すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂)

 いつも思うのだが、ネットは歪んだレンズである。ネットを通して世界を見てみると、歪んだ形に見えてしまう。ネットは現実を正確に反映していないのだ。だから、ネットの文章だけを読んで「ああ、やっぱりみんなそう思うんだ!」と納得してしまうと間違えている場合もある。

 何が言いたいかというと、ネットにおける「モテ」のイメージって、偏見が混じっているんじゃないだろうかと思うのだ。もちろん、「ネット」とひとことで言っても、じっさいには色々なひとがいるわけで、皆が皆、同じ意見を抱いているわけではないのだが、全体的に見てネットではモテに対する敵意と偏見が見られる気がする。

 ネットで語られるモテるひとは、イケメンだったり金持ちだったりし、その美貌や立場を利用して次々と女性を落としては別れているというイメージだと思う。ひとことでいえば「イケメン鬼畜野郎」というあたりになるだろうか。

 しかし、よくよく考えてごく常識的に捉えるなら、モテる人はそうでない人よりも魅力的な人柄であることが多いはずだ。女性に優しかったり、言葉遣いが丁寧だったり、公正な性格だったりする割合はモテる人のほうがモテないより人より高いものと思われる。

 もちろん、「いいひと」であるだけでモテるなどというつもりはない。女性に対して暴力的な態度を取るのにものすごくモテる奴もたしかにいるだろう。しかし、イケメンであれば、あるいは金持ちであればモテるのだ、という考え方は女性の男を見る目を軽んじている。

 彼女たちだってバカではないのだ。ちょっと顔かたちが秀でていても、女性に対して侮蔑的だったり、人間的に卑劣だったりする人物は、それ相応にしかモテないに違いない。