確かになんかネットから、リクナビとかなんかでとりあえず、いくらでも登録が出来るから、そこで人気のある企業にガーッと集中してみたいなそういうなんか流れはあるようなところはありますね。「新卒一括採用やめればいい」(コメント)。

小飼:もう本当それなんですけども、但し新卒一括採用をやめた場合、何が起こるかというと、新卒者の失業率というのが確実に上がるでしょうね。

山路:欧米のようになるという。

小飼:うん、もうスペインとかに至っては4割でしたっけ?

山路:なんかそれってもう身の回りで働いている若い奴がいねえみたいな。

小飼:なのに、何で深刻なことにならないかっていったら、まさにそうなんです、就職しないと最低限文化的な生活が送れないというふうにはなってないから、まだ何と言えばいいのかな。

山路:親のスネかじり?

小飼:親のスネかじりというよりも、失業状態というのが、日本ほどスティグマではないわけです。僕はそうなるべきだと思うんですよね。

山路:その失業状態でも、最低限の給付でなんとかやっていくことが出来るみたいな。

小飼:そうそう。だから労働と引き換えでないと福祉を得られないというのが、間違っていると思う。

山路:そうか就活生もやっぱり怖いのはなんか、そういう状態に陥ったりすることなわけですもんね。「ニートはニートで楽しく暮らせることをもっと知るべき」(コメント)って、アハハ。なんか日本は最初の新卒一括採用のところに乗っちゃわないと、あと地獄みたいなように思い込んでいるところはありますよね。

小飼:そうなんですよ。就活に失敗した場合の福祉というのは、今のところ、日本の場合は実家の太さ次第(笑)

山路:新卒で就職できなかった人っていうのは、それこそ、ロスジェネ的なところに代表されるように、ずっと非正規を転々としてみたいな、そういうストーリーというのが語られているから、それを相当若い人はみんな恐れている気がする。

小飼:うん、だから本当に、福祉を人質に取られているんですよね。だから福祉というのは、何も老年で介護を受けつつとかそういったことではないですよ。
 ここでいう福祉といのは、本当に英語のWelfareのことであって、要は最低限文化的な生活を送るために必要なものという意味で使っています。僕は福祉という言葉を。もう日本の場合は本当に福祉というが、雇用と引き換えになっちゃってるんですよね。

山路:なんかよく福祉に頼るなみたなことを言う人もいたりしますもんね。「働かない勇気」(コメント)。

小飼:いや、本当そうなんですよ。だから頼れなければ福祉ではないんですよね。福祉に頼るなと言うけれども。

山路:「一度、博士課程に進んで人生を考えるといいのでは」(コメント)、まあな、ただ今博士課程に進んでいろいろ困窮している人みたいな話とかも出てきたりするからな。一概にみんな、博士課程に進むことを勧めづらくはなっているんじゃないかっていう気がするんだけど。

小飼:特に日本の場合はね。

山路:「福祉を人質にとって奴隷商売しているリクナビ」ってコメントが出てますね。

小飼:そういうことなんですよ。こういうのも何ですけども、でも不思議なことにパソナほど後ろ指は刺されてないですよね。リクルートは(笑)

山路:あれは何なんですかね? それはもう皆、新卒一括採用っていうことは、もうそれが当然であると思っているから、そこのところに非難がいかないんですかね? それのこと自体には。そのああいう新卒一括採用を補助するというか促進するというか。

小飼:でも非難したら干されるという恐怖もあるんでしょうね。僕らがこうやってのうのうと、リクルートヤバくね? パソナヤバくね? と言うのは、人質交換がないからですよね。我々には脅しにならないわけですよね。

山路:確かに、気にしたこともなかった。

小飼:だからお前ら干すぞと、干しようがないと。いやけっこう大きいですよ、それって。お賃金を人質に取られないという、質に取られないというのは。

山路:「そして正社員でない人をこき使って大儲けしているのが、平蔵」(コメント)うーん。

小飼:大儲けしているかどうかはわかんないんだけどね。

『天気の子』の気象兵器と裏『まどマギ』

【01:27:02】

山路:じゃあそろそろ『天気の子』の話行きますかね。弾さん、どこで見ました? 『天気の子』。

小飼:日比谷で見たな。

山路:ああそうですか。『天気の子』いちおう公式サイトのリンクを出して。これってちょっとネタバレの話になっちゃうかもしれないですよね。ネタバレの時には、ネタバレですといちおう言うようにしますので。「『君の名は。』くらいヒットするかな」ってコメント出てますけど、弾さん的にどうでした? このあたり。

 

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