第一回アニメレビュー勉強会で高得点を集めた原稿を紹介します。当初は某サイトに掲載をお願いしていたのですが、そちらでは継続的な掲載は難しいかも……というムードになってきたので、僕のブログに掲載させていただくことにしました。
こちらが第1位の原稿になります。
採点は、投稿のあった28本の原稿に対して、参加者26人が持ち点50点で自由に点を割り振る、という方法で行われました。
もちろん点が高いからといって絶賛されたわけではなく、点が低いからといって酷評ばかりではないのが、この勉強会ですが、それでもやはり、点が集まったレビューには全体の中でも目立った特徴・魅力があると思います。
なお想定媒体は、あくまで読者層の想定をするための仕掛けでして、「文字数」「用字用語」「企画の方向性」などにまで準じたものではありませんのでご容赦を。
こちらが第1位の原稿になります。
採点は、投稿のあった28本の原稿に対して、参加者26人が持ち点50点で自由に点を割り振る、という方法で行われました。
もちろん点が高いからといって絶賛されたわけではなく、点が低いからといって酷評ばかりではないのが、この勉強会ですが、それでもやはり、点が集まったレビューには全体の中でも目立った特徴・魅力があると思います。
なお想定媒体は、あくまで読者層の想定をするための仕掛けでして、「文字数」「用字用語」「企画の方向性」などにまで準じたものではありませんのでご容赦を。
第1回アニメレビュー・マイスター
原稿【12】/小林大樹/想定媒体:一般誌のアニメ特集等
昨今、劇場、TVを問わず宮崎駿作品を思い起こさせるディテールを持つ、いわゆる「宮崎駿リスペクト」なアニメ作品が散見されるようになっている。新海誠監督の『星を追う子ども』、山本寛監督の『フラクタル』、村田和也監督の『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』……などなど。ぱっと思いつくだけでも、片手では数えきれない程だ。そんな折だからこそ、宮崎駿の初劇場監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』を改めて振り返ってみて、「宮崎アニメの魅力」の秘密を探ってみるのもいい機会かもしれない。
舞台はヨーロッパの小国、カリオストロ公国。人口3,500人の風光明媚な国連加盟国だが、秘密裏に幻の偽札「ゴート札」を製造していた。ルパン達はそのゴート札の秘密を探るためにカリオストロ国内に潜入し、そこでカリオストロ大公家最後の姫、クラリスと出会う。そして、秘宝を求め無理やり結婚を迫るカリオストロ伯爵の手から花嫁であるクラリスを救い出そうとする――。というのが物語のあらすじ。なんともシンプルで王道なストーリーである。
劇中、伯爵がクラリスに対して「光(大公家)と闇(伯爵家)の二つの顔が国を支えてきた」というセリフを放つ場面があるが、本作自体にも華やかで映画の顔となる部分と、その魅力を影で支える部分の二つの面がある。
まず表の面だが、これはもちろんアクション映画としての顔だ。各キャラクターの現実離れしたアニメーションならではのアクションには、「動きの快楽」がたっぷりと詰まっており、宮崎監督の十八番である、さまざまな舞台装置を使ったアイデアも満載。3コマ作画(アニメーションにおける、基本的な動かし方)をベースにしながらも巧みなレイアウトと、美術の名手、小林七郎、山本二三らによる背景によって描かれた引き締まった画面は、作画、撮影技術が向上した現代の作品と比べても、負けずとも劣らない普遍的な魅力を持っている。
そしてもうひとつ、目立たないが本作の魅力を影で支えているのが、「時間」のコントロールという側面だ。セリフのテンポやキャラクターのリアクション、さらには何気ない間に至るまで、巧みな時間の切り取られ方がなされている。本作に名セリフが多いと感じるのも、芝居とセリフとのタイミングが絶妙だからに他ならない。視聴している間は、現実世界の時間ではなく、宮崎駿の創りだした心地よくスピーディな時の流れに身を委ねることになる。また、技法的な部分に留まらず、テーマにも「時間」は深く関わっている。若かりし頃のルパンを登場させることによって「時の流れ」を感じさせ、ルパンというキャラクターに深みを持たせ、さらにはクラリスとの再会もドラマチックなものとなっている。もうひとつ付け加えると、ラストでは「時計塔」が崩壊し、400年間に渡るカリオストロ家の歴史的なしがらみによる「時」の呪縛に捕われていたクラリスを自由の身にするのである。
つまり、アニメ映画では基本中の基本である「動きの快楽」と「時間」という二つの要素を綿密に誠実にとことんまで追求して作り上げていった結果が、本作を今もなお色あせない名作にし、他の追随を許さない怪作にしているのだ……って、あら、どうやら『カリオストロの城』に「宮崎アニメの魅力」という名の秘宝を手に入れようと挑んだつもりが「コテンコテン(古典古典)」にやられてしまったようだ……(苦笑)。ということで、未見の方には是非とも、この究極的にスタンダードで王道な、純化されたアニメ映画の本質的な部分を体感してみてほしい。
願わくば、今後「本物以上と言われたゴート札」のような作品が作られることを期待したいところではあるが、『カリオストロの城』を見ると、やはり宮崎駿の壁の厚さを感じずにはいられない。
※一言補足
ダジャレの是非……はさておいて、非常にスタンダードな原稿ですが、最後の締めにでてくる、見たいという作品が「本物」ではなく「「本物以上と言われたゴート札」というレトリックをどう考えればいいのか。そのあたりが一つ焦点になった原稿でした。
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