終わりのないラブソング〈1〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

 このあいだ埼玉に出張している友人とSkypeで話したのですが(ぼくは新潟県民)、オヤジらしく昔の思い出話になりました。あれも良かった、これも面白かったと振り返っていくなかで、ふとかれが言ったのが「いまは小数点以下の作品が少なくなったよな」ということ。

 これだけでは意味がわからないでしょうが、つまり「1」とか「2」という要求にアジャストした作品が増えて、そういう要求から微妙にずれたところが魅力になっている作品が減ったよね、ということらしい。

 これはちょっとうなずかされる言葉でした。たしかにぼくが子供の頃はたくさんあったものなー、微妙にずれている作品。たとえばライトノベルを例に取ると、いまではほぼ100%萌え絵ないしアニメ絵のイラストが採用されていますが、昔はけっこう色々なタッチのイラストが混ざり合っていたんですよ。「萌え絵」という概念そのものがなかったし。

 もちろん美少女キャラクターの人気は高かったけれど、いまほど「こういうキャラクターが受ける」という方法論が確立されていなかったんでしょうね。『自航惑星ガデュリン』シリーズ(おもしろかったんだよー)の第2巻なんて、ジジイが表紙を張っていますからね。いまじゃまずないことでしょう(あったらごめんなさい)。

 話の中身のほうも混沌としていました。『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』シリーズとか、いまのライトノベルでは考えがたいエロさだった記憶がある。いまでも憶えているんだけれど、『ルナ・ヴァルガーRPGリプレイ』には「床上手技能」というものが出てきます。持っていると情報収集がしやすくなるという(笑)。

 当時は床上手なんて言葉は知らないながら、何となくドキドキしていたものです。まだ「ライトノベル(という名前もなかったけれど)は少年読者が読むもの」というコンセンサスが成立していなかったんでしょうね。

 アクセス解析によるとこのブログを読んでいる読者は20代以下のひとのほうが多いので、たぶん知らないひとが多いと思うけれど、角川スニーカー文庫にはボーイズ・ラブ小説が混じっていたりしたんだぜ。ルビー文庫誕生前夜の話です。

 『ロードス島戦記』や『フォーチュン・クエスト』に混ざって、栗本薫の『終わりのないラブ・ソング』が売られていたりしたわけで、間違えて読んで困惑させられた健全な少年たちも少なくなかったと思われます。