主張
住生活基本計画
深刻な住まいの現状の打開を
国土交通省が2016年から10年間の住宅政策の基本となる「住生活基本計画」の見直しへ向け検討をすすめています。同計画は3月中にも閣議決定される予定です。貧困と格差が広がる中で国民の住まいについて、さまざまな影響が現れ、人間らしく生きる権利を損なわれている事態も生まれています。憲法25条に基づき良好な環境で安心して住み続けられる住まいを国民に保障するため、国は真剣な努力をすべきです。
住宅の負担が家計を圧迫
いまの日本は、すべての国民に安心できる居住環境が保障されている状況ではありません。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」、社会保障費削減などが事態の深刻化に拍車をかけています。
働く貧困層が増え、年収200万円未満の若者の77・4%が親との同居で生活を維持しているとの調査があります。低所得の母子家庭、低年金の高齢者らは賃貸住宅の家賃払いに四苦八苦です。低所得層ほど住居費負担が重く家計を圧迫していることが浮き彫りになっています。住宅扶助費の削減が生活保護世帯を直撃しています。
持ち家世帯の家計も大変で、総務省調査では可処分所得に占める住宅ローン負担率は2000年18・7%だったのに、13年は20・6%にもなっています。
住生活基本計画は、住生活基本法(06年成立)に基づき情勢の変化にあわせ、5年に1度変更されています。国交省の変更案は、「少子高齢化と人口減少が住宅政策上の諸問題の根本的な要因」とし、空き家の増加、大都市の後期高齢者の急増、地方圏の人口減少、生活保護世帯の増加などを課題にあげています。若年・子育て世帯の「安心」確保、高齢者が自立できる住生活実現とともに、「住宅を市場において自力で確保することが難しい」低所得者が住宅を確保できる環境整備も基本方針に含めています。暮らしの実態を反映した面もありますが、国民の住環境の根本的打開には不十分な内容です。
歴代政権は住宅供給をもっぱら民間市場に任せ、公的支援を縮小する施策を続けてきましたが、それを改める方向はありません。
住まいに困っている低所得者世帯への住宅供給を目的にした自治体の公営住宅は削減され続け、大都市部では競争率が数十倍、地域によっては数百倍にもなっています。都市再生機構(UR)の住宅も新規建設は行われておらず、家賃も市場家賃を基本としているため、高家賃になっています。
民間賃貸住宅では、居住の安定確保のための国の対策がありません。高齢者、障害者、外国人の入居を断る家主も多く、それが「脱法ハウス」など「貧困ビジネス」を横行させています。東日本大震の被災地での住まいの復興は、困難を極めています。変更案では、これらの解決の道筋も不明です。
「民間任せ」から転換を
「民間任せ」「自己責任」を基本とする住宅政策を「住まいは人権」との立場に立った政策に転換することが求められます。そのために▽国民の住まいに対する権利の確立▽めざすべき居住・住環境水準の法定化▽適切な住居費負担の設定▽公共住宅の質量ともの改善目標の明確化などが必要です。「住生活基本計画」にはこうした具体策こそ盛り込むべきです。
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