今回の「日本さばける塾」では、東京湾の海苔とクロダイの食害についての話から始まりました。じつは千葉県が面する東京湾は、海苔の産地として高い評価を受けていますが、海水温の上昇によりクロダイが活発化し、養殖中の海苔を食べてしまう食害が発生しています。海の学び講師としてお話された、一般社団法人 海のごちそう推進機構 豊島翔さんは「海水温の上昇により、海苔の生育時期とクロダイの活発化する時期が被ってしまった。海は変わっていくもの。その変化に興味を持って、適応していこう。」と呼びかけました。
続いて、魚さばき講師となった株式会社銚子丸 佐々木秀信さんが、話題に上がったクロダイをデモンストレーションとしてさばきました。クロダイが登場すると子どもたちも興味津々な様子で見守ります。
その後、子どもたちは「回転すし用ポップ作り」と「アジのさばき体験」の2班に分かれました。「回転すし用ポップ作り」では、地元の海に生きる魚や、海藻のメニューをおすすめするPOP(広告)を制作。作るのは「生ノリ軍艦&クロダイの握り」と「アジの握り」の2種類です。事前に、学びの深堀りとして東京湾をテーマに「海の学びクイズ」が行われ、先ほどさばいたクロダイのほか、赤潮・青潮、大蛇行している黒潮など身近な海に関するクイズを出題。クイズに参加した子どもたちは「クロダイを食べてノリを救ってくれー」「クロダイ食べてノリノリ!」といったキャッチコピーを考案しました。
「アジのさばき体験」では、参加者1人につき1人の職人が教えてくれるという体制で実施。回転ずしレーンの内側という普段は職人しか入れない調理スペースで、アジをさばきます。初めてアジを触ったという参加者は、魚をさばけるか不安そうでしたが、無事にさばくことができて不安が払しょくされた様子でした。
ポップの作成とアジのさばきを終えた子どもたちはいよいよお寿司を握ります。握るお寿司は、自分がさばいたアジ、先生がさばいて子どもたちが切り付けを行ったクロダイ、そして学びに登場した海苔を使った生ノリ軍艦。あらかじめ作られたシャリ玉に、ネタをのせて握る工程を体験すると、バランスよく作ることに苦戦し、すし職人のすごさを感じます。子どもたちが作ったお寿司は、お手製のポップとともにレーンへ。
そして、レーンに流れていた自身のお寿司を取って、実食。お魚の命や食卓に魚を届けてくれる方々に感謝して「いただきます」をしました。アジがいちばんおいしいと答えた参加者は、「今日まで魚の種類を意識してお魚を食べていなかったと思った。今日、このお寿司がアジなんだとはじめて知った」と教えてくれました。
最後には、株式会社銚子丸さんから今日さばいたアジの骨をつかった「骨せんべい」と「すし銚子丸の寿司人気セット」がサプライズで登場。「豪華なお寿司もいいけど、自分でさばいたアジだから骨せんべいも、とてもおいしい」という参加者もいるなど、普段とはちがう形での魚との向き合い方を通じて、子どもたちの意識も大きく変化したようです。
今回のイベントを主催したのは、株式会社銚子丸、一般社団法人 海のごちそう推進機構、共催として日本財団 海と日本プロジェクトという座組。CSRというよりは、昨今企業が積極的に経営に取り入れようとしているESGといえる取り組みとなっています。ESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの英単語の頭文字を組み合わせた言葉です。環境・社会・ガバナンスに考慮した投資活動や、企業経営がESGと呼ばれています。企業に求められる社会責任であるCSRよりも、もっと企業が主体的に社会貢献のための活動は、ますます増えていくであろう取り組みです。
また、今回の会場となった千葉県千葉市の店舗にちなんだクロダイというテーマも、全国各地の店舗ではそれぞれの地域が抱える課題をテーマに、さまざまな魚をさばける塾が実施できそうです。対象を子どもにするだけでなく、インバウンド需要を見込んでの外国人向けの開催など、展開の広がりを感じさせる施策となっています。
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