以前にも書きましたが、今年はたくさんの映画を観ました。劇場で観た作品だけに限っても30本近くは観ているんじゃないかな。

 大した数じゃないと思われるかもしれませんが、あまり映画館に行く習慣がない地方在住のぼくとしては、これでも十分観たほう。

 また、数だけでなく作品のレベルも高かった。今年はあたり年だったと思っています。まあ、ぼくが知らないだけで毎年そうなのかもしれませんが――。

 でも、今年のベスト1、2あたりはぼくの映画人生でも指折りの傑作と断言できます。

 今年観た作品では、まるで面白くないハズレ作品は一本もなかったですね。いや、それも『ガッチャマン』とかを観に行っていないおかげかもしれないけれど。良い1年でした。まあ、こと映画に関してはね!

 そういうわけで、今年の劇場映画ベスト10を発表しようと思います。特徴としては、邦画がけっこう入っていますねー。

 新海誠監督の『言の葉の庭』あたりも入れたかったのですが、入る余地がなかったですね。あと、韓国映画の『王になった男』なんかも良かったんだけれど、入れられなかった。

 では、始めたいと思います。ランキング、スタート!

○10位『箱入り息子の恋』

 今年の10位は星野源主演の『箱入り息子の恋』。ゲームばかりプレイしている不器用な「箱入り息子」と、盲目の女性との不器用なラブストーリー。

 それぞれ恋に慣れていないふたりが、しだいに想いを募らせ、愛に目覚めていくプロセスはそれはもう胸がきゅんきゅんします。まさか牛丼の吉野家がここまで切ない恋の舞台となる日が来ようとは、だれか想像したひとがいるでしょうか? いや、いない(断言)。

 星野源も実にいい味を出していますが、盲目のヒロインを演じる夏帆が可愛いこと、可愛いこと。ふたりしてけっこうやることはやっているのですが、すべての動作がベリベリベリキュート。

 観たあと、だれでも恋をしてみたくなる、デートムービーとして最適の一作だったと思います。可憐な恋愛映画を観てみたいという方には文句なしにオススメ。順位は10位ですが、「好き」ランキングならもっと上に行きそうですね。すばらしい作品でした。

○9位『ボクたちの交換日記』

 さらに邦画が続きます。今年は邦画も良かったですねー。アニメを除くとものすごい大ヒット作はなかったかもしれませんが、胸に染み入るような優しい傑作はいくつもあったように思います。この『ボクたちの交換日記』もそのひとつ。

 ウッチャンナンチャンのウッチャンこと、内村光良がメガホンを取った作品で、正直、観る前はどうなんだろうなあと思っていましたが、これが実に良かった!

 芸人が芸人をテーマにした映画を取るということは、ある種、禁忌である側面もあるとは思いますが、内村監督はそのタブーに挑み、みごと成功を収めました。今年の「泣ける」映画という意味では、これがベストかも。

 物語は、ある芸人コンビの試練と、超克と、挫折を描き、そしてさらに先へと進んでいきます。いったいお話がどこに落着するのか? それは映画を観てのお楽しみ。

 もしウッチャンがまた映画を作ったら必ず観に行きます! それくらい良い作品でした。

○8位『そして父になる』

 そしてまた邦画。実はこのランキング、アニメも含めると邦画のほうが洋画より多かったりするんですね。

 邦画はもうダメだともいわれるし、じっさいはこれはどうなんだと思う映画も多いわけですが、そういうなかで少しでも良いものを作ろうと懸命な努力を怠らない人々もまた少なくない。そういう事実も忘れてはいけないと思います。

 そういうわけで8位は是枝裕和監督、福山雅治主演のコンビでカンヌで絶賛を浴びた一作。いや、これも素晴らしかった。

 「子供の取り違え」という、ある意味ではごく古いテーマではあるのですが、その切り取り方が実にうまい。

 自分の子供に愛情を注ぎきれずにいる福山演じる主人公が、その子が自分の血の繋がった子供ではないということがわかることによって、逆に「家族」について考えさせられるようになっていくという展開は良かった。

 傑作であり、名画であると思います。いまからでもぜひ観てみられることをオススメします。

○7位『かぐや姫の物語』

 スタジオジブリの宮﨑駿と並ぶ「巨匠」高畑勲による14年ぶりの新作、そして8年の歳月と50億円の巨費を費やしたという『かぐや姫の物語』が7位にランクインです。

 8位までも良い映画だったのですが、個人的にはこの7位から上はすべて最上級の評価を与えている感じ。★★★★★のエクセレントな映画って感じですねー。

 『かぐや姫の物語』は、まさに『竹取物語』そのままのプロットで進んでいくわけですが、さすがに巨匠だけあって、おとぎ話の再解釈がものすごい精度。

 かぐや姫を社会と家族によって「高貴の姫」として閉じ込められた女性と見たて、彼女の悲劇的な、しかし立派な人生を高らかに歌い上げます。

 『風立ちぬ』が「男性の映画」だとするなら、『かぐや姫』はまさに「女性の物語」。ここらへんに両巨匠のスタンスの違いが見て取れるように思います。

 50億円使ったアニメーションも美麗を究めているので、アニメファンにとっても見応え充分かと。

○6位『ゼロ・グラビティ』

 そして、6位になってようやく洋画が入って来ました。べつだん、洋画を観ていないわけではないはずなのですが、今年は邦画のほうに高い評価を与えることになったかもしれませんね。

 メキシコ人の天才演出家アルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』は、おそらく現在考えられるかぎり最もリアルに宇宙空間を再現した映像を見せてくれるマスターピースです。

 まあ、ひょっとしたらSF考証的には色々と突っ込むところがあるのかもしれませんが、最先端のコンピューターグラフィックスを駆使したと思しい「宇宙の事故」は、息を呑むほどのリアリティ。ぼくは2Dで観ましたが、3Dで観たひとたちはそれはもう大迫力だったそうな。

 そのぶん、シナリオは超シンプルにまとまっているのですが、物足りなさは感じないはず。めちゃくちゃストイックな映画体験が楽しめるはずです。これも大傑作ですね。今年の終わりに良い映画だった。

○5位