暴言連続
米国の戦争に自衛隊が参戦・軍事支援する戦争法案の現実的危険と違憲性が参院の論戦でいっそう明らかになり、同法の廃案を求める空前の国民のたたかいが広がっています。追い詰められる安倍政権は強硬姿勢を崩してはいませんが、自民党内では内閣支持率の急落や法案への批判の高まりに危機感が強まっています。「地元の盆踊りでも支持者から次々、安保法制(戦争法案)について聞かれる。関心はものすごく高くなっている」。こう述べる自民党の閣僚経験者は顔をくもらせます。
「原爆の日を前に、海外での軍事活動で核兵器を輸送できるという(中谷元・防衛相の)とんでもない答弁が出た。また支持率は下がる」
戦争法案をめぐっては、中谷防衛相の答弁に加え、礒崎陽輔首相補佐官の「法的安定性は関係ない」という暴言や、武藤貴也衆院議員の「戦争へ行きたくないというのは超利己的」などの暴言が続いています。
「ホルムズ海峡の話にこだわっているが、国民には理解されない。昔のABCD包囲陣みたいな話で、あんなことを言っていると本当に戦争になる」(閣僚経験者)
こうした中、自民党をはじめ保守層から公然と戦争法案の廃案を求める声もあがり始めています。
いま、多くの自民党国会議員の不安な視線の先には、9日からお盆にかけて報道各社から出される内閣支持率などの世論調査があります。
風雲急を告げる
自民党中堅衆院議員の一人は「すでに内閣支持率と不支持率は大きく逆転した。支持率が3割を切れば危険信号だ。党内がガタガタになる。風雲急を告げる。自民党総裁選にだれか安倍総理の対立候補が出なければ自民党がもたない」「安保法制は、米国からすれば『この程度か』ということだが、国民にすれば大革命だ」と述べます。
さらに今後、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働、戦後70年談話の発表、労働法制の大改悪など、国民世論に背く重大課題が連続します。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設問題では、世論に追い詰められ1カ月の協議期間を設けますが、政府は「辺野古以外ない」という姿勢を崩してはいません。支持率のいっそうの低下は避けられないという見方が大勢です。
正念場の8月
この中で、9日投票の埼玉県知事選では自民党県連推薦候補は「惨敗の流れ」(同党関係者)の見方も出ており、自民党は「党本部は関与しない」と予防線を張り出しています。20日告示・9月6日投票の岩手県知事選では、自民党支持で出馬を予定していた平野達男元復興担当相が急きょ不出馬を表明しました(7日)。自民党議員は「負けるのは確実。政局への影響から引っ込めざるを得ない」と語り、関係者は「安保法制の影響は大きい」と認めます。
一方、礒崎補佐官の暴言問題では、与党の公明党幹部から、同氏の更迭を容認する発言も飛び出しました。9割超の憲法学者、元内閣法制局長官らから戦争法案に対して「憲法違反」の宣告を受ける中、公明党はひたすら「法的安定性」を強弁し続け、取り繕ってきました。そこに政権中枢から「法的安定性」を否定する発言が飛び出し、同党に深刻な打撃となっています。自民党閣僚経験者は「かつて社会党が自民党と組んだときのように、公明党も崩壊するのではないか」と語るほどです。
他方、同党ベテラン議員は「支持率が下がってもここまできたらやるしかない。あきらめたほうがダメージになる」と参院で強行突破する覚悟をにじませます。
国民的な世論と運動は一歩ずつ、「巨大与党」を追い詰めています。「戦争か平和か」―日本の歴史的岐路に立つ8月、戦争法案廃案のたたかいは正念場を迎えています。(政党取材班)
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