<刺青を入れさせてくれマドゥモアゼル。君の傷の話を聞く事は出来ないが>
タトゥーを入れると書いたら、微弱な反応があった(盛大な反応を見せた「捨てる服の件」は少々お待ち頂きたい。応募が多すぎてなかなか決められないが、必ずクリーリングの後にお送りします)。
タトゥー入りの方2名から、まあ「ようこそ」といった旨のご挨拶を頂いた、うちお一人は、首筋に筆記体で「pepe」と入っていると聞き、汎用性のある単語を使って良かったと思った(「ペペ」は、「ペペロンチーノ」に代表される様に「唐辛子」の事でもあるが、スラングで「色男/色悪」といった意味である。御存知の方がどれぐらいいらっしゃるか相像もつかないが、セックス用のローションとして、追随メーカーのそれの猛攻を逃げ切って今でもトップを走っている製品の名前でもある)。
一方で、これまた綺麗に2名の方から「絶対反対」という、反応を頂き、特にお一方はものすごい長文で、読めば読むほど、完全に主客が転倒し、その方が嫌々刺青を入れられている主観になってしまっている。何らかのトラウマがあるのであろう。針や痛み、といった具体的な事なのか、描いた絵が一生消えない、もう充分なのに、更にエスカレートしてしまう、といった象徴的な意味なのか解らないが、ほとんど泣かんばかりの勢いだったので、かえって説得力が真空化してしまう。文章は面白かった。
もう1人の方も併せて「せっかく親御さんに貰った大事な体を」といった紋切り型のラインが出て来たけれども、せっかく親御さんに貰った大事な体にはもう、結構なゲージ数のピアスが三つ入っているし、後頭部の毛髪を皮膚ごと頭頂部に移植しているので(どちらか一方はウソです)、今更まっさらな体ではない。せっかく親御さんに貰ったまっさらな体で何もしない、もしくはろくでもない事しか出来ない、という宝の持ち腐れはクソほどいる。彼等よりは幾分、頑張っているほうだという自負はあるのだが、まあ、そういう議論ではない。
タトゥーが人類にとってどれだけ自然で有意義な行為なのかは、人類学の本を一冊読めばすぐ解る。近代の、少なくとも日本では、タトゥーの持つ永遠性という側面を悪用し、犯罪を含むあらゆる反社会性のイメージと結びつけたが、そんなもんはとっくに無くなっている。永遠性の悪用なら、インターネットのが数兆倍上だ。現在、インターネットを使用している人類は全員、島流しや少年院入りの証に掘られる刺青を入れて暮らしている。それらは隠さなければいけない、美的な有意義さが皆無のタトゥーである。ネットにハンドルネームがあるのは、楽しくペンネームを考えるという側面もあるだろうが、「少年A」「山村佳代子さん(仮名)」といった行為と同義の側面も含まれている。前科者なので名前が出せないのである。
問題は美しいか美しくないかだけであって、何度も書いたが私は子供が出来ない体であるけれども、もし娘が出来たとして、何もしなくても(化粧さえしなくても)物凄く可愛いと思っているとする。その娘がある日、美容整形とタトゥーとピアスと、カットタン(舌先に切れ目を入れて蛇の様に二股にすること)がしたい、と言って来たら、「一生使えるほど美しければいくらでもやれ」と言うと思う。というか、一番重要な事を忘れていた。美容整形と同じく、タトゥーは現在、消そうと思えば消せる(上書きしないといけないが)。
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