主張
防衛省の研究委託
大学は軍事協力拒否の堅持を
戦争法案をすすめる安倍晋三政権のもとで、大学などを軍事研究に動員する新たな制度が動き出しています。防衛省が今年度予算で大学・研究機関に公募している「安全保障技術研究推進制度」です。
軍事研究の下請け機関に
防衛省はこれまでも大学などの研究者と共同研究を行っていますが、その目的は基礎的技術の交流というものでした。今回の制度は、防衛省が新しい兵器の開発につなげるための具体的なテーマを設定し、大学などに研究を委託するもので、軍事目的が明瞭です。大学などを軍事研究の下請け機関へ変質させ、「学問の自由」をじゅうりんする、きわめて危険な制度です。
防衛省が公募する研究テーマ28件は、「電波・光波の反射低減・制御」「レーザ光源の高性能化」「無人車両の運用制御」「昆虫サイズの小型飛行体実現」など、自衛隊の戦闘能力を高めるために必要とする先端的技術ばかりです。
たとえば「電波・光波の反射低減・制御」は、戦闘機が敵に探知されないようにする「ステルス化」に必須の技術です。米軍のステルス攻撃機は、イラク戦争やシリアでの過激組織IS空爆などでも実戦投入されました。自衛隊が米軍と一体になって海外で武力行使するために、最新鋭兵器の開発に資する研究を大学などに求めているのです。
安倍政権が「海外で戦争する国づくり」に突き進むなかで、自衛隊が海外で「殺し、殺される」ことに日本の大学が技術面から貢献する、そんな恐ろしい事態となる現実の危険があります。
しかも、今回の制度は、受託した大学での研究が防衛省のコントロール下におかれ、大学の教育・研究の自由が損なわれる大問題もあります。同制度では、研究資金は年間3000万円が1~3年にわたって提供されます。毎年、防衛省所属のプログラムオフィサーが研究者を管理し、問題がないと判断すれば次年度も契約となります。研究成果も、防衛省の確認なしには発表・公表ができず、防衛省が必要とすれば軍事企業に無償で特許を利用させるなど、研究の自由を大幅に制約するものです。
日本の大学は、戦前、侵略戦争に動員された反省から、平和憲法のもとで「学問の自由」が保障され、「学術の中心」として発展してきました。日本学術会議は、「戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わない決意の表明」(1950年4月)を行い、多くの大学で「軍事研究の禁止」が確認されてきました。
ところが、大学ではいま、この10年余の「大学の構造改革」によって、基盤的研究費の大幅削減が断行され、「教授が受け取る研究費は数万円。実験費、実習費など授業に必要な経費さえままならない」という深刻な事態も生まれています。そうした兵糧攻めの一方で、資金がほしければ軍事研究に手をだせと誘導するような、卑劣なやり方は許されません。
国民のたたかいと連帯し
大学自らが「学問の自由」を守るため、「軍事研究禁止」の原則を堅持することは、国民に対する歴史的責務です。戦争法案に反対する国民のたたかいが空前の規模で広がっているなかで、すべての大学が国民と連帯し、学問の府として、平和のとりでとして、軍事協力を拒否すべきです。
コメント
コメントを書く