(写真)志位和夫委員長の講演を聞く日本共産党創立93周年記念講演会参加者=18日、党本部
日本共産党は18日、党本部の大会議場で党創立93周年記念講演会を開きました。安倍政権が進める戦争法案との激しいたたかいのもと、志位和夫委員長が「戦争法案阻止へ―空前の国民的たたかいを」と題して講演。戦争法案の危険性を浮き彫りにし、推進勢力が持ち出す「根拠」を総崩れにした党の国会論戦の到達点、憲法に刻まれた国民主権の原則が国民のたたかいのなかで大きな力を発揮している情勢と展望を語り、「憲法違反の戦争法案を必ず葬り去ろうではありませんか。戦後最悪の安倍政権を打ち倒そうではありませんか」と呼びかけると、会場から割れんばかりの拍手がおきました。憲法学者の小林節さん、作家・僧侶の瀬戸内寂聴さんが、日本共産党への期待のビデオメッセージを寄せました。参加者は第2会場まで入り、講演会はインターネットでも全国に中継。674カ所で視聴会が行われ、ユーチューブなどで2万2722回再生されました。
「自然成立」はない、廃案へ世論と運動で採決不能に追い込もう
志位氏は冒頭、政府・与党による戦争法案の衆院強行採決に「憲法9条に反するだけでなく、国民主権の大原則に反する許しがたい暴挙」と満身の怒りを込めて抗議しました。一部メディアが「今国会成立へ」と戦争法案を報じていることに、法案には予算案や条約と違って「自然成立」はないと強調。政府・与党が法案を成立させようとすれば、参院で強行採決するか、衆院で3分の2以上の賛成で強行再議決が必要となるとのべ、「国民的運動を広げに広げ、圧倒的世論で安倍政権をさらに追い詰めるならば、採決不能の立ち往生に追い込むことは可能です」と廃案に向けたたたかいを呼びかけました。
そのうえで、国会論戦で明白になった戦争法案の危険性と道理のなさを、「違憲性」「対米従属性」「歴史逆行性」という三つの角度で訴えました。
違憲性―憲法9条を蹂躙する最悪の違憲立法
第一の角度は「違憲性」―戦争法案が日本国憲法を蹂躙(じゅうりん)する最悪の違憲立法だということです。
憲法9条を破壊し「海外で戦争する国」に道を開く三つの大問題があります。
第一は、「戦闘地域」で行う米軍等への「後方支援」=兵たんです。自衛隊が攻撃されれば武器を使用、戦闘になるなど、憲法違反の武力行使にあたり、「殺し、殺される」戦闘に道を開くものであることです。
志位氏は、憲法違反であることをごまかすために政府が使う「後方支援」「武器の使用」「武力行使の一体化」という概念は、世界のどこにも通用しないもので、政府の「根拠」はことごとく崩れたと強調。兵たんが軍事攻撃の目標となる当たり前の事実さえ認めず、「リスクが高まることはない」と繰り返す安倍政権の存在こそ「日本にとっての最大のリスクだ」と告発しました。
第二は、戦乱の続く地域での自衛隊の治安活動が「殺し、殺される」戦闘に容易に転化する問題です。党の追及に安倍首相は、アフガニスタンに展開し多数の犠牲者を出した国際治安支援部隊(ISAF)のような活動への参加の可能性を否定していません。
志位氏は、ISAFに参加し兵士43人が死亡したデンマーク軍の密着ドキュメンタリー映画「アルマジロ」が映し出した戦慄(せんりつ)すべき実態を告発。この映画の監督が「よりよい世界を作るための軍事行動が逆に市民を苦しめ、新たな敵意、テロリストを生み出している」と語っているとのべ、戦争法案が成立すれば、米国がアフガンの治安部隊を支援するRS任務(確固たる支援任務)への自衛隊の参加を求めてくる可能性があると告発しました。
第三は、戦後半世紀にわたる政府の憲法解釈を百八十度大転換し、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、米国とともに海外での武力行使に乗り出すという問題です。
このなかで志位氏は、政府が6月に示した集団的自衛権行使を「合憲」とする「文書」について、その誤りを論理的に指摘した元内閣法制局長官の発言を紹介しながら徹底的に批判し、集団的自衛権行使が「憲法違反」であることは明瞭となったと強調しました。
集団的自衛権行使は、相手国から見れば日本による事実上の先制攻撃となり、相手国に日本を攻撃する大義名分を与え、日本の側から国際的な武力紛争状態を新たにつくりだすものにほかならないと力説した志位氏。戦争法案が「海外で戦争する国」をつくる違憲立法であることはいまや明らかであり、憲法を無視した政治の行き着く先は独裁政治にほかならないと告発し、「民主主義を破壊する独裁政治への道を断固として拒否しようではありませんか。憲法違反の戦争法案の扱いはただ一つ。ただちに撤回、廃案にする以外にはありません」と呼びかけると、「そうだ」のかけ声と拍手がわきおこりました。
「対米従属性」―異常な米国追随勢力が戦争法案を手にする危険
第二の角度は「対米従属性」―戦争法案と推進勢力が異常な米国追随を特徴としていることです。
志位氏は「集団的自衛権行使の現実的な危険はどこにあるのか」と切り出し、政府が集団的自衛権発動の事例としてあげる「ホルムズ海峡の機雷封鎖」について、(1)現実にはあり得ない話であるとともに、(2)資源確保のための軍事力の発動を事例としてあげること自体、集団的自衛権行使が「無限定、無制限のものであることを自ら告白するものだ」と喝破しました。
また、集団的自衛権行使の「要件」とされている「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」について、「危険」とは「危害が生じるおそれ」であり、ここに本質的な無限定性があると指摘。武力行使の「新3要件」を満たすかどうかの判断が、時の政権の裁量に任せられており、無限定にいくらでも広がること、「ここに最大の問題がある」と告発しました。
さらに志位氏は、「集団的自衛権行使の最大の現実的危険は、米国の無法な先制攻撃に日本が参戦することです」と指摘。「問題は、米国の違法な武力行使を日本政府が『違法』と批判できるかです」と強調しました。
事実、米国による無法な戦争を、戦後、日本政府はただの一度も国際法違反として批判したことがありません。志位氏は「このような国が『違法な武力の行使を行っている国を支援することはない』といって、誰が信用するのでしょうか」と力を込めました。
米国によるねつ造が明らかになっているベトナム戦争での「トンキン湾」事件、イラク戦争での「大量破壊兵器」問題などを取り上げ、これらについて、(1)日本政府が当初、米国を無条件に支持し、(2)ねつ造と判明しても検証せず、(3)今もその誤りを認めていないことが国会論戦で明らかになったと報告。
この問題の追及を通して、ねつ造と分かっても、米国に説明を求めることすらできない底なしの対米従属ぶりを実感したと強調。「こういう究極の米国従属の政府が、集団的自衛権を発動し、アメリカとともに海外での戦争に踏み出すことがいかに危険か。絶対に許すなの声を、突きつけようではないか」と呼びかけました。
「歴史逆行性」―過去の日本の戦争を反省しない勢力が戦争法案を推進する危険
第三の角度は「歴史逆行性」です。志位氏は、5月20日の党首討論で、最後まで過去の日本の戦争は「間違った戦争」と認めることを拒んだ安倍首相の姿勢を批判しました。
党首討論で「(ポツダム宣言を)まだつまびらかに読んでいない」と語った安倍首相。安倍晋三氏は、首相になる前の雑誌対談で、「ポツダム宣言」を事実上否定する心情を語るとともに、「宣言」をめぐる歴史的事実を誤認した発言をしています。
志位氏は、「日本の政治家としての適格性を根本的に持ち合わせていない人物であることを示すもの」と批判。「およそこういう首相、こういう内閣に、日本を『海外で戦争する国』につくりかえる戦争法案を扱う資格はない」と力を込めました。
戦争法案 「合理化」 論に反論する
志位氏は、安倍政権が主張する戦争法案「合理化」論に一つ一つ反論しました。
一つは、戦後70年の歴史をどうとらえるかにかかわってです。首相らは、「安保条約改定時の戦争に巻き込まれるという批判は全く的外れ」、「自衛隊や日米安保条約が抑止力として働き、平和と安全を維持してきた」と語っています。
志位氏はこうした発言は「歴史の歪曲(わいきょく)です」ときっぱり。日本が戦後70年、他国と直接の戦火を交えることがなかった背景には、日本国憲法9条の存在と、憲法学者・国民による「自衛隊は違憲」との当然の主張があったと解明し、「憲法9条を守り、生かし、平和を希求する国民の世論と運動が脈々と続いてきた。その力が、歴代政府をも縛り『自衛隊は軍隊ではない』『海外での武力行使は許されない』という憲法解釈をとらせてきた。そうしたもろもろの力が相まって、70年間の日本の平和を守ってきたのです」と強調しました。
また、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争の事実をあげ、「安保条約によって、日本が米国の無法な戦争の根拠地とされ、戦争に協力、参加させられ、他国の民衆の殺害に加担させられてきた歴史を私たちは決して忘れてはならない」と訴えました。
その上で、日米軍事協力の新指針(ガイドライン)と戦争法案によって日米安保体制が、「地球的規模での戦争同盟」へと変貌しようとしていることを指摘。「ここにこそ日本を戦争に引き込む最悪の元凶があります。国民多数の合意によって日米安保条約を廃棄し、独立・民主・平和の新しい日本をつくろう」と呼びかけました。
いま一つは、日本と地域の平和と安定をどう築くかという問題にかかわってです。
志位氏は、首相らが「日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している」として、戦争法案を合理化していることに対し、「“軍事対軍事”の悪循環におちいることが最も危険です」と指摘しました。
そのうえで、ASEANが実践している地域の平和協力の取り組みにふれ、日本共産党が提唱している「北東アジア平和協力構想」の意義を解明。「この『構想』こそ、安倍政権の戦争法案に対する真の平和的対案だと確信しています」と強調しました。
歴史の進歩に大局的確信を持って
志位氏は最後に「日本共産党の93年の歴史に思いをはせ、歴史の進歩への大局的確信をもつことが大切です」と切り出しました。
天皇制の専制政治を倒し、国民主権の日本を築くことを命懸けで主張したたかい抜いてきた日本共産党。日本共産党が掲げた国民主権の旗は、戦後、日本国憲法の中に刻み込まれました。
志位氏は、戦争法案に反対する若者、女性、年配の人々、学者・研究者・法曹界など知識人のたたかいにふれ、「憲法に刻まれた国民主権の原則が、戦後の70年間に、国民のなかにしっかりと根を下ろし、国民のたたかいのなかで豊かに発展し、大きな力を発揮していることを実感しています」と述べ、「日々広がっている国民のたたかいは、広さという点でも、深さという点でも、自覚的・創意的なエネルギーの発揮という点でも、戦後日本の国民運動の歴史のなかでもかつてない空前のたたかいとなっています」と力を込めました。
志位氏が、「このエネルギーに自信をもち、主権者としての権利を行使して、ともに手を携え、戦争への道を断固として阻止しよう」と呼びかけると「よーし」の声とともに満場から拍手がわきおこりました。
最後に、志位氏は、「平和と民主主義とこの国の未来のために、どうか日本共産党を強く大きくしていただきたい」と訴え。「日本共産党に入党し、日本の希望ある未来を開くために、ともに歩むことを心から呼びかけます」と語りかけました。
志位氏が、講演を、「憲法違反の戦争法案を必ず葬り去ろう」「戦後最悪の安倍政権を打ち倒そう」という呼びかけで結ぶと、会場から大きな拍手と歓声が起こりました。
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