「耽美 文学」で検索して「文学マニアック」というサイトを見つけた。このようなことが書かれている。
耽美文学に慣れ親しんでいる皆さんならわかると思うのですが…耽美文学は有名作を一通り読むと、その後なかなか見つかりません。それもそのはずまず、「耽美主義」自体ニッチです。更に耽美文学と調べるとあまりにも紹介されている作品が被りすぎています。どこを見ても溢れる谷崎潤一郎とその代表作達。
そう! そうなんだよ! と、思わず全力でうなずいてしまうくらい同感。ぼくも耽美、頽廃の「反世界文学」を好んでやまないほうなのだけれど、耽美文学の作家、作品って日本文学史上にほんとうに少ないんですよねー。
まあ、ぼくが不勉強だということもあるだろうけれど、耽美文学と云われてぼくがパッと思いつくのは泉鏡花、谷崎潤一郎、澁澤龍彦、三島由紀夫、江戸川乱歩、北原白秋、山尾悠子、連城三紀彦、赤江獏、皆川博子、山白朝子といったあたり。
少ない! 少なすぎる。海外作品もあるし、いわゆるエンターテインメントの系統も加えればもっとラインナップは充実するのだが、それにしても探し出すのは大変である。
それもそのはず、耽美主義は三島由紀夫という異形の巨星があるが故にあたかも主流の印象を受けはするが、日本文学の正統からすると異端も異端、「はみだしっ子」も良いところなのだ。
泉鏡花の「外科室」、谷崎潤一郎の「刺青」、「天鵞絨の夢」、三島由紀夫の「花ざかりの森」、「憂国」、連城三紀彦の「花葬シリーズ」といった名品をひと通り読んでしまうと、もう新たな供給はほとんどない。
いまは赤江獏の傑作選を読んで飢えを凌いでいるけれど、もう少しどうにかならないのだろうかと思ってしまう。ところがどうもならないようなのですね、これが。
ただ、ぼくも何も昏い魂を凝らせたようなど耽美ばかりを望んでいるわけではない。耽美文学の周辺的な小説も好きである。
たとえば綾辻行人や小野不由美のホラー小説を読んでいても心ときめくものがあるし、津原泰水のサイバーパンクSFには胸躍りもする。
乙一のいわゆる「黒乙一」作品も素晴らしいと思うし、古川日出男の初期作品、『13』や『アラビアの夜の種族』はほんとうに陶酔して読ませてもらった。
ほんらいなら耽美とは正反対にあるはずのライトノベルではあるが、古川秀之の『ブラックロッド』三部作には耽溺しまくったものである。
ようするにぼくは何か日常を超えて「濃密」なものが好きなのだ。「軽い」作品の良さもわかってはいるが、ぼくはどうにも「濃い」文学が好きでならないようである。
小昏いヒロイック・ファンタジィ、『コナン』とか『ジレル・オブ・ジョイリー』とか『エルリック』とかクラーク・アシュトン・スミスの諸作品も好きだ。タニス・リーの『死の王』とか、『パラディスの秘録』とか、『悪魔の薔薇』とか、もう最高でしたね。
どうやらぼくは「耽美、頽廃、濃密」と三拍子そろうともうたまらない、そういう属性の人間であるらしい。
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