アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門メールマガジン

2013年俺的ランキング「アニメ俺的美衝撃2013」

2013/12/20 08:10 投稿

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今年、個人的にインパクトの大きかった話題を直感的に10コ並べてみました。直感とはいえ、これはこれで2013年のトレンドを現しているように思います。なお美衝撃という単語は、今年放送30周年の『魔法の天使クリィミーマミ』でマミが歌う「美衝撃(ビューティフル・ショック)」からいただいただけで、さほどの意味はありませんので、あしからず。

1、波動砲封印!(『宇宙戦艦ヤマト2199』)

宇宙戦艦ヤマトのアイデンティティーといってもいい波動砲。男性原理の塊のようなこの兵器を『ヤマト2199』は最 後に封印してしまったのでした。これはビックリ。それは、最後に波動砲で自沈しなくては物語を締めくくれなかっ た(それでも「完結」しなかった)クラシック・シリーズへの最大の批評のような……。男性原理から距離をとって いるということを考えると、古代進よりも森雪が活躍していることの意味も見えるような気もします。

2、「サザエさんの秘密徹底解明SP」が濃かった!

 11月26日に放送された「「サザエさんの秘密徹底解明SP」は、「どうせほどほどの内容でしょ」という予想を裏切り、45年間で放送した約6,763話を徹底調査して、有名な「全自動卵割り機」などレアなエピソードを映像でガンガン紹介していくという、すばらしい内容でした。というかムック『アニメ「サザエさん」公式大図鑑 サザエでございま~す!』(扶桑社)はなんでこういう内容で作らなかったんだYO!
 さらにはスタジオゲストに脚本の雪室俊一さん、効果の柏原満さんなども登場して、ちょっとしたエピソードを紹介した点も非常にレアでした。録画してなかったことを悔やんでます。なお先日はCD『サザエさん音楽大全』もリリース。月曜朝から聞くだけで、日曜夕方の寂寥感を味わえる傑作アルバムです。

3、アイドルは崖が好き! (『アイカツ!』)

『アイカツ!』1年目のクライマックスに置かれたエピソードは、なんと主人公・いちごの母・りんごの過去が発覚するという内容。りんごは、なんと伝説のアイドル「マスカレード」だったのです。もちろん、OPでのママ推しからいつかは登場するであろうと想像できるエピソードでしたが、まさかクライマックスに置かれるとは。正体発覚後の第48話『Wake up my music♪』では、お世話になっているデザイナーのところへ出向くため、母娘二人で「アイカツ!アイカツ!」のかけ声をかけながら崖を昇る名シーンも登場。こういう「涙」と「笑い(ツッコミ)」がセットになった感動って、アニメならではと思うんですよね。2013年の能登麻美子さんは、弁天(『有頂天家族』)といい星宮りんごといい、実に大人の魅力にあふれておりました。

4、安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」ついに発売!

 長らく発売延期となっていた、安彦良和原画集が発売になりました。既に30年以上前の作品であるにもかかわらず、散逸した資料を集め、一冊の本にまとめるにはさまざまな苦労があったのではないかと思います。流麗な線を楽しむもよし、微妙な表情を描き分けるその筆致に驚くもよし、メカ・アクションやエフェクトの魅力を再発見するもよし。世代を問わず、アニメファンの方には是非おすすめしたい一冊ですね。

5、田辺修、最新作発表!!

 高畑勲監督の『かぐや姫の物語』ことです。田辺さんは、人物造形・作画設計を担当しています。『ホーホケキョとなりの山田くん』で演出などを担当した田辺さんの力は、本作でさらに存分に発揮されていて、翁の木訥とした魅力、女童のシンプルな造作のおもしろさなどは、田辺作品ならではの味と思います。これをきっかけに『どれどれの唄』のPVとか、『ギブリーズepisode2』のエピローグとかをみんな見るといいよ! と力説しておきます。

6、MOVIE NEXはNEXTスタンダードになるか!?

 ディズニーが映像ディスクを売るのではなく「視聴権を売る」方向に大きく一歩踏み出しました。「MOVIE NEX」はDVD・BDにクラウドへのアクセス権などをまめて売るというコンセプトの商品で、『モンスターズユニバーシティ』以降の商品は全部こちらで統一とか。これが根付くようなら、ディスク販売から権利販売への転換もスムーズにいくのではないかと思いますが、さてさて、どう戦い抜くかの。今後に注目です。

7、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』の挑戦

昨年『009 RE:CYBORG』で、セルルック3DCGの長編を制作したサンジゲンが元請けとしてキャラも全編3DCGで描くTVシリーズに挑戦! かつて手塚治虫は無理矢理『鉄腕アトム』を週一で放送し、そのために開発された省力のためのさまざまな表現が、今のアニメ表現の根幹を形成しました。それと同様に、予算や時間、そして技術の壁を越えて、この作品が成功すれば、これは次世代の『アトム』的な存在になるのではないかと思うのです。ハードなミリタリーSFとしても、キャラ中心に萌えミリとしても楽しめる絶妙のバランスを差配するのは安心の岸&上江洲コンビです。

8、まさかの復活! 『熱風大陸ブシロード』

10年前に諸般の事情で潰えた企画がまさかの復活。しかもTV特番という意外なリリース形態にもびっくり。

9、「キオクの引きだし」「全録 ゼンロク」は超便利!

「キオクの引きだし」は、VHSデッキにつなぐとPC不要でmpeg4ファイルに変換してくれる魔法の装置。これでDVD化されていない手元のVHSソフトをどんどんデータ化できます。「全録 ゼンロク」は(最低画質だと)8日間8chの全番組をキャッシュとして保持してくれる装置。「録画予約する」という概念そのものがなくなり、タイムマシンで時間を自由に行き来しているような気分でTVが見られます。どちらも導入して損なし!

10、スーパーエージェントの休日!? (『革命機ヴァルヴレイヴ オフィシャルファンブック』 (学研ムック))

学研の『アニメディア』といえば花鳥風月を大切にし、アニメキャラを実在のアイドルのように扱うその手つきに特徴がある雑誌です。そのスタイルは創刊30年を超えてまさに伝統芸能ともいうべき域に達しています。『革命機ヴァルヴレイヴ オフィシャルファンブック』でもそのセンスは十分に発揮されました。カラーページに、エルエルフ以下スーパーエージェントたちのプライベートに接近した記事(各人のオフの日のタイムスケジュールとか、それについてのプロデューサーのコメントが掲載されている)が掲載されてるのです。この発想力、さすがの学研アニメディアと驚いた次第。

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