彼は「いやあ、私らスタッフも頭を抱えているんですよ。で、何とか発想を大きく切り替えなければということで、私がいま勉強しているのはこれ」と言いながら茶封筒から取り出したのは、OECD(経済開発協力機構)が10月13日に発表した主要国の「幸福度調査」の分厚いレポート。「これを見ると、平均寿命ではスペインと並んで世界トップだとか15歳児の読み書き・算数では韓国に次いで2位とか、自慢できることもいくつかはあるが、ほとんどの指標でまあまあの中程度かそれ以下で、何だか面白くもない平凡な国になってしまったんだなあと実感します」と歎くのである。
ページをめくると、平均寿命は確かに一番だが、その表のすぐ下に「長寿は必ずしも健康な生活を意味しない」とコメントがあって、次の「自分の健康を『非常によい』『よい』と答えた人の比率」という表に続く。それを見るとニュージーランド、カナダ、米国が90%前後でトップクラスだが、日本と韓国は35%程度で、対象の35カ国中で最下位。本来なら尊ばれ敬われて、社会全体で大事にされるべき長寿者の3分の2が健康問題に悩み、政治や行政が彼らを厄介者扱いするこの国の有様が浮かび出ている。
そうは言ってもまだ日本は世界の中でも豊かな国のはずだと思いたいのだが、「正規雇用者の年収」を購買力平価で比較した表を見るとOECD平均より低く、韓国より1つ下、スペインより1つ上という程度である。親が失業中の家庭で暮らす子どもの割合は、全体平均で10%だが、日本は16%で、ギリシャやポルトガル並み。こういう統計を次々に突き付けられると愕然とする。
アベノミクスの無惨な失敗の後に出て来たのは「600兆円」の空文句だけという安倍にこの国を委ねていては、未来も何もあったものではないことを、このレポートが示している。▲
(日刊ゲンダイ10月29日付から転載)
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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
コメント
コメントを書く(ID:18367902)
国民負担を求めると批判が強くなるので、国民に負担のかからない景気の良い話を持ち出してきたといえる。
イメージ戦略である。達成できなくとも批判を受ける可能性の少ない無難な目標を掲げたに過ぎない。本来は、600兆円を掲げたからには、国民の収入がどのように増えるかを、算出しなければならないのに、一切提示しない。国民を徹底して馬鹿にしているのであるが、マスコミが取り上げないので、600兆円だけが独り歩きをしている。
物価上昇で苦しむ国民に対し、見て見ぬふりして、景気の良い話をしても、また、馬鹿を言っていると白けた国民意識が蔓延し始めているのではないか。マスコミが、国民の味方でないのが、安倍政権の命綱なのでしょう。
(ID:2347498)
この人、中韓の犬だよね。