ROOM NO.1301 #11  彼女はファンタスティック! (富士見ミステリー文庫)

 先日のオフで新井輝のライトノベル『ROOM NO.1301』についての話が出ました。いやー、なつかしいですね、『ROOM NO.1301』。

 いまから数年前の作品ですが、いまなお色褪せないものがあると思います。ただ、傑作とか名作と云い切れるかというと――どうなんだろうね。

 ぼくのなかではめちゃくちゃおもしろい小説として記憶されているのですが、一般論として傑作かと問われると少し戸惑うものがあります。

 それにしても新井輝さん、このシリーズを完結させてからずっと新作を発表していないのだけれど、何をしているんだろう。<s>なんか角川から発売される『ハルヒ』のアンソロジーに顔を見せているようだけれど……。</s>アンソロジーじゃなくて純粋新作長編ですね。つつしんで訂正させていただきます。

 まあ、それはいい。『ROOM NO.1301』のどこがおもしろいのか。ひとことで云うと、妙にエロいんですよ、この小説。最近のライトノベルとしては破格のエロさ。

 それはまあ、『デビル17』とかそういう直接的に激しい性描写を行う作品もあるわけですけれど、あれがきわめて大時代なバイオレンス小説だったのに対し、『ROOM.NO1301』は現代的です。

 何しろ、直接的なセックスの描写は一切ない。せいぜい少年漫画のお色気シーンくらいのレベル。でも、描写されないところではもうめちゃくちゃにセックスに溺れている。

 このギャップが何ともふしぎな雰囲気をかもし出しているんですね。いわばエロゲーの全年齢版みたいなもので、あたかも性的なシーンがすべてカットされているかのような印象なのです。

 それでおもしろいのかというと、実におもしろい。妙な魅力がある。しかし、その魅力の正体とはいったい何なのか。ぼくはいまでも分析しきれていません。

 ひとつ云えることは、「エロは直接描写すると陳腐化する」ということですね。ゲームのほうでは「エロゲにエロシーンは必要か」という論争が過去から連綿とつづいています。

 必要かも何も、エロシーンがないエロゲなんてエロゲとは云えないだろうという気もするわけですが、でもやっぱり「エロシーンいらないんじゃね?」という気もちはわかるんですよ。

 だって、チープなんだもん! まあもちろん作品にもよるのですが、それまで純愛やら激戦やらを描いてきた感動的な作品の内容が、そこでいっきにオヤジポルノに変化する印象がある。

 物語系エロゲのエロシーンはやっぱりワンパターンだし退屈という印象があります。

 もちろん、ポルノとしてはそれでいいというかそうでなくても困るのだけれど、でも、一作の物語として見た時、そういう陳腐な場面を差し挟まれると困ってしまう。

 物語的におもしろいエロゲに対して求めるものは物語であってポルノではないんですね。

 しかし、それなら「やっぱりエロシーンはいらないんだね」ということで終わる話かというと、そうは問屋は下ろせない。