高河ゆんの若き天才時代。
よりディープに作品を深堀りしていくのも良いけれど、もっと浅くて読みやすい記事も必要なはず。あと、じっさい、ぼくは普段読んでいる本の大半をここに取り上げないので、それはもったいないよな、と。
特に何かしらのコンテクストにのっとった作品じゃなくても、雑談ふうに語っていくことはできるし、それで十分記事になるんじゃないかと思ったしだい。まあ、これもペトロニウスさんの入れ知恵なんですけれどね。
さて、そういうわけで、ベーシックレビュー、始めます。第一回は『佐藤くんと田中さん』。この漫画、以前にも取り上げた気もするけれど、まあいいや。
永遠を生きるヴァンパイアの人生を、いまやベテラン作家となった高河ゆんがセンス抜群に描いた作品です。
云うまでもなく古来、吸血鬼ものは枚挙にいとまがないくらいあるわけですが、さすがは高河ゆんというべきか、一風変わった作品に仕上げることに成功しているように思います。
というのも、「永遠」を生きるヴァンパイアの佐藤くんの描写が非常にライトなんですよね。永劫を生きる者の者の孤独と哀切が、まったく描かれていないわけではないのだけれど、ごくあっさりと流されている印象。
いかにも高河ゆんらしいセンスあふれる内容で、いやー、面白い。往年の高河ゆんの天才を忍ばせるものがありますね。けっこうオススメ。
ちなみに、吸血鬼ものの長く続く歴史については、以下の記事を参考にしてください。まあほんとに参考程度にしかならない記事だけれど、過去ログの海から取り出してきました。
それにしても、高河ゆんさんって、あまり作品を完結させることができないタイプの作家さんなんですよね。いや、きちんと完結しているものもたくさんあるのだけれど、未完に終わった作品はそれ以上に多い。ぼくは、以前、「高河ゆんの未完伝説。」と題する記事を書きました。
高河ゆんの漫画で未完に終わったものがいかに多いかということを示した記事なのですが、どうもこの『佐藤くんと田中さん』も未完に終わるのではないかという気がする。そういう意味では、無責任な作家と云えなくもないかなあ。
代表作である『アーシアン』がきちんと完結したことは喜ぶべきだけれど、もうひとつの代表作『源氏』が未完に終わったのは残念だよな。『源氏』、面白かったんだけれどね。
個人的には、高河ゆんの作風は妊娠、出産、休養を経て、少年誌や青年誌に舞台を移したあたりからがらっと変わっている印象です。『妖精事件』以後の作品は何かが違う。
それをまたいで描かれてる『恋愛』と『恋愛 CROWN』を読み比べてみると非常に違いがはっきりしている。まあ、ぼくしか感じない違いなのかもしれませんが、でもぼくはそう感じるのだ。
ぼくはやっぱりそれ以前の作品が好きなんだけれど、まあ云っても詮なきことではあります。失われた過去は決して取り戻せはしないのだから。
やはり
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