主張

辺野古米軍新基地

「中断」ではなく永久停止こそ

 沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古への新基地建設について、政府は週明けの10日から9月9日までの1カ月間、全ての工事を中断し、沖縄県と集中的に協議します。県の第三者委員会が前県政の辺野古沿岸部の埋め立て承認について「法律的瑕疵(かし)がある」と結論付け、翁長雄志知事が承認を取り消す意向を示していたことを受けての措置です。県民の「新基地建設ノー」のたたかいと世論が政府を大きく追い詰めてきた結果です。工事の一時的な中断にとどまらず、さらに永久停止に追い込んでいくことが必要です。

追い詰められている政府

 工事の中断は、菅義偉官房長官が4日の記者会見で明らかにしました。菅氏は、その理由について「沖縄県では第三者委員会の報告書が翁長知事に提出されて、埋め立て承認の取り消し等が検討されている」からだと述べました。

 第三者委員会は、仲井真弘多前知事が行った辺野古沿岸部の埋め立て承認(2013年12月)について法律的な瑕疵がなかったかどうかを検証するため、翁長知事が設置しました。新基地建設反対の圧倒的な民意を背に、翁長氏が昨年11月の知事選で掲げた「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地は造らせない」という公約実現に向けた取り組みの一環です。

 第三者委は7月、仲井真前知事の埋め立て承認は「法律的瑕疵がある」とする報告書を提出し、翁長氏は「最大限尊重する」と語っていました。翁長氏が承認を取り消せば、政府は新基地建設に向けた埋め立て工事の法的根拠を一切失うことになります。

 政府はこれまで「わが国は法治国家であり、行政の継続という観点からも、既になされた承認に基づいて埋め立て工事は進めさせてもらう」(菅氏)などとしていました。しかし、埋め立て承認が取り消され、違法状態となった工事をなお強行すれば、県民の批判がさらに高まるのは明らかです。今回の工事中断は、民意無視の政府の強権的姿勢がいよいよ通用しなくなったことを示しています。

 政府が工事中断を決めた背景には、参院で審議中の戦争法案に対し国民の反対世論とたたかいが大きく広がり、安倍晋三内閣の支持率が急落していることがあると指摘されています。国内全ての原発が停止している中で、政府が近く九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働を狙っていることにも国民の批判が高まっています。その上、辺野古での埋め立て工事を強行してさらに内閣支持率が低下することは避けたいという思惑が働いたとされます。沖縄の新基地反対のたたかいが、戦争法案や原発再稼働に反対する全国のたたかいと結びつき、政府を辺野古での工事中断に追い込んだのは明らかです。

沖縄のたたかいに連帯を

 政府は、工事を中断したものの、辺野古に新基地を建設する方針は不変であり、県との協議で受け入れを迫ろうとしています。これに対し、翁長氏は「辺野古への建設は不可能」という立場で協議に臨むとしています。

 辺野古の新基地建設を阻止するためには、中断した工事を決して再開させないことが重要です。新基地建設に反対する沖縄県民のたたかいに、全国が連帯をいっそう強める時です。