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高野孟:広がる農家民泊/里山の暮らし味わう

2016/09/29 08:00 投稿

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いま「民泊」というと、急増する外国人観光客をマンションの空き部屋などに低価格で泊まらせる都市型民泊の拡充が話題だが、農村でも旧来からの「農家民宿」よりもむしろ「農家民泊」がブームと言っていいほどの広がりを見せていて、これがグリーン・ツーリズムの新しい柱になりつつある。

農家民宿は農家が自ら経営して農業体験を提供するもので、旅館業法・農山漁村余暇法などの規制を受けるけれども、堂々と営業して宿泊料も受け取れる。それに対して同法の適用外の農家民泊は、営業が常態化してはならない(つまり年柄年中営業してはいけないのだが、何日までならいいのかの規定はない)とか、体験料や食事代を実費として受け取ってもいいが宿泊代は受け取れないとかの面倒な制限がある。

もっと重要なのは、両者のサービスの質的な違いで、農家民宿はたいていの場合、自宅を増築して宿泊施設にしたり、敷地内にしゃれたコテージを建てたりして、その部分をお客専用のスペースとして提供して営業する。もちろん体験プログラムは提供するが、オーナーである農家の家族との触れ合いは必須ではない。

それに対して農家民泊は、むしろ逆で、お客が農家の暮らしの中にずっぽりと浸かって、家族と一緒にご飯を作ったり、庭で草取りや薪割りを手伝ったり、その延長で畑や裏山にも出かけて行って農林作業の手伝いもする。宿泊や食事提供と農業体験とが切り離されておらず、それらを含めた「里山の暮らし」のすべてを体験するのが民泊なのである。

ところがさらにややこしいことに、民宿として旅館業法などの許可を取得しているのに、民宿と言わずに民泊を名乗っている例も少なくない。民泊は上述のようにいろいろ制限があるので恒常的にお客を受け入れるには民宿のほうがいい。しかし提供したいサービスは田舎暮らし丸ごと体験なので、敢えてそうするのである。実は、私が居住する千葉・房総の大山千枚田の周辺には7軒の農家民泊があって「鴨川農家民泊組合」をなしているが、それらはみな民泊を名乗る民宿である。

私も理事を務めるNPO大山千枚田理事会では、数百組の会員を擁する棚田オーナー制・トラスト制の運営を主軸にする一方で、首都圏の小中学校ばかりでなく台湾の高校なども含めて年間5000人を超える子どもたちの農業体験や自然観察などを受け入れている。

その多くは日帰りだが、1泊2日の場合は遠くのホテルなどに泊まってバスで棚田との間を往復する。その引率の先生方が口を揃えて「ホテルに泊まるよりも、農家民泊で村の暮らしそのものを体験させたい。本当は1学年全部を2泊3日の修学旅行に連れてきたいのだが」と言う。

今どき1学年は120人程度なので、7軒の民泊ではとうてい受け入れ不能。それでNPOと民泊組合が協力して農家民泊を20〜25軒に増やそうという構想に取り組み始めた。農家民泊は大きな可能性を秘めているように思う。▲(日本農業新聞9月19日付から転載)


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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
Facebook:高野 孟

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