スポーツクラブを利用する高齢者会員がかなり増えているそうです。
近所のジムでも10年ほど前から平日の昼間には高齢な方がいっぱいで、若い人はもっと働けと無言の視線を感じて肩身の狭い思いをすることが増えました。
当時は人口の密集した地域に乱立するスポーツクラブどうしが過剰な値引き合戦の末、会員の奪い合いをしていた頃です。どこも設備投資が回収できずに経営はかなり大変で、新しい顧客層を探していました。それが、ちょうど2006年に介護保険法が改正され介護予防が重視されたことから、大手スポーツクラブはそのターゲットを高齢者層にシフトしました。若い人が体を鍛えるスポーツジムから、まずメタボ対策としての運動をすすめ、今は介護予防に取り組む自治体組んで、地域に展開を広げています。健康長寿社会をささえるヘルスケア産業へと事業の転換を図り、国の施策とともに成長してきた歴史をたどることができます。
一方、主婦層には1回30分程度で気軽にエクササイズできる女性専用のジムが大人気だそうで、先日この企画を海外から持ち込んだ方に聞いたところ、こちらはしっかりマーケティングされているのに感心させられました。予約不要で短時間だから家事の合間でも大丈夫、女性だけなので化粧も気にせず気軽にいけてシャワーもいりません。したがって、高額な水回り設備やパウダールームなどのスペースも不要で設備投資もいらず、デイサービスのような人員配置も不要なことから低コストで運営できます。民間の知恵とはいえ、理にかなうことがたくさんありました。
主婦といっても50代から中には70代以上の方もたくさんいて、美容や健康増進をすすめるだけでなく、地域に新しい友達ができたり、仲良くなって日常生活の中でも助けあったりするなどと地域包括ケアシステムのいう立派な介護予防事業だと思います。
こうした新しいタイプの健康産業が醸成されるには、自由な発想で事業を起こすことのできる土壌と人材が必用で、こうしたさまざまなビジネス様式への挑戦を特区などという大掛かりなモノでなく、手軽にチャレンジできる社会的支援、ようするにムードがあればいいと思います。
この夏、学生インターンの方と毎日過ごしていますが、実に大きな学びを得ています。まじめでおとなしく、このまま社会に出すのは心配だと思うような方も、日に日に逞しくなって短時間で成長していく姿を見せてくれます。中には注意されて涙を流すような子もいますが、ハラハラするのは担当社員たちで同級生たちは冷静にとらえているのが伝わり安心しました。イマドキといわれる学生たちも来年には厳しい就職活動を経験し、やがてさらに大きな実社会の波にのまれることになります。
しかし、失敗しても何度でも立ち上がるような力、社会を生き抜く力をつけなければ本人の夢などかないません。だから、私達も福祉や観光に仕事を求める若者ががっかりするような業界であってはいけないと感じます。
【篠塚恭一しのづか・きょういち プロフィール】
1961年、千葉市生れ。91年株SPI設立代表取締役観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー外出支援専門員協会設立理事長。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。
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