ビュロ菊だより

コロナ感染記

2022/08/23 10:00 投稿

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 初めまして。僕は菊地成孔(きくち なるよし)と申します。音楽と著述を生業にしていまして、SNSというものは基本、やらないし、やったとしても、自分のライブや新刊、イベントの宣伝にしか使っておりません(それも全てマネージャーがやっています)。 


 なのですけれども、今月22日に、コロナ陽性反応が出まして、結論から先に申し上げると、少なくとも、僕個人に関しては「今度のコロナは感染力強いけど、重症化しない=行動制限もしませんよ」という図式は、真っ赤な嘘で、これは大げさではなく「一歩間違えたら死んでたかも」という経験をしました。 


 そこで、「SNSというのは、本来、こういうことを発信するためにあるのでは?」と思い、こうして発信させていただいている次第です。やっと今、フラフラではありますが、長文をキーパンチできる肉体的余裕が出てきた。という側面もあります。症状が出始めて10日目、抗原検査で陽性反応が出て9日目です。 


 因みに<少なくとも、僕にとっては>の「僕」、つまり、医療上のIDは、以下の通りです。「日本人男性」「59歳」「ワクチン接種3回(全てファイザー)」「血液型AB型」「違う(今回はBA2だと思われるので)タイプのコロナ陽性経験なし」「既往症なし」「喫煙習慣はあったものの、禁煙1ヶ月目だった」といった感じで、手洗いうがい、アルコール消毒、マスク着用に関しては、日本人の一般性を出るものではありません。

 

 <初日> 


 去る、7月20日の深夜、僕は、貸しスタジオで練習中に、喉の痛みを感じました。それは過去、風邪をひいたとき、タバコを吸いすぎた時、等々に感じていたレベルを、ほんの少し上回っていたので、「というか「同じ喉の痛みでも、全く新しい感覚」でしたので、ん?これ?、、、、ひょっとして、、、、まあまあまあ、今日はゆっくり寝て様子を見よう」と早寝をしました。

 

 <2日目> 


 7月21日、目覚めると、明らかに「これはヤバイぞ」という喉の痛みに症状が進んでいました。痛みでも発熱でもそうですが、ピークに来てから初めて人は気がつくものではありません。「うわー、今から熱でそう」とか「うわー、まだ完全にキてないけど、時間の問題だ」とか言った経験は、どなたにもあるでしょう。

 

 この状態を、医師が理解 / 共有してくれるかどうかは、まるっきり博打です。その意思が名医だとかヤブだとか、いわゆるかかりつけで、自分と気があうからとか、そう言ったファクターは全て関わってきます。特に、現状のような、デリケートな状況では、なおさらと言えるでしょう。

 

 僕の最初の医師は近所の内科医ですが、行ったのは3年前です。それこそ、最初にPCR検査の手続きをしてくれた医者だったので(その時は陰性でしたし、たった3年前のPCRは、コンテナ車3台に分け、それぞれ宇宙開発クルーみたいな重装備の人がヨッさヨッさ入ってきてたいそう面白かったですが)。

 

 まず、「昨日から喉が痛いんです」という段階で(もう、ちょっと、やめてくれ~)というオーラが出ていました。彼はやや急ぎ目に僕の喉を見ると「いや、それほど腫れてないよ。ロキソニンと胃の薬7日分出すから、様子見てください」と、(本当に)僕と目も合わせずに言いました。(面倒はごめんだ。とにかく早く帰ってくれ)という、アレです。

 

 「あのう、、、、先生、、、、すみません、、、、事を荒立てたいんじゃないんですが、、、、その、、、時期が時期じゃないすか、、、、もし僕がそのう、コロナかどうか」と、ここまで言った段階で、医師は半分ぐらい立ち上がって、「いやあもう、そうなったら話全然違うんで、うちは発熱外来やってないし、 PCRには予約が要るから、入口もここからじゃなくて外回ってきてもらうことになるし」と、猛烈な勢いでまくし立ててきたので、(あ、ダメだこの先生ノイローゼだ)と思い、処方薬(いわゆる「風邪キット(消炎解熱剤、胃薬、去痰薬、咳止め)」です)。を大人しく貰い、

 

 (いやあ、ヤバイことになってきた。テレビも新聞も何も信じられないな。ストリートも完全にパンクしてるし。経験しろということか)と思いつつ、部屋に戻って食事をし、一回分を飲み、しばらく寝て、また食事をし、二回分を飲みました。

 

 予想通り、「風邪キット」は、全く効きませんでした。昭和の縁日で売っていたようなインチキ煎じ薬みたいな感じで、とにかく、症状は猛スピードで進んでいきました。

 

 6度7分ぐらいだった体温はあっという間に9度台に跳ね上がり、頭痛と喉痛が、今まで経験したことがないぐらいのレベルになりました。

 

 胃潰瘍が有名ですけど「潰瘍」というものは、あれはかなり痛いものです。僕は胃潰瘍の経験はありませんが、「角膜潰瘍」というちょっと変わった病気と(角膜に、針の先ぐらいの白い潰瘍ができるのです)顔面に負った傷口を治療せずに放置した結果、潰瘍状になったことがあったんですが、今まで生きてきて「何が一番痛かったか?」と言われれば、この2つの潰瘍です。特に角膜潰瘍は、まばたきするたびに、まぶたが角膜の潰瘍を擦るので、後頭部まで響き、半日で吐き気が止まらなくなったものです。

 

 そして今回は「これ、喉のどっかに潰瘍できたよきっと」というほどの痛みでした。

 

 なにせ水が飲めないのです。水を飲もうとすると、3CC(お猪口にちょいと一口ぐらい)程度でも、喉に差し掛かると、6箇所ぐらいに激痛が走り、大袈裟でなく、喉の奥を短刀かなんかで切り刻まれた感じです。しかも、喉仏のあたりには潰瘍としか思えないのが座り込んでいる。

 

 もう、声も出せず、静かに静かに、一口ずつ、一口ずつ飲んでゆくのですが、飲むたびに涙がダラダラ流れて、思わず「ううううううううう。ううううううううううう」と唸ってしまい、時折、水が潰瘍付近を通ると、ものすごい大声で「ううううううううううう!!」と泣いてうずくまったりするので、なんかもう、ものすごく傷ついている人がやけ酒を飲んでいるようです。

 

 これと連動してひどかったのが(あまり綺麗な話ではないので書くのに気が引けますが)痰です。この10日で一生分出したと思います。

 

 痰とは普通、1CCとかそのぐらいのものですから、かー!ぺつ!とばかりにすぐ出るものですが、物凄く濃くて粘性の強い、アボカド色の個体(液体とは言えないですね、床に落ちても卵黄みたいに自立するので)が、ショットグラスに軽く2杯分ぐらいで喉に張り付いているので、咳の反射を起こしたが最後、喉全体は拷問のように痛いわ、そこに大量の固形痰が移動するわ、きちんと外に吐き出せないので、1分ぐらいもがき苦しんで、本当に自分の痰で窒息して失神するかなと思いました。

 

 ご老人が正月に餅を喉に詰められて窒息死する例がいまだに根絶しないこの国ですが、還暦前の人間として、正月の餅は、まだ解釈によってはめでたい感じもありますが、コロナの痰で窒息するのは悲しすぎます。

 

 もう、音的には「ドッスン」という感じで、突然、床の上に痰の塊が落ちました。あれが青蛙とかになって、ぴょんと飛んでも驚きません。もう、一個の生命体ぐらいあるわけです。

 

 これがこの後、1日に10発以上出るわけです。もちろん、「出したらスッキリ」どころではなく、出る過程で喉に負担がかかりまくっているので、出た後の、ヤケ火鉢でも喉に刺したのかという灼熱の痛みが普段で続くわけです。

 

 僕は幸いにして、子供の頃から頭痛に苦しんだことがありませんでした。ですので、尚更だったのかもしれません。よく「頭が割れそう」と言いますが、本当に、どこか割れているのではないだろうかと、頭骨を丁寧にチェックするほど頭痛がしました。目の奥から耳の穴の中、首から口に中全体までが激痛で、痛がるよりも、驚く方に忙しいほどで、そのうちに、全ての痛みが吐き気を誘発していきます。頭痛で起きるので、1時間以上寝れません。寝ても覚めても強烈な頭痛が続いていたのでしょう。

 

 熱も上がっていきました。部屋には一応冷房はかけていたものの、家のエアコンがボロいし、僕は室内の空気清浄に神経質、というタイプの真逆なので、こういうことにとても粗雑で、エアコンも見るだに「あれカビとかダニの死体だのの温床だろうな」と思っていました。


 そのことも含み、冷房を入れると、もうそれだけで喉が悲鳴をあげるので、使いっぱなしにできません。しかし、ご存知の猛暑です。 


 でも、さっき書いた通り、水が飲めないので(ダメだこれでは屋内熱中症になる。全部の症状抱えたまま)、と、もうもう気が狂いそうでした。僕は冷たい水が好きで、真冬でも1日3リットルぐらい飲みます。どんな病気の時も、上質の鉱水をたっぷり飲んでいれば治る。と思っていたんですが、その水が飲めないわけです。

 

 (これがコロナじゃなくて別の病気だったらかなり変わった人間だぞ俺は)と思いながら、焼け石に水の風邪キットを飲み、唾液をゆっくりと出して、それで飲みくだし、寝ようとしたのですが、到底寝られません。睡眠導入剤を通常量の倍飲んで、やっとうたた寝ができました。

 

 それでも、この「風邪キット」が僕の、元手になるわけですが。 


 <3日目>


 7月22日、僕はセカンドオピニオン、というか、普通にコロナの検査を受けるべく、通い慣れている耳鼻科に這々の体で歩いて行きました。僕は花粉症がひどく、ここには花粉症の薬をもらうために何年も通っていて、大先生にも若先生にも看護婦さんにも名前を覚えていただいているような仲だったのです。

 

 なんで最初から行かなかったと言えば、やっぱコロナ疑いは内科でしょ。と思ったからですが、僕がそもそも無知で、発熱外来(要するにコロナ外来ですよね)は耳鼻科は併設できないと思い込んでいたんですね。まあまあ、もうちょっと理由はあるんですが、無駄に長くなるので端折ります。

 

 いつも花粉症の季節に、鼻をズーズーさせながら「すびばせん、花粉症のお薬を、、、」といって現れていただけの僕が、顔をゆでダコのように真っ赤っかにしたまま憔悴仕切って、別人みたいな声質と口調で「あの、、、一昨日から風邪っぽかったんですが、、、、、昨日、、、、、、、内科に行ったらなんでもないと言われ、、、、、、、でも、症状が急速にとても強く出まして」、と、かなり時間をかけて言い終わるが否や、看護婦さんが「菊地さん、発熱外来あるんで、こっちに、こっちに来てください!そこ通らないで!」と言って、導線を指差してくださり、僕は、一般外来と別のルートで、個室みたいなところで待たされました。テレビでは「コロナの患者数がえらいことになってる」というニュースをやっていました。

 

 僕がずっと考えていたのは

 

 1)国、都、保健所、特設施設は一切役に立たない(ディスリではなく、おそらく機能していない)。

 

 2)知らない医者も役に立たない(市井の町医者内にもコロナノイローゼみたいな状況が定着している)

 

 3)信頼関係のある近所のかかりつけだけが役に立つ(結局、「使えるやつが使える」という原理)


 の3点です。真面目で、1の穴に詰まっちゃって、それこそ死んでしまう方も多いと思います。日本人は、いざという時でさえ、<国がちゃんとやってくれるだろう>という心中の信用を手放せません。なので年がら年中、国にキレざるを得ないのでしょうが(しかも、腰が引けたまま)。治安の悪い国でも、文化的な国家でも、こんなに国体を(口ではどんなふうに言おうと)内心で愛し、信じ、頼りにして、甘えている国はありません。

 

 名前は出せませんが、僕は、この耳鼻科は完全に信用しています。僕には花粉症の薬を出すだけですが、たまに風邪を引いた時の投薬の的確さ、他の患者さんへの適切な診断と治療、大先生、若先生、婦長さん、看護婦さん、の見事なアンサンブル。等々、いわゆる1年位通ってわかる「間違いない」というやつです。


僕は、暗い別棟の中で30分ほど待たされ、症状はもうちょっとした拷問級でしたが、心は安心していました。これほど、心の安心が有難かったことはありません。僕は暗闇の中で、眠りこけそうでした。

 

 一般外来の方の診察を終えたのでしょう。大先生から「はい、菊地さん来て」と呼ぶ声が聞こえ、診察台に座ると、床一面、診察台の上一面に、見たことがないブルーのシートが敷いてあり、先生も、いつもの白衣の上にさらにブルーのシートで出来た、オーヴァートップの診察衣みたいなものを着ていました。

 

 「はい、喉見ますよ。。。。。うあ、、、うああ、、、、これは、、、、」

 

 と言いながら、先生はどんどんデジタルカメラで写真を撮ってゆきます。

 

 「これさ、痰で患部が見えなくなっちゃってるんだけど、出せるこれ?吸引してもいいけど、吸引機触ったら、飛び上がるほど痛いよこれ」

 

 僕が、大きく息を吸って、ゴフゴフゴフゴフ、グスッ、グスッ、ゴフゴフゴフゴフ、ガラララ、ガラララララララララ、ガーッシュ!ガーッシュ!ガーッシュ!と物凄い音を立てながら七転八倒し、最後に「ドスン」といって痰を出すと、先生は助手の方に「それ凍結、してから包装」とすばやく冷静に言いました。そしてまたルーペを見ながら

 

 「いやあ、こんなんなっちゃってんだ。菊地さんってタバコ吸ったっけ?」「いや、、、、吸ってましたけど、、、、この1月、ちょうど、やめてたんです」「ああ。これ、ステロイドいる、、、かも、、、なー」

 

 ステロイドは副腎皮質ホルモンですが、いわゆる「男性ホルモン」です。それがどれほど強烈で扱いがデリケートなものか、僕はよく知っています。30年以上前、僕は「壊死性リンパ結節炎」という奇病で臨死まで行ったことがあったんですが、この病気を治したのは、ステロイドを2ヶ月かけて、徐々に投薬を増やし、ピークを突いたら、徐々に徐々に減らし、という山形をかけて入脱薬を成功させたからでした。

 

 (うう、ステロイドか。。。。)と、彼方の記憶が蘇りました。

 

 「まあ、ほぼ間違いないけど、抗原検査しよう菊地さん(看護婦さんに)キット」と先生はおっしゃって、綿棒を鼻の奥に挿しました。普段(インフルエンザのチェックなんかの時)はなんともない、居眠り半分のチェックなんですが、この時は椅子から飛び上がりそうになりました。

 

 「あのねえ菊地さんねえ、ここ通って、その奥で待ってて。冷房効かないんだけど。すみません」

 

 10分ほど経ち、「菊地さーん」と呼ばれた僕は、もうフラフラで、目の焦点が合ってなかったと思います。

 

 「菊地さん、これ、これ見て、これ、この線がこっちより左だと陽性ね。つまり、コロナ陽性です。ウイルスの種類が、、、とかまで細かく知りたい?」「いや、、、なんでもいいです、、、」「BAとかいうなんか新しいのがまた出てきてるみたいなんだけど、僕らもまるっきり追いついてないんだ。そしたらね、何は無くとも、これから菊地さんはご自宅で待機、誰にも会っちゃダメよ。わかってますよね?んで、薬なんだけど、今日一日、辛いと思うんだけど、今この、内科で出されてるキットね、これ、効かないんでしょ?」「はい、、、全然、、、、、ロキソニン飲むと発熱します」「ははははは。面白いね相変わらず。んでね、申し訳ないんだけど、今いきなり、薬を追加でドーンって出すより、菊地さんの体調変化もあるから、1日だけ頑張って。もしどうしてもダメだったら早朝9時から電話取ってるから」 


 僕はなんとか、貧弱な元手に陽の光が当たったような気分で家に帰りましたが、まだ午後の3時でした。僕には仕事柄マネージャーがいるので、彼に、ヴィーダーインゼリーとか、なんとか流し込めそうな流動食をいくつか頼み、ベッドで横になりました。そしてこの日に起こったことは、昨日起こったことを何倍か酷くしたようなことで、僕は、どの姿勢で寝れば寝れるか、とうとう一つも答えが見つからなくなって、結果として、ベッドの上であぐらをかいて、上半身を前に倒してなんとか眠りました(それは、痰の発作、咳の発作、頭痛、等々で1時間おきに中断されるのですが)。  


 <4日目> 


 7月23日。この日まで僕は、実は医師と話す以外は声も出せない状態でした(マネージャーにもメールで買い出しの指示を出していましたし、玄関先でも会いませんでした)。声を出すと、もうその勢いで痰の発作が起きるからです。発熱も、9度が6時間ぐらい続く、なんていうのはまだ、祭りみたいで楽しい方で、8度台が4日間続くと、朦朧としてきます。

 

 僕は、あらゆるセクションが、より酷くなっているのを確認してから、まず耳鼻科に電話しました。


 「あの、、、先日、、、、そしたら、、、、コロナ陽性の、、」「ああ菊地さんですね。その後いかがですか?」「これこれこの通りで(一通り説明)」「わかりました。先生に伺ってみます」「はい、、、、」「先生に代わります」「いやあなんか、菊地さん流行の先端言ってるねえ笑。結局うちも発熱外来やらないと間に合わなくなった。10日経ったら、そっちに来てもらうけど、それでね、追加の投薬ですけど、抗生剤、これ、僕個人はあんまりポリシーとして出したくないんだけど、症状が極端なんで、当たると思うんだよね。5日分出します。。。。。。あとね、ステロイド、これは強い薬だけど、喉がもう菊地さん裂けちゃってるし、38度台がもう何日か続いちゃってるでしょう?頓服っていうのも違うな、まずは大火事の基本の鎮火用に、2日分だけ出しますね。これでベーシックな、一番辛いところ、一旦は治ると思う。でね、これ薬事法で、今もらってる風邪キット出した調剤薬局あるでしょ?そこにうちがファクスで薬の内容を送って、そこで調剤してもらって、郵送してもらうっていう、ちょっとめんどくさいことしないといけないんだよ。色々同時にこっちの体制や国の体制も動いてるんで」「あー、、、、ちょっと、、、もう、、、、すでにわかりません」「(看護婦さんに)あー君、丁寧にご説明して。じゃあ菊地さんお大事にね。ゆっくり寝て」「はい、、、、、」「お電話代わりました。あのですね、今、菊地さんに追加投薬するには」

 

 僕はなんとかメモを取ってそれに従い、返す刀で、かかりつけの精神科医に電話しました。

 

 先ほどチラと書きましたが、どんな病気も、水飲んで寝てれば治ると僕は思っています。今回地獄だったのは、水が飲めず、全く眠れないかったことです。しかもこの猛暑で。です。

 

 なので、普段はストレスやクリエイティヴの興奮で眠れない夜用に出してもらっている睡眠導入剤を(1日1回1錠)を、3~4倍飲んで(一気にではないですよ。毎食後に半分に割ったのを1つ飲んで、次の食事までなんとか寝るのです)いたら、あっという間になくなってしまいました。

 

 この精神科医は、僕が昔、不安神経症を精神分析療法で治してくれた「間違いない」分析医ですが、分析療法が終わった後も、僕は精神科外来として、睡眠導入剤だけをもらいに来ている仲で、下手したら、友人と呼べる人物がほとんどいない僕の、一番長くて深い友人かもしれません。

 

 「あのう、、、先生、、、、」「え?だれ?」「菊地です、、、」「なんか、声が全然別人になっちゃってるんですけど。ほんとあなた菊地さん?」「コロナです」「うわあ、やっちゃったのね」「やっちゃいました」「んで、どう言ったご用件で」「実は(説明)」「わかりました。一医師としてはあんまりしたくないんだけどね、眠れないほど痛いのね。それじゃあ治らないし、そういう時、酒とか飲まれるのが一番良くないし」「いや、飲む気にもなんないです」「そしたらね、ええと、ええと、こうするしかないよなあ、ええとね、処方はするけど、保険外でしか売れないんですよ」「なんでもいいです」「高くなりますよ」「10倍ぐらいですか?」「いやいや笑、3倍ぐらい」「100倍でも出します」「笑、わかった。じゃあね、いつもうちの帰りに調剤薬局決めてます?」「決めてます」「そこにファクスするから」

 

 またファクスか、すげえな今更ファクスの存在意義、あと、薬がタダになったり(耳鼻科の処方分は無料だった。コロナ適応になったからだろう)、保険外で3倍になったり。後で考えよう。今考えたって無駄だ。脳が沸きかけてるんだ。

 

 薬はどちらもすぐに届きました。そしてそれから処方量の4日間で、僕は寛解とまでは言わないが、かなり楽になるのですが、リアルストーリーというのは、リアルストーリーとしか言いようがありません。それが切れるとまた苦難がやってくるわけです。医療や治療に関するリアルストーリーというのは、恐るべきトライ&エラーの繰り返し、に醍醐味があるとも言えます。 


 何れにせよ、これを書いているたった今でさえ「必ず連絡があるので、それに従ってください」という押し出しの強いポスターにある、「保健所からの連絡」は、いまだに全くありませんし、「こちらに連絡すれば病状や病床の指導をします」と書いてある臨時の発熱外来やコロナ陽性者のタイプ施設の電話は(全くあてにしてなかったので、1日に1回かけただけですが、1000回かけても結果に大差はなかったでしょう)一度も通じませんでした。

 

 この文章は、あくまでレポートであって告発でもなんでもありません。実際、若い人々は発症しても軽症かもしれない。これ以上行動制限、営業制限、ましてや緊事宣なんか出したら経済は下から破綻するでしょう(上から破綻するより些か良いとは言え)。

 

 とはいえ、こうして、僕は、スマホ頼りのガバメントアナウンス頼りのインターネット頼りではなく、ストリートの繋がりとストリートの知性だけで動いたので、こうして今、キーパンチしている(実はまだ後遺症がひどいのですが=頭痛も残っていますし、なにせ匂いは失われたままです)わけですが、誰もが僕のように思考、行動するとはとても思えません。

 

 どこに自分のチップを置いて、どう行動するか?という人間に必要な決断と反射神経がないと、ガバメントに文句言いながら死んでしまう人だっています。僕と同じ症状を、僕より15~20歳上で、別のシュチュエーションでキープして、部屋で放置されたら、独居の方など、亡くなっていた方もいらっしゃると思います(僕は独居ですが)。

 

 でも僕は構いません。結局逃げ果せたし。しっかしキツかった。チラと書きましたが、僕は30年前に熱病の奇病(戦後、成人男性で罹患したのは僕だけだそうです)で体重が30キロ台まで落ち、臨死したんですが、あの時はまだ体が若く、有名大学病院は体制がしっかりしており、僕は「死ぬわけねえ笑」と、むしろ楽しんでいました。しかし年はとりたくないものです。今回は、病状、日数だけなら、こちらのが遥かに楽だったのに、総合的な自己意識としては「やばい。これは笑ってらんないな。やばい。なんだ、これ、遺言書とか書くのか、、、」と正直、覚悟を決めた時間もありました。

 

 要するに、僕は、体外設置の人工呼吸器の必要性とか、意識障害とか、そういうことはありませんでした。また、ガバメントが「中等症」とする、肺炎の併発もありませんでした。だからと言って「じゃあ重症じゃないね〜、はい、肺炎やってないから中等症でもない!はいあなた軽症」は、いくらなんでもあんまりだと思います。

 

 実際、ガバメントの引いたラインにそうならば、ですが、「重症化」している方は確かに減っているかもしれないです(それもどこまで信じられるかは別ですが)、しかし「重症化しない=軽症で済む=大丈夫=行動制限無し」という連動的措置と報道に対し、「もう人流止めないための(末端の市場経済を壊さないための)イメージ操作?ですか?いやいやいやいや。そんなもん、全くしておりませんですよ」とは言える関係者はいないと思います。

 

 僕とほぼ同じの医療上IDの、特に独居の方で、僕のようにマネージャーみたいな存在もおらず、かかりつけの医師もなく、ただひたすら、公的機関からの指導 / 連絡を何日も何日も待つだけ(因みに、僕のところには、未だに1本の電話も入っていません)。だった場合、僕はこの人が自室内孤独死しても全く不思議ではありません。最後に書きますが、現在、ネットの普及によって、こうした思考回路と行動規範になってしまっている方々も多く、現代社会というのは、両方から挟殺するように、人が死にやすい状態を形成し、育んでいると思います。

 

 僕は、自らのツイートやブログが影響力を持って社会を変え、状況が確実に良くなる。などという考えは持っていません。単に、自分が負った強烈な経験をルポしただけです。「ああ、この人はこの人なりに大変だったんだな」で済まされるでしょう。ただ、「軽症だって、一歩間違えれば死ぬほどキツイ」という認知だけでも存在すべきだし、そもそものラインとして「軽症(なんというか、重めの風邪ぐらいのやつ)」でくくれる範囲が現在、明らかに広過ぎると思います。

 

 そもそもの感染症のディグリーズに則って、A,A1,A2,B,B1,B2, C,C1、、、といった区分でも、主に災害時に使用される、レヴェル1、レヴェル2、レヴェル3、といった区分でもなんでも良いので、ラインを引きなおすべきだとは思います。でないと、特に無軌道な若い方々が、「まあ、年寄りに移しても死なねえし」みたいなコンセンサスを持ってしまい、「若者の保菌者が年寄りに感染させる」という状況に対し、誰が責任を取るのでしょうか?というか、第何波の時か忘れてしまいましたが、このこと自体が、社会問題視されていたのではないでしょうか? 


 というか、僕らは皆複雑なファクターを読みながらそれを乗りこなしてゆく情報のサーファーであって、ガバメントの大本営発表も、地上波の情報操作も、ネットのまことしやかでありながら、かなり怪しい情報も、ネットに埋まっている、しっかりと有効な情報も、すべて等価として扱いながら、最終的には、動物としての自分の、野生の勘と経験を尊重しないといけません。

 

 インターネットは、このサーファーとしての力を著しく人々から奪い、情報に流されて右往左往する「一番支配しやすい国民」を量産する、国家統治用の装置ですし、同時に、妄想症を無限に許容して活字に変換、強度を持たせてしまう恐ろしい装置です。平和利用、というより、自分を強く持つことで、クールに利用することが重要だと思います。今回僕は、ガラケー以外、アプリも何も使っていません。そもそもスマホを持っていないからですが。それでもこうして充分凌げました。

 

 僕と同世代の方への感染が、強毒化して広まらないこと、行動制限が課せられない人々が、最初の緊急事態宣言と同レベルで、「お年寄りや病人、お子さんなどに移さないように」行動してくださることを祈ります(続く)



 自らの予想を大きく超えて、沢山の反応を頂戴しましたが、医師(外科医)である知人から、「お前のルポにちょっとした手落ちがあるので、案の定それがミスリードとなったまま斜め読みされ、そこを指摘されている。まあそれがSNSだが」

 

 という指摘があり、「むむむ?」と思い、確認してみたら「ここかな?」と思われる位置を同定できましたので、まずは何よりそのことと、これはケアレスミスですが、重要な点を落としているので、それの追記。あとは前レポの続きを書かせていただきました。

 

 個人的に当該箇所は、「ちゃんと読めばわかるのではないだろうかな」とは思い込んでしまい、結果としてミスリードを生んでしまいました。エッセイ等とは違い、ルポライトである性質上、これはよろしくありません。

 

 同様のご指摘を正確に数えることは不可能ですが(いま、「正確に数えられること」が多すぎであると僕は思いますが)、その総体を僕が要約するよりも、いま、僕がランダムで選んだ以下の2ツイートを代表例と仮説し、それに対してご説明する方が納得いただける力が強いと思います。

 

 もちろんこれは反論や闘争的な内容ではありません。両氏のご指摘は、僕の説明不足に起因するものであり、斜め読み速読によって生じる誤読性も織り込んだ上で、としますが、至極ごもっともです。

 

 「ルポライト脳」になりきれていないまま、こうした誤解を生んでしまったことをまずは謝罪します。当然、両氏、そして両氏と同様のお考えを記されている多数の皆様に対する陰性なものは一切ありません。ただ、以下の説明でご納得いただければと思います。

 

*批判ツイートの典型例(ランダムチョイス)

コチラコチラ

 

 段落に分けます。

 

 1)僕が近隣の、3年ぶりで行く内科に、事前の電話相談もなくいきなり行った理由は、

 

 2)「まだその段階で発熱していなかった(喉もガンガンに痛かったわけではなかった)」からです。

 

 (そうはっきり書いたつもりだったのですが。読み直したら、体温等々に関して、曖昧で、エッセイ脳的でした)。 

 

 3)僕がいかなコロナ未経験のコロナ軽視者だとしても、37度越えしていたら、内科医には事前に必ず電話します。かつ、その内科医は、そもそも発熱外来をやっていないことは確認しておりますので、違う(発熱外来をやっている)内科医にします。これは至極当然のことです(ご指摘の多くは「なぜそうしなかったのか?」ということだと思われます)。 

 

 4)文中にある通り、発熱は、その段階では「予感」にすぎず、ついでに言えば「激しい咽喉痛」でさえも、その段階では予感に過ぎず、体温的には36度6分でした。

 

 段落分けはここまでとします。 

 

 そんな段階で「ひょっとして僕コロナかも知れないんで、発熱外来扱いでお願いしたいんですが」とか「あのう、こういう状態なんですけど、PCR検査お願いできますか」という患者がいたとしたら、おそらくほとんどの医師から「めんどくさい、予期不安と心気症(事実よりも、自分が重病だと思い込む神経症の症状)の患者」だと思われたでしょう。患者と医師による<コロナノイローゼ症状。の押し付け合いの構図とも言えますね。

 

 それとも、僕が知らない間に、この国の医療常識は極端に偏り、「どんなちょっとした症状(軽くめまいがする。とかでも当てはまりそうですよね)が生じても、すべてコロナを疑うべし、すべての不安はコロナに通じる、当然、すべての内科医には、事前に電話しないといけないのだあ。どんな小さいことでも、コロナかもしんないんだから、絶対電話しろよお前」といった、ファシズムみたいなことになっているのでしょうか?

 

 実際、僕が行った内科医は小児科も兼ねているので、ただ咳だけして、熱のない学童も、熱中症でしょうか、ゲロ吐いてぐったりしてるだけの学童もおり、彼らが「コロナを予期し、まず電話で症状を話してから来院している」とは全く思えませんでした(窓口での会話も聞こえてきますし。家から無電話で直行、学校から無電話で直行の学童がいっぱいいました)。  

 

 さすがに当該Tweeter 2氏でさえ、僕がこう動くのが正しかったんじゃない?、とおっしゃらないと思いますが、<ある夜僕は、まず「そろそろ熱が出そう。この後、何十倍も喉が痛くなりそう。俺は絶対コロナ」という予感を抱き、しかし実際にはそれには程遠い、なので、実際そうなるまで部屋で待ち、実際そうなったんで(やっと熱も出たので)、しかるべき発熱外来に電話する>

 

 これこそ、キチガイとは言いませんが、倒錯的ではあるし、このケースが実在した場合、ですが、コロナ禍がもたらしたシンプルなノイローゼの一つだと思います。患者(コロナではなく、ノイローゼの)は「今の日本の内科医がコロナしか扱わない」と信じるのでしょう。充分ありうると思います。

 

 <喉が変なふうに痛く、これからなーんか熱が出そうなんだけど>という段階の患者にできることは、「まずは最寄りの内科に行って(この程度のことを事前に電話で説明、要らないと判断します)所見を聞く」ことだと僕は判断し、そうしました。

 

 ただ単に、面白いからという理由だけで例えを重ねますが、僕は心斎橋のクラブあたりで

 

 「うおっとこれ、うお~来たわ~。マイテルモピコーん!!37度8分頂きました~。のっど痛~。うっわ腫れ散らかしてますやん。。。。。。これ、コロナちゃうん?」

 

 と思って、つまり熱も咽頭痛も充分始まっている状態で、知らない内科医に特攻を仕掛け

 

 「予約?ええやんけ自分、医者なんやから、オレみたいのが毎日来よるやろ。どこで開業してるんやっちゅう話やねん。心斎橋やーん。あんじょう頼んまっさー。ドッカーン(診察室のドアを蹴破る音)、せんせ~、せんせ~。熱止まらへんし、喉、痛とうて痛とうてたまらんわ。コロナかどうかチェックしてや~。ああ?ああ?!、、、、ああ、オレ初診や。センセ喉見てや~。ほれア~ン」

 

 とかいった、こうして書いていてもうっとりするような豪快な蛮行に出たわけではありません(擬似関西弁の使用には蛮行カリカチュア以外の意味はありません。フジロックの会場でも青山の星付きレストランの中でも、どこでも良いです。どこでも起こり得りますしね)。 

 

 また<ノイローゼ扱い>に関しても、これは知らない方からファンメールアドレス頂戴したのですが、「ノイローゼの定義からちゃんと書かないとこの国の憲法では人格否定になり、逮捕されますよ」という、若干、ん?ノイローゼ気味かな?という批判を届きました。

 

 「ノイローゼだ」という描写はディベートや推理小説ではなく、一対一の人間が密室で見せる行動上のオーラを記述しようとしたので、すべてを過不足なく、裁判の審議録のように文章化はできませんし、逆に、あえて文学的に、一内科医を、コロナによる医療の逼迫による狂気に陥った人物として習得に描写することも、しようと思えばできます(まあ、それが液状化しているのがSNSなのでしょうけれども)。

 

 僕はレポートの性質上、どちらに徹することもできずに、「ノイローゼだ」とやや性急で刺激的な判断をしてしまいましたが、あの内科医が<常軌を逸していた>ことだけは間違いありませんでした。

 

 まあ、<今や我が国全体が、常軌を逸しているのだ。何を今更内科医だけを>と言われれば、それっきりな世の中ではありますけれども。

 

 理由は、言ってしまえば「様子がどう考えてもおかしかった」というのが一番簡単ですが、コミュニュケーション上の言動と挙動の様子がおかしいという一点を以ってしてノイローゼ扱いは確かにあまりのことだと思いますで、若干ですがサポートします。 

 

 通常、医師は、何科であろうと、クランケの顔を見ると思います。というか、僕は「みられた経験」しかありません。しかし、この医師は、「どうぞ」と言って、着席した僕に「どうしました」と言って(ルポにある通り、医師は飛び込みの小児患者も多数見ていますし、僕も飛び込みでした)、その後も、僕の喉を視診した時(それも、僕が経験したことがないほど、素早く、「ねえ?見てる本当にあんた?」というぐらいの速さでした)と、結局僕が最後に立ち去る際まで、目の前のモニターをググッと凝視したままでした(僕には過去の診断履歴も、患部写真もないので、「見つめなければならないもの」は、具体的な物質としては、存在しません。

 

 また、僕の顔相は、正視に耐えないほど醜悪だったかも知れません。その可能性は否定できません、ただ、患者がどんなドブスだとしても、顔を見る必要はあるでしょう。顔には病状の多くが出るはずです。医師にとって。

 

 会話の内容は前のレポートにある通りで、それ以上でも以下でもありません。ただ、これは単なる一例ですが、

 

 「そうだなあ、今は発熱もしない、喉も、、、、うん、拝見しましたが、今はまだ、それほど腫れてはいません。しかし、ここからどうなるかは、ちょっとわかりませんし、今、また感染者数が急増してるんですよね。ですので、即断はできませんが、一応、風邪用のお薬を一式出しますので、具合が悪くなったら、特に、熱、ですね、発熱したら、うちでは発熱外来やっていませんから、どこかこの近所で発熱外来をやっている医院を探して、そちらにまず電話してみてください。なかなか繋がらないかも知れませんが、今、とりあえず私ができることはここまでなんですよね」

 

 とかなんとか、ゆっくり落ち着いて話してくれさえすれば、僕は常軌を逸しているなんて思いもしませんし、ノイローゼ扱いは言わずもがなです。

 

 前レポートにある通り、「コロナ」という地雷ワードを僕が出してしまった瞬間に、みるみる真っ赤な顔で中腰になり「いやあもう、そうなったら話全然違うんで!!うちは発熱外来やってないし!! PCRには予約が要るから、(外を指差しながら)入口もここからじゃなくて外回ってきてもらうことになるし!!」と(マスクの中の)口から唾飛ばしながら、既知事項(<1>そこは発熱外来はやってない。<2>PCR検査には予約が必要)と矛盾(発熱外来やらないなら、入口は改築でもしない限り変える必要なし。まあ忖度するに「もし、うちが発熱外来やることになったら、「外から回って」もらうことになる。という意味でしょうが)だけで構成されたセリフを、英語でいうゲラウトヒアとしか感じられない勢いで、思いっきり距離を詰めながら、まあ、激昂なさったので(要するに「怒鳴られた」わけです)、「ダメだこれはコロナ禍による医療先端者のメンタル・ディスオーダー=ノイローゼだ」と思ったのです。人権を無視した異常な査定かどうかは読者の方々に委ねます。

 

 「明らかにコロナ予備軍である僕が、いきなり。発熱外来もない内科医に、突然入ってきて、口を開けてチェックを強要し、狂った患者に戸惑った正しい医師を、逆恨みで気ちがい扱いした」と思い込んでいる方は、事実関係を読み直していただきたいです。解釈に苦しむような難問ではないと思いますが。

 

 とはいえ、しつこいようですが、今や我が国全体が、常軌を逸しているのだと言われれば、それっきりな世の中ではありますけれども。今「なんか一言いったら、突然キレられる」「相手の急所を突いたら、無限に粘着される」といった不条理な時代なのではないでしょうか?

 

 僕は、この先生が急に半立ちになってキレなければ、「先生、もしこれからどんどん熱が上がって、喉もすごく痛くなったら、PCR検査とか、抗原検査?とか、どちらで受ければ良いんでしょう?過去も受けたことはあるんですが、マネージャー任せだったんで。お恥ずかしいんですが、そういった社会性が低くてですね」と言おうとしただけだったんで、本当にびっくりしました。

 

 なんでキレられないといけないのオレが?腹たつわーこいつー。スマホ持ってたら公式に悪口書いてやろうっと♪いやいやいやいや、そういうことじゃない、落ち着いて落ち着いて。この先生だって3年前は優しい落ち着いた先生だったんだ。何かもう、コロナ禍というのは、医療の先端にいるものをして、ここまで追い詰めるものなのだな。と思い直したのです。

 

 そして、随分と長くなってしまいましたが、冒頭にある「ケアレスミス」について追記します。

 

 それは、セカンドオピニオンとして行った耳鼻科に、「事前に電話をして」という描写が全くなかったことです。前回から引きますと。

 

 <7月22日、僕はセカンドオピニオン、というか、普通にコロナの検査を受けるべく、通い慣れている耳鼻科に這々の体で歩いて行きました。僕は花粉症がひどく、ここには花粉症の薬をもらうために何年も通っていて、大先生にも若先生にも看護婦さんにも名前を覚えていただいているような仲だったのです。

 

 なんで最初から行かなかったと言えば、やっぱコロナ疑いは内科でしょ。と思ったからですが、僕がそもそも無知で、発熱外来(要するにコロナ外来ですよね)は耳鼻科は併設できないと思い込んでいたんですね。まあまあ、もうちょっと理由はあるんですが、無駄に長くなるので端折ります。

 

 いつも花粉症の季節に、鼻をズーズーさせながら「すびばせん、花粉症のお薬を、、、」といって現れていただけの僕が、顔をゆでダコのように真っ赤っかにしたまま憔悴仕切って、別人みたいな声質と口調で「あの、、、一昨日から風邪っぽかったんですが、、、、、昨日、、、、、、、内科に行ったらなんでもないと言われ、、、、、、、でも、症状が急速にとても強く出まして」、と、かなり時間をかけて言い終わるが否や、看護婦さんが「菊地さん、発熱外来あるんで、こっちに、こっちに来てください!そこ通らないで!」と言って、導線を指差してくださり、僕は、一般外来と別のルートで、個室みたいなところで待たされました。テレビでは「コロナの患者数がえらいことになってる」というニュースをやっていました。> 

 

 僕はこの耳鼻科に電話を事前に入れています。もちろん、コロナ自覚が明確になったからです。あまりにも当たり前なことだろ&煩雑にすぎる。と思い、書き忘れていたのですが、文中<まあまあ、もうちょっと理由はあるんですが、無駄に長くなるので端折ります>というのは、その日が「午前中だけ開院」の日で、僕は、ほんのタッチの差でこの耳鼻科に行けず、ほぞを噛んで、留守電だけ入れた。という流れがあった。ということです。

 

 電話した時間は当然ですが営業しておらず、留守電でした。なので、あ、、、いつもお世話になっております、、、、菊地です、、、あの、、、今回は、、、、花粉症ではなく、、、、、あの、、、一昨日から風邪っぽかったんですが、、、、、昨日、、、、、、、内科に行ったらなんでもないと言われ、、、、、、、でも、その日のうちに症状が急速にとても強く出まして」という、のちに窓口で繰り返す内容を、もう少々長めに精緻に留守電に入れていたのです。

 

 こちらの看護婦さんは3人いらっしゃるのですが、そのうちのお1人方(Aさんとします)から、当日の早朝に「○○耳鼻咽喉科です。こちら菊地成孔さんの携帯番号でよろしいでしょうか?」という、例のアレが入っており、僕が伺うコンセンサスは取れていました。

 

 なのですが、実際に伺ってみると、院内がてんてこ舞いだったせいもあり、窓口にいらっしゃったのはAさんではなく、Bさん(Cさん、としても同じですが。お一人だけだったので)でした。

 

 なので、(うお~Bさんか、留守電聞いてないかもな、、、、)と思いながら、文中にあるように、最初から説明しようとしたのですが、もう、説明を始めた瞬間から、奥からAさんが飛び出してきて<「菊地さん、発熱外来あるんで、こっちに、こっちに来てください!そこ通らないで!」>と言われ。という流れです。電話せずに行ったら、こうした可及的速やかな対処を病院は取れなかったと思います。 

 

僕の説明不足からくる誤読への説明は以上です。ご理解いただけたと思いますので、前レポの続きを書かせていただきます。

 

<5~6日目>
 

 7月24&25日。

 

 精神、神経科から睡眠導入剤が、(この猛爆で発熱外来を新設した)耳鼻科から、抗生剤、並びに副腎皮質ホルモンが届きました。前者はワンタブレット10錠、中者は5日分、後者は2日分です。

 

 僕は、違法ドラッグ経験はありません。が、過去、奇病と言える熱病で臨死を体験したことがありますので、「これがドラッギー?あるいはすでに超ドラッギー?」という経験はしました(覚醒時なのに天使が見えてハープとフルートの演奏が聞こえたり、自分の自我?が肉体を離れ、院内を自由に飛び回ったり、世界と自分がクラインの壺のようにぐるぐる入れ子構造で回転し続けたりetc)。

 

 この「壊死性リンパ結節炎」の経験はあちこちで書いているので端折りますが、中でも、ピル(錠剤一般)の服用で、<間違いなくこれスーパーハイ>という経験は、医療用の大麻でも、モルヒネでも(そもそもどちらも投与されたことがないので比較できませんが)なく、それは副腎皮質ホルモン、つまりステロイドでした。

 

 その病気は、とにかく発熱が40度越えしても全く止まらない。というだけのシンプルな病気でしたので、僕は入院3ヶ月で、体重が30キロ台まで落ち(自分で食事を摂る体力を失い、点滴のみになったので)、もう、辛いとか苦しいとかいう感覚さえとっくに失って、死の淵という極限状況が起こす、独特の感覚の中に完全に入り込んでいました。

 

 ところが、ステロイドを投与されると(ステロイド投与がこの奇病に有効であるとわかったのは、入院3ヶ月目でした)、3時間ほどで全身のすべての痛みが消え、炎天下から空調が効いた部屋に入ったように、大変な快感とともに、涼しくなるのでした。

 

 それは、ドラッグが見せる夢(アルコールも合法であるだけで強烈で悪質なドラッグです)などではなく、この病にかかるまえの、健康的に生きていた過去と、健康的に生きてゆく未来をつなぐ、パワフルなものでした。

 

 とはいえ、薬は薬です。薬効が症状と関係し、結果が残るだけです。気持ちが良いから永遠に大丈夫だ、←では嬰児の夢になってしまう。30年前はそれぐらいの感覚だった僕ですが(なにせ本当に死にかけたので&ステロイド投与だけで根治したので)、今回は「耳鼻科医が、僕の喉の様子を見て判断した結果、最低限の頓服としてこれ(ステロイド)を出し、少なくとも、睡眠を確保し、水分の円滑な摂取を確保しようとしたのだろう」と判断した上で服用しました。

 

 そしてそれは、抗生剤、睡眠導入剤とのアンサンブルもあり、まるで魔法が解けるかのような体感で薬効を発揮し、痛みは嘘のように消え、熱は下がり、気だるい眠気が訪れ、、、、と。ほとんど夢のような初日を終えました。

 

 7月26日

 

 薬効は力を大いに発揮し、「迂闊なやつだったら<はい僕!今日治りました!ぜんぶ!>と叫びながら、公園にスキップしていってしまうだろうな。というほどに諸症状を、一度ゼロに近い度数まで落としました。ずっと腫れていた左のリンパ腺の腫れも綺麗に引き、何せ喉の痛みは、懐かしのインフルエンザ程度のレヴェルに治り、熱は日平均で36度3分に安定しました。

 

 「あと3日で、抗生剤が終わり、さらに2日経つと、すべての薬がなくなる」まずはステロイドが切れる明日から様子を見ないとな。と思いながら、それでも、症状がなくなるのは良い意味でも悪い意味でもドラッギーで、つまり、その快感から逃れられません。

 

 <7~10日> *前のレポート書き始めに戻る。 

 

 7月27日&28日

 

 やはり、どんなことにもバックラッシュはあるので、昨日まで魔法のように消えていた喉痛、頭痛、発熱、痰、等々、諸症状は、「かなり落ち着いた感じで」戻ってきました。

 

 この「かなり落ち着いた感じ」は、「飼い慣らせる感」と言いましょうか、自分の元々の体力で、休息や食事、睡眠をとることによって、少しずつ、少しずつ元に戻せる実感、まあ自然治癒ですが、病気とは、激しい「不自然治癒」から、穏やかな「自然治癒」にステージを移せることが一番好ましく、元の生活にソフトランディングできることに近づくわけですが、その兆しを見つけ、コントロールできるのは患者その人でしかありません。
 

 7月29日 

 

 僕の状態は、予想もできない状態(それがコロナ。なのでしょうが)に落ち着き始めました。それは、「インフルエンザの治りかけ」とほぼほぼそっくりな状態。です。

 

 睡眠導入剤を使わなくとも、今日までの激しい、咳消耗、痛みによる消耗、熱消耗によって、僕は「やっと」ヘトヘトになって、逆に、「起きていられない状態に」なり、この2日間は、食事ととって、ほぼ摂りながら居眠りして、寝て、時計をセットしておいて定時に起きて。ということを繰り返しました。

 

 一足飛びに、たった今(7月31日午前10時)の状態を書くならば、長文を書くのはやや怠いです。もう、書き終えるからでしょう。

 

 そして、7月29日には、僕は前のレポートを書きました。

 

 改めてレポートの結果と論旨をまとめるならば 

 

 1)「軽症」の幅が広すぎる(僕よりはるかに軽い方も、僕よりはるかに思い方も、肺炎併殺していない限り「軽症」なので)。

 

 2)僕個人は、そこそこな大病を経験してきたけれども、個人的な加齢も手伝い、今回は「広く伝えなければ」という気にさせられるほどであった

 

 3)なぜなら、「第七派は感染力は強い」→「けれど重症化しない=「軽症」に留まる」

 

 4)ので、マスクも外すことを推奨するし、行動制限や、飲食店らに対する、なつかにやじるしへんかんみすでしょうかのかつての、戒厳令にも似たマンボウや緊事宣は出しません

 

5)という、行政的には直接的なつながりを持たない、つまり「イメージ的な関連付けと、現実への理解感」が、実際に振り回されているから。です。ネットでニュースばかり見ている限り、ここには繋がりがないので、繋げても「はあ?」と思われるだけかもしれません。

 

6)しかし、行政でガチガチにリレーションした条例より、こうしたイメージさんのが遥かに強いと僕は思っています。

 

 全くディスる気はありませんが(称揚する気もありませんが)、非常にわかりやすい例として、例えば昨年のフジロックフェスティヴァルの出演者、観客、ギャラリーのメンタリティと、現在行われている今年のフジロッカー、バンドマン達、SNS論客は、明らかに、ことの考え方から違っているはずです。でないと、今年は絶対に中止にしないといけない。世界で一番感染者が増えているからです。みなさん、上記の各クラスターが、そう思っていると思われますでしょうか?

 

7)街飲みもそうですし、路上飲みもそうです。社会倫理、あらゆる政治的取り決め、民の不安や安心、建築的に一体化させる要素のない、すべての散らばった瓦礫の上に「かかっても軽症だから」というマジックワードが降りかかっているのではないでしょうか?僕はそれをはっきりと感じます。 

 

 ですので、僕の言いたいことは「軽症」という言霊は結構すごいこと、そして、実際の「軽症」には、こういう目も含まれるんだということ。それだけです。コロナに関する個人的に練り上げられたコンセプトは僕にはありませんし、日本の医療界に対しては漠然とチアーの気持ちがあるだけです。

 

 僕がTwitterに現れるだけで、僕の100倍ぐらいの「僕を、<1>全然ダメ、<2>もう終わってる、<3>そもそも大したことない」と断じ、口にして拡散しないと気が済まない、僕に呪われてしまっている、半端な小利口が現れて、時に口汚く、時にクールで慇懃に悪態をつくだろうことは想像に難くありません。別にそれは構舞いません。アンチはタレントの生きる糧ですから。

 

 <お前ら本当にすごいよな。俺よりずっと頭がいいし、スマホで現実を俺よりずっとバッチリ得てるし、何より俺よりTwitter最高に上手いしな笑、そしてだ「Twitter読みながら死ぬ」という最初の人類になるかもしれないんだから。新しい、偉大な人類だよ。ただ、急いでやって見せてくれよ俺もう先長くねえんだから笑。ツンデレば気持ち悪いから出てけ、本当に俺を嘲り、憎みたい奴だけ集合笑。アマガエル状の痰の塊を進呈するんで、それでエールの交換としようじゃないか>ぐらいは言ってもタレントとアンチのイチャつき程度でしょう。

 

 ただ、今回は、僕のファンとかアンチとかいったバイアスのかかっていない方々に向けて発信したいことがあった。そのことだけご理解いただければ幸甚の至りですし、その気持ちが、僕の不徳の至りで、アンチが霧散させてしまうことは本当に恐れています。

 

 僕と同じ医療IDの方々が、少なくとも都下、どれぐらいいらっしゃるか、僕には想像もつきません。どのセクションが具体的に何をどうすればいいのか、も僕には全くわかりません。ただ、僕は、僕なりのやり方で凌ぎましたが、しのげずに負けてしまう方々の存在、というものを、今回、非常に強く意識したので。

 

 2度にわたるお目汚し失礼いたしました。最後までお読みいただき感謝します。ありがとうございました。レポートを終了します。



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