みんな大好きカレーライス
カレーを作る場面が少しだけ流れたあと、歌舞伎座の舞台が表れました。
今日のお客さんは子どもたちでしょうか。なんだか学校の休み時間のような声が聞こえてきます。そしていよいよ、三味線の音色が響き渡り「カレーライスの唄」が幕を開けました。
すると、なぜか中央から登場したのは、小学生くらいの小さな女の子。うやうやしくお辞儀をすると、カレーの製法について紹介をはじめます。女の子がカレーを作っている間、動物たちもお手伝いをしながら見守っています。
そして、あっというまに「絶品カレーの できあがり~♪」。この瞬間の喜びは、誰もが共感するところですよね。でも、このMVがさらに面白くなるのは、ここから。女の子がカレーを一口食べようとすると…
カレーが誘う たのしい世界
なんと、カレーに匂いをかぎつけた龍がやってきて、その一口を食べてしまいました。女の子たちはその龍の背中に乗って、古き良き日本画の世界へと入り込みます。
尾形光琳が描いた『紅白梅図屏風』と思わしき景色の中を、『鳥獣戯画』のウサギやカエルが無邪気に歩く不思議な世界。女の子は彼らに次々とカレーライスを振る舞っていきます。続いて、大雨を降らす『風神雷神』にもカレーライスを振る舞うと、怖い顔が満面の笑みに変わり、赤い太陽が顔を出しました。
そんな空想の世界から、現実の世界へと戻ってきた女の子。また新たなアイデアを思いつくと、玉ねぎを切りはじめます。涙がポロポロ出てきて水中メガネをかけると、今度は海の中へ…。「忘れちゃ~いけな~い シーフード♪」
その後も、野菜の様々な切り方を紹介したり、お米を炊くのを忘れて泣いてしまったりと、楽しい歌詞が続きます。特に、お米を炊き忘れたあと、これまでの登場人物たちが協力して田植えをしたり、稲を刈って収穫したりするシーンは、私たちの想像力を大いに刺激してくれます。
そして最後は、この舞台を観覧してくれた人たちへもカレーライスが振る舞われました。みんなとびっきりの笑顔で喜んでいるのを見ると、こちらも嬉しくなりますね。
このMVを公開した杵屋佐喜さんは「唄、三味線、囃子による長唄の魅力をぎゅっと詰め込み、思わずカレーが食べたくなるような、そんな思いを込めて作りました。舞台に立つ事ができなくなった今、何より演奏でお客さまに喜んでいただける事こそ、私たち音楽家の生きる価値です。私たちの愛する長唄をもっと面白く!分かりやすく!親しみやすく!これからも、邦楽の魅力をどんどん発信していきたいと思っておりますので、是非ご覧下さい」と、コメントしています。
新型コロナウイルスの影響により、様々な活動が制限される企業や人が多い中、MVという新たなカタチで発信をはじめたこの事例。親しみやすいテーマやアニメーションによって“長唄”の魅力が広く伝わり、新たなファン層が生まれていく予感がします。
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