今回は茂木健一郎さんの『Facebook』よりご寄稿いただきました。
■私が鳩山由紀夫さんを支持する理由
みなさん、こんにちは。
私は、今日、鳩山由紀夫さんの応援演説に来ました。自分が何かやろうとか、思惑があるとか、そういうことではなく、「私利私欲」とはまったく関係なしに(笑)、純粋に、鳩山由紀夫さんを応援しに来たのです。
鳩山事務所で、秘書の芳賀さんとお話していた時、次回の衆議院議員選挙がなかなかに厳しい情勢だと知り、その場で、カレンダーを開けて、10月、11月の週末で空いているところはこことここだから、ぼくは応援に北海道の地元に行きます、と勝手に申し出たのです。
ですから、こちらの方(笑)が、私に、応援に来てくれとか、そんなことをおっしゃったのではありません。鳩山さんはシャイですから、決してそんなことはおっしゃいません(笑)。
なぜ、私が、今、鳩山さんの応援をしたいと思ったのでしょうか。それには、ここのところの、日本の政治情勢があります。
今、アメリカでは大統領選挙が最終盤を迎えています。オバマ大統領と、ロムニー知事の間で、デッドヒートが繰り広げられている。オバマ大統領が代表しているのは、社会の中で、お互いに助け合い、結びあい、高めあうという考え方です。その一つの象徴が、健康保険制度改革(オバマ・ケア)でしょう。一方、ロムニー知事は、自助努力が必要だと言っている。市場の中で競争することで、努力する者が報われるのだという。大統領に当選したら、まっさきにオバマ・ケアを廃止すると言っている。
アメリカで、オバマさんを支持する人と、ロムニーさんを支持する人がほぼ半々なのは、それでバランスがとれるということだと思います。オキュパイ・ウォールストリートや、1%対99%の議論は、このような対立/論争を背景に生まれています。
私が鳩山由紀夫さんを支持する理由、そして次の衆議院選挙でも当選して、引き続き議員をしていただきたいと考える理由は、日本では、鳩山さんこそが、オバマ大統領が代表しているような考え方の中心だと思うからです。
このところの日本を見てください。人々を分断し、対立を煽るような言説が目立ちます。「自己責任」という知性も品性もない言葉が流行る。成功しないのは、お前の自己責任だという。本当ですか? みなさん、一人で生きているのですか? この世に生まれたのは、あなたの自己責任ですか? そんなはずがない。本当は、みんなはつながって生きている。誰一人として、一人で生きている人はいないのです。
私たち一人ひとりは、生涯で会うたくさんの人から少しずつ影響をもらって生きています。創造性は、コミュニケーションと結びついています。何もないところから生まれる「独創性」などないのです。
シリコンバレーでは、みんなが友だちです。ジョブズさんだって、一人でiPhoneをつくったわけではないでしょう。日本人が「自己責任」という言葉を口にし、子どもたちがペーパーテストによる受験という究極の個人競技にいそしんでいる間に、アメリカではネットワークを通したつながりを活かす文化が育まれています。
ノーベル経済学賞を受賞した、Joseph Stiglitzさんが、近著Price of Inequalityで強調しているように、自己責任だとか、市場原理主義といった考え方には、理論的にも、経験的にも根拠はありません。むしろ、脳が挑戦するために必要な安全基地(secure base)という視点から見れば、自己責任や市場原理主義には百害あって一利なしです。
鳩山さんは、日本において、以上のことがわかって実行できる、数少ない政治家だと思います。民主党の2009マニフェストは、そのような志向性を持っていました。子ども手当、高校の無償化、そして寄付税制の改革は、社会がお互いに支え合い、安全基地をつくる方向性を目指していました。鳩山さんの提唱されている「新しい公共」こそが、これからの日本を支えるpublic resourceになると思います。その試みが志し半ばで挫折したことは、日本にとって痛恨の出来事でした。
しかし、まだまだ日本を諦めるには、早すぎます。
社会を分断し、対立させるような論調が目立つ中で、鳩山さんは一貫してつなごうとされています。官邸前デモの人々と、官邸内をつなごうと試みられたことは、その一つの象徴でしょう。
にもかかわらず、鳩山さんの評判はよくないようです。一度あるイメージができると、人々はそれに安易に依拠してバッシングしようとする。「最低でも県外」発言にしても、私もよく沖縄に行きますが、むしろ初めて沖縄のことを親身になって考えてくれた首相ということで感謝/共感する方が多いように思います。たとえ、それが実現できなかったとしても、試みたことに価値がある。
メディアの中で流布しているネガティヴな鳩山さんのイメージは、いったい何に由来するのでしょう。私は、以上に申し上げたようなものごとの本筋を見ることが必要だと考えます。そして、そのようなものごとの本筋において、鳩山さんを支持したいのです。
今度の選挙はなかなか厳しいようです。対立候補の方のポスターは、ヴィジュアル的になかなか迫力がある(笑)。しかも、あれ、ポスター、張りすぎじゃないですか(笑)。
至るところに、物量作戦みたいに張ってありますね。
厳しい闘いだとは思いますが、これまで述べたような理由で、鳩山さんが、そう簡単に負けるわけにはいかないのです。
原発、TPPと、このところの日本には、国論を二分するようなテーマが続いていました。私たちは疲れています。今必要なのは、分断することではなく、つなげること、癒やすことです。お互いの協力の中から、真の挑戦と独創を生み出して、国を発展させていくことです。
情勢は、予断を許しませんが、以上のような鳩山さんという政治家の本筋をみきわめて、粘り強く伝えていけば、必ず、伝わる方には伝わる。私は、そのように信じています。
(2012年10月27日 北海道苫小牧、静内、登別における、茂木健一郎による鳩山由紀夫さん応援演説の要旨)
執筆: この記事は茂木健一郎さんの『Facebook』からご寄稿いただきました。
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