明治時代、渋谷区松濤エリアでお茶の栽培が始まり、周辺一帯には茶畑がありました。それは「渋谷茶」と呼ばれ、上渋谷村を中心に、原宿村、宮益町、代々木村、幡ヶ谷村と広がる、じつに約200〜300ヘクタールの広大なお茶畑でした。当時、渋谷のスクランブル交差点には「梅原園」という大きなお茶屋さんもあり、盛況な商いが行われていました。しかし、静岡茶や宇治茶の流入、土地の宅地化が進むなど環境の変化により「渋谷茶」の栽培はなくなってしまったそうです。
その後、2019年、鍋島松濤公園にかろうじて現存していた「渋谷茶」の4本の苗木が発見され、培養を開始。そして2024年、幻の銘茶「渋谷茶」の復活に向けた本格的なプロジェクトがスタートしたのです。
このプロジェクトの発足にともなって、「幻の銘茶『渋谷茶』復活プロジェクト始動!渋谷を彩るあらたな体験コンテンツ」と題し、「SOCIAL INNOVATION WEEK2023」(以下、SIW2023)にてトークセッションを実施。その模様はSIW公式YouTubeにて配信されています。また、プラティオ株式会社のオウンドメディア「grow JOURNAL」でもアーカイブ記事が公開されています。
幻の銘茶『渋谷茶』復活プロジェクト始動!渋谷を彩るあらたな体験コンテンツ|SIW2023 ARCHIVES
grow JOURNAL|幻の銘茶「渋谷茶」と渋谷の新たな未来を、たのしく育む。https://media.grow-agritainment.com/posts/media_39
一般的に、農地ではなく、都市の空きスペースを利用して行う都市型農業を指す「アーバンファーミング」。SDGsの観点やコミュニティ創出の場として、世界的にも注目されています。また、東京都内でも新宿や茅場町など近年広がり続け、今年5月には事例をまとめた書籍も刊行されました。都市部に畑が増えることでさまざまな効果がf期待されますが、今回のプロジェクトでは「渋谷茶」という昔は育てられていたものを復活させて、渋谷の名産品へと再び蘇らせようというところです。
渋谷の畑で渋谷茶の苗木を育て、茶葉を煎じるワークショップやティータイムを楽しむなど、渋谷茶を通じた“体験”が新たな渋谷土産になるという発想。また、渋谷のカフェやレストランで、渋谷茶を使ったスイーツやフードに生まれ変わったり、夜は渋谷のバーやダイニングレストランで、渋谷茶を使ったノンアルコールカクテル・カクテルを楽しめたりといった食の体験の提案もされています。
ただ渋谷茶を復活させるだけでなく、現代に合わせた体験コンテンツとして整備していこうという取り組みは、他の地域創生においても名産品掘り起こしとともにお手本にできる可能性を感じます。