主張
イラン核合意
示された対話と交渉の有効性
イランの核開発問題の解決をめざして交渉を続けてきた6カ国(米英仏ロ中独)とイランが14日、「包括的共同行動計画」で合意に達しました。今回の合意には「歴史的な合意」「新しい可能性を開くもの」など各国政府、メディアから歓迎の声が上がっています。
軍事ではなく外交で
2002年にイランが国際原子力機関(IAEA)に申告せずに核開発を進めていた事実が発覚し、国際社会の焦点の一つとなってから13年―。一時は武力行使による核施設破壊などの議論も生まれるなどの危機的事態もありました。潘基文(パンギムン)国連事務総長が「対話の価値を証明した」とのべたように、軍事力によらずに、粘り強い外交交渉によって問題解決の突破口を開きうることを証明した点はきわめて重要です。
イランは、自国の核関連施設は平和目的であると主張してきました。しかし、過去の未申告の核開発を含め一連の疑惑が解消されないままウラン濃縮活動などを続けました。そのため、国際社会の疑念が高まり、国連安保理は06年以降4回にわたり金融取引の制限、武器禁輸などを含む制裁決議を採択しました。欧州連合(EU)は独自にイラン産原油の禁輸を決めるなど同国と欧米諸国の対立が先鋭化していきました。
変化のきっかけは、13年に穏健派とされるロウハニ師が大統領に就任したことでした。同年11月には、イラン制裁の一部解除で同国と6カ国側が合意し、今日に至る交渉の道が開かれました。
オバマ政権は、軍事的覇権主義の立場は維持しつつ、長期にわたり深刻な対立状況にあったイランとも、制裁強化や軍事力による脅しだけでなく、外交交渉による問題解決に比重を置くという方向を示してきました。
今回の合意は、イラン側が核開発能力の制限、査察・監視体制を受け入れ、核兵器をつくらないと再宣言し、IAEAがイラン側の合意履行を確認すれば経済制裁を包括的に解除するというものです。イランと米国をはじめとする交渉当事国が、合意内容を誠実に履行することが求められています。
イランと長年対立してきたイスラエルは合意を「歴史的な誤り」と批判し、イランの影響力拡大を懸念する中東諸国の一部には、合意への不満や懸念を述べる国もあるのは事実です。今後も紆余(うよ)曲折は起きうるでしょうが、今回の合意履行を、中東非核地帯設立の国際会議開催をはじめ中東地域全体の平和と安定につなげるべきです。
日本の安倍晋三政権は「戦争法案」審議の中で、集団的自衛権行使の具体例の一つとしてイランによるホルムズ海峡の機雷封鎖をあげてきました。今回の合意は、イランも米国もこの地域では対話による関係改善の流れにあり、安倍政権のいうホルムズ海峡危機などそもそもありえないことを改めて明らかにしました。
東アジアでも外交努力を
今回の合意は、対話と外交の有効性を示したものです。憲法9条を持つ被爆国として、日本政府に求められているのは、北朝鮮の核問題の解決と東アジアの平和と安定につなげる外交に力を尽くすことです。立法化をすすめる根拠がない「戦争法案」を強行するのではなく、紛争の平和的解決でこそ役割を発揮すべきです。
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