<浜崎容子さんのライブのリハーサルに行った。私の劣等感にこれほど着火する女性はいない> 

 

 私が短躯コンプレックス一般名チビコンである事はどなたも御存知であろう。同症者(インフェリオリティ・コンプレックスは、はっきりと症名である)にマイルス・デイヴィスがおり、アドルフ・ヒトラーがおり、佐山聡がいる、私は先達から多くを学ばなくてはならない。 

 

 気がついたら「どうせママゴトだ」と思いながら会社の代表取締役になっていた事に気がついた時は、大袈裟でなく、失神するかと思った。「会社の社長や、大きな仕事をする人、人の上に立つリーダーには背の小さい人が多い」という一般論があり、明言してこそいないが、これは短躯コンプレックスの症状を一覧しているのである。 

 

 浜崎さんはクラシック・バレエを習っていたそうで、原理的には現在、誰でもクラシックバレエを習う事は出来るが、浜崎さんはカリカチュアライズの世界を生きており、つまり、「絵に描いた様な」クラシックバレリーナ中座派、のスタイルを持っている、神田うのである(因に、米倉涼子もそうなのだが、彼女は「絵に描いた様」ではない。喫煙経験も早く、バレエ修業時代にも友人にヤンキーが多かった等々、変わり種だ)。 

 

 写真をご覧頂ければお解りの通り、スタジオはガラス張りで、二人並んだとき、私は彼女が飼っている、スーツを来たチンパンジーではないかと思った。とても狭い社会で噂になっている「サード・スパンクハッピーが、浜崎容子ヴォーカルで結成されるかも知れない」という噂が実現するとして(あくまで仮定である旨、強調させて頂く)、音楽を完全に抜いたとしても相当に良いと思う。短躯クールというのは、少なくともポップミュージックの世界では滅多に見られる美学ではないからだ(ウディ・アレン映画の様に、映画界では昔からあったものだが)。 

 

 岩澤さんは私よりも小さかったのは御存知であろうし、現在共演する機会の多い吉田沙良さんは実寸的には私よりも大きいが、フラットシューズで、前のめりのフォーム、つまりファンキースタッフであり、大きい事がちょっと嫌であるかのような雰囲気さえある。I.C.Iはすらっとしているけれども、実のところ、私よりは若干小さい。小田朋美さんは私より小さく、これで私が「でっかいバンドのリーダーが一番背が小さい」という、症状を緩和してくれている。dCprGがナチス美を持たないのは、第一にはヴァイブスも音楽の内容も違うからだが、「集団スポーツの監督が、選手より小さい」という図が一般性を持つからであろう。 

 

 ハイヒールを履いて、背筋をぴしっと延ばした、実寸的にも私より大きく、(少なくともステージでは)威圧的でS的な浜崎さんは、私のチビコンを刺激するという事以上に、ある可能性を秘めている。集合的劣等感を刺激されるのは確かに嫌な物ではあるし、私はマゾヒストではないので、ひーひー喜ぶ事も出来ないが、ファインデザインにする事は出来る。