劇場映画『攻殻機動隊ARISE』の第二弾を観ました。前作はいまひとつ不満な出来だったのですが、今作は果たして佳作。

 『GOHST IN THE SHELL』や『STAND ALONE COMPLEX』のような大傑作というほではないにしろ、十分に楽しめました。

 第一作とは監督が変わっているようですね。また、第一作はミステリに主眼を置いた作りになっていましたが、今作はアクションに力を入れた作品に仕上がっています。

 とはいえ、もちろん物語は連続していますし、同じ作品として観て違和感があるということはありません。相変わらずの『攻殻機動隊』シリーズの世界を楽しめます。

 いうまでもなく『攻殻機動隊』は士郎正宗が80年代末に発表した漫画作品に始まります。それを押井守が映画化し、神山健治がテレビシリーズ化して、いまの人気に繋がっているわけです。

 それでは、漫画版、映画版、テレビシリーズ版に続く、いわば「第四の『攻殻機動隊』」となるこの『ARISE』はどう新味を出していくのか。

 全四話完結予定のこの作品は、公安九課結成前夜の物語として設定されています。天才的な義体使いの才能を持つ「少佐」こと草薙素子が、未だ自分の部隊を持っていない時代の物語として設定されているのです。

 当然、バトー、トグサ、イシカワ、ボーマ、パズ、サイトーといったおなじみの連中もまだ少佐の下に集ってはいません。それどころか――いや、ここはネタバレなので黙っておくことにしましょう。

 とにかく『攻殻機動隊』シリーズのファンなら楽しめる展開が描かれています。

 前作に対するぼくの不満点は、ヴィジュアル的、あるいはSF的な新味がないということに尽きます。時代は猛烈に変わっているのに『攻殻』は相変わらずの『攻殻』、10年前の『S.A.C.』からほとんど進歩していないように感じられたのです。

 今回もその点はそれほど変わっていないのですが、それでもやっぱり面白い。SF的なセンス・オブ・ワンダーはいささか欠けているものの、凝りに凝ったストーリーが楽しめます。

 何といっても『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁が担当するシナリオはやはりさすがのクオリティ。

 あまりに複雑にエピソードが錯綜しているため、一度見ただけではちょっと把握し切れないところもあるのですが、そのややこしいプロットを短くまとめ上げる能力はすばらしいとしか云いようがありません。

 今回は第四次大戦を経た日本の運命が関わるかなり気宇壮大なエピソードなので、小ぢんまりとまとまっている印象もなし。最も『攻殻機動隊』らしいエピソードを楽しめます。

 そして、素子の元に遂にさまざまなタレントたちが集まって来ます。少数で国家を揺るがすことすらできる能力を持つ者たち――その出自は軍人であったり、警官であったりと実にさまざまではありますが、いずれも超一流のスキルを持っていることに変わりはありません。

 そしていよいよ少数精鋭、公安九課が発足するかというところまで行くのですが、じっさいにそうなるまでにはまだいくらか飛躍があるようです。焦らしますね。最終話のラストで