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篠塚恭一:地域交通の活用で移動をスムーズに──街へ出よう!(24)

2015/11/01 08:00 投稿

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  • 篠塚恭一
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日常生活に困りごとを抱えた人は、旅に出ることができない。

そんな当たり前のことを旅先で気づかされたのがきっかけで、介護の必要な人の外出支援を考えるようになりました。旅の仕事で知り合った方ですが、その人の日常生活におこっている困りごとを知り、できるならそうしたことも解決できるようになりたいと思いました。旅は非日常のものですが、旅を楽しんでもらえる関係を続けるなら、日ごろの困りごとも解決できるようなお付き合いも大事にしていけたら嬉しいと感じたからです。

そうした出逢いのひとつに、医療や介護のことなど健康の不安だけでなく、日常生活を送るためには移動手段や公共交通が整っていないところでは安心して暮らすことができないということを知りました。そして、住む人が安心できないところへは、よそから訪ねる人もまた身動きが取れずに不自由であることを痛感したのです。

先日、あるSNSサイトに、病気の夫の退院をきっかけに始まる透析通院のため、必要な交通費が払えずに困っているという老夫人の話が投稿されました。その方は独居で生活保護を受けており、住んでいるのは交通がとても不便な地域でした。病院まで1キロ以上あるところで、長時間かけて乗り換えて、週3回も通院するのは体力的に無理だと訴えています。

しかし、市では生活保護費を減らす方針のため、最近では補助を出せないと言われるようになりました。結局、この方の相談を受けた移動支援団体が支払えない費用を別から賄い、持ち出しを続けることになっているといいます。

「命にかかわることだから、他になければ私達で送迎します。でも、本来制度であることを私達がボランティアですることは違うのではないか、なぜ全国同一と言いながら、移動支援制度が利用できる地域とそうでない地域があるのか」と憤りは隠せません。

そこはかつて東北漁業の基地として栄え、近くに有名な温泉地が多い観光拠点としても人気の場所でした。

高齢で身体の不自由な人にとって一番の希望は「ゆっくり温泉でくつろぎたい」ということですが、地域の交通が乏しくては、こうした人が気軽に訪ねることはできません。国が地方創生を重点施策としてすすめていくなら、地方に仕事ができ、税金だけではなく、自由なお金が流れつづけていくような新しい仕組みが必要です。

今年、改正された介護保険は、国から市町村が中心となって、今まで以上に「予防」に力をいれた施策が進められるそうですが、住んでいる場所によって受けられるサービスに大きな差が出てくるのではないかと懸念されています。病院で治療を終え、家に帰れても、目標がなければやがてリハビリに向かう気力は萎え、再入院ということもよく聞く話です。温泉地ではバリアフリーに取り組む地域が増えており、介護旅行もこれまで以上に身近になっていくと思います。

しかし、健常な方でさえ不自由な地方の二次交通について、そのバリアフリー化を求めるのは一層困難で、こうした状況は、地元をよく知る交通サービスに取り組んでいる事業者や担い手との連携が欠かせません。

私はこうした地域交通のインフラやサービスを担う方たちが、これからも安心して移動を担える活動費、税金とは違った新しいお金の流れが必要だとつくづく感じます。


【篠塚恭一(しのづか・きょういち )プロフィール】
1961年、千葉市生れ。91年(株)SPI設立[代表取締役]観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー(外出支援専門員)協会設立[理事長]。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。



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