第1に、安保法制。野田政権の国家戦略会議フロンティア分科会は12年7月、憲法解釈を変えて集団的自衛権を行使を認めるべきだと提言し、それを「能動的な平和主義」と名付けた。それと連動して自民党もほぼ同時期に「国家安全保障基本法(概要)」を発表して政権交代後に備えた。
第2に、武器輸出。藤村修官房長官は11年12月、佐藤・三木両内閣以来の武器輸出3原則を見直して「包括的な例外協定」案を発表した。それを受けて安倍は14年4月、同3原則を廃止した。
第3に、オスプレイ配備。米国の言いなりで受け入れ、12年10月に沖縄に配備を強行させた。
第4に、尖閣国有化。12年9月、中国への根回しを欠いたまま尖閣諸島の国有化に踏み切り、日中関係が一気暗転、安倍政権の扇情的な「中国脅威論」キャンペーンに絶好の材料を提供した。
第5に、原発再稼働。野田内閣は12年6月、3・11後初めて大飯原発3、4号機の再稼働を決定し、7月から運転させた。また同時に、再稼働の「新安全基準」を定め、それを担う「原子力規制委員会」を設置する法案を成立させた。同委員会は12年9月に発足し、せっせと再稼働推進に取り組み始めた。それを受けて安倍は、全面的な原発復活・輸出路線に突き進んだ。
第6に、TPP。最初に「参加を検討する」と言ったのは菅直人首相だが、野田は11年11月「参加のため関係国と協議に入る」と表明、12年に入り各国に政府代表団を派遣し始めた。それを引き継いで安倍は13年3月、TPPに正式に参加表明、甘利明特命大臣を任命しして交渉をまとめさせた。
第7に、消費増税。野田内閣は12年2月に「社会保障・税一体改革」大綱を閣議決定し、8月に「14年に8%、15年に10%」とする消費税法改正案を成立させた。これをめぐる安倍との駆け引きの中で、やれば負けると分かっている解散・総選挙を打って、同志173人を落選させ、安倍に政権をプレゼントした。
その野田が蓮舫の傀儡師になって、一体どのように自民党と対決して政権を奪い返すというのだろうか。見えているのは「自公民大連立」という悪夢の予兆だけである。▲
(日刊ゲンダイ9月22日付から転載)
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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
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