国民の所得増やしデフレ脱却を
衆院本会議 志位委員長の代表質問
日本共産党の志位和夫委員長は31日の衆院本会議で、国政の焦点課題について打開策を示して政策転換を迫りました。危機を生み出した原因も責任も自覚せず、まともな解決策を示せない安倍政権の姿が浮き彫りになりました。
働く人の所得減が原因
首相は“デフレ予想が原因”と珍論
「デフレ不況に陥った最大の原因は、いったいどこにあるとお考えなのか」。志位氏は深刻なデフレ不況について、1997年を100とした場合、企業の経常利益が163に増える一方で、労働者の所得・雇用者報酬は88に落ち込んでいること(グラフ)をあげ、「賃下げとリストラの繰り返しで働く人の所得を減らし続けてきたことにこそ、デフレ不況の最大の原因がある」と強調。「日本を“賃下げ社会”にしてきたのはだれなのか。その重大責任は、歴代自民党政権にある」と指摘し、反省を求めました。
ところが安倍首相は「企業の日本経済の将来に対する成長期待の低下やデフレ予想の固定化もあって、デフレが継続してきた」と答え、国民がデフレになると考えるからデフレになるという“珍論”を展開。「経済産業構造の変化に応じて必要な労働分野の変革を行ってきた」とのべ、賃下げ社会をつくり出した責任に無反省の姿を示しました。
政府に三つの決断求める
1 所得奪う政策中止に
「減り続けている働く人の所得を増やす方向に転換する―ここにこそデフレ不況から抜け出す最大のカギがあります」。志位氏はこうのべ、「三つの決断」を政府に求めました。
一つ目は「国民の所得を奪うあらゆる政策の中止」です。
志位氏は、消費税10%はサラリーマン世帯で1カ月分の給料が消費税に消えてしまうことになると批判し、中止を要求。
さらに、「社会保障の削減計画を中止すべきです」と強調。削減の突破口として政府が狙う生活保護制度の大幅切り下げについて「最低賃金など国民生活全体の悪化をもたらし、賃下げ社会をいよいよ深刻にする」と批判しました。
安倍首相は消費税増税について、「経済状況等を総合的に勘案して判断することになる」とのべました。
生活保護制度の切り下げについては「『適正化』をはかることにした」と正当化しました。
2 賃下げ・リストラにストップ
“二つ目の決断”は、大企業・財界の身勝手な賃下げ・リストラに政治の責任でストップをかけることです。
志位氏は、日本経団連が賃上げを拒否するだけでなく、「定期昇給の延期・凍結」まで宣言し、電機・情報産業の大企業が13万人の削減計画を進めていることを告発。「ヨーロッパ各国の政府ならば、当たり前のように行っている」として、「政府として、日本経団連・財界に対して、賃下げ・リストラ競争の中止を強く要請すべきだ」と迫りました。
安倍首相は志位氏が企業の収益が上がっても雇用者報酬が下がっていることを示しているのに、「成長戦略により企業の収益を向上させ、それを雇用の拡大や賃金の上昇につなげていきたい」と破綻した政策に固執しました。
志位氏は、大企業の内部留保は不況下でも増え続け、260兆円にも上っていると指摘し、「そのごく一部を還元しただけでも賃上げは可能だ」と主張しました。
3 暮らし保障するルールを
「人間らしい暮らしを保障するルールづくりに踏み出すべきだ」
志位氏は“三つ目の決断”として(1)非正規社員の待遇を改善して、正社員化の流れをすすめる(2)最低賃金を時給1000円以上へと大幅に引き上げる(3)大企業と中小企業が公正に取引できるルールをつくる―の3点を主張。
志位氏は、首相が固執する無制限の金融緩和についても、「仮に物価が上がっても、賃金が下がり続けたままでは生活はいよいよ苦しくなる」とズバリ指摘。「政府として目標を持つというなら、賃上げ目標こそ持つべきだ」と強調しました。
首相は「賃金等の労働条件は、各企業の労使関係において決定されるもの」と背を向けました。
原発問題 ゼロへの政治決断を
首相、事故に初めて「おわび」
「『少なくとも過半の国民は、原発に依存しない社会の実現を望んでいる』ということが、国民的議論の結果を分析した政府の認識ではないか」。志位氏は、こう指摘し、安倍政権のあからさまな原発推進政策は「『過半の国民』の意思に背くものだと考えませんか」と批判しました。
日本共産党の吉井英勝衆院議員(当時)が2006年12月、質問主意書で「巨大地震の発生で全電源喪失となった場合の検討をしているのか」とただしたのに対し、安倍首相は答弁書で「安全の確保に万全を期している」などと答弁。必要な対策を何らとりませんでした。
これに対しては安倍首相も、初めて「多大なご苦労をおかけしていることに対して心からのおわび」を表明。安全神話に陥って「複合災害の視点が欠如していた」と「反省」を口にしました。
しかし、野田政権の「2030年代原発稼働ゼロ」方針については「ゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築してまいります」と答弁。「おわび」の一方で、原発再稼働・新増設を進めていく無反省な姿勢を示しました。
大震災からの復興
災害政策の抜本的転換を
首相、「収束宣言」撤回を拒否
志位和夫委員長は最初に、東日本大震災からの復興問題をとりあげ、安倍晋三首相が「復興を加速する」というのなら「これまでの政策の転換に踏み切ることは当然ではありませんか」とのべ、国の災害政策について三つの抜本的転換を迫りました。
ところが、安倍首相は、民主党政権の悪いところはそのまま受け継ぐ姿勢に終始しました。
一つ目は、住宅と生業(なりわい)の再建に必要な公的支援では、志位氏が住宅再建支援金を300万円から500万円に引き上げることや、中小企業再建を支援する「グループ補助金」の大幅拡充、小零細事業者を対象にした直接助成制度の創設を求めたのに対し、首相は「(現行法で)支援を講じている」と答弁するだけでした。
二つ目に、政府が昨年9月末に打ち切った医療・介護減免のための財政支援の復活では、3月末で自治体による減免も打ち切られるのに、「保険者の判断で減免は可能」とのべるだけ。
三つ目に、福島第1原発事故の「収束宣言」についても、撤回を拒否。志位氏が、「安全・安心の福島県」を取り戻すまで、除染や賠償などのすべての過程で政府が復興に責任を持つよう求めたのに対しても、補正および来年度予算案の「措置」を示しただけでした。
米軍基地問題
沖縄県民の総意にどうこたえるのか
首相、「オスプレイに大きな意味」
「選挙が終わったら、手のひらを返して新基地押し付けなど、断じて許されない」
志位氏は、安倍首相が総選挙直後に米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「辺野古移設」を表明したことにふれ、沖縄県民をあざむく態度をこう批判しました。
自民党は普天間基地問題について選挙公約では「負担軽減を実現する」としか記さず、沖縄の同党候補者も4人全員が同基地の「県外移設」「オスプレイ反対」を公約に掲げて当選しました(表)。しかし、安倍氏は選挙後、「辺野古移設で努力したい」(昨年12月21日)と表明していました。
志位氏の追及に安倍首相は「現在の日米合意にしたがって進め」ると述べ、なんの反省もなく新基地建設を押し付ける考えを示しました。
志位氏は、県内41すべての市町村長が上京してオスプレイ配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去を求めたことをあげ、県民総意にこたえるべきだと追及。
安倍氏は「オスプレイの配備はわが国の安全保障に大変大きな意味がある」と米軍のためのオスプレイ配備を正当化しました。安倍氏が同機配備について態度を明示したのは初めて。「沖縄の声によく耳を傾け」といいながら、住民の批判や不安に背を向けました。
日本軍「慰安婦」問題
“文書がないから強制ない” 成り立たない議論
首相否定できず
志位委員長は、日本軍「慰安婦」問題で、軍の関与と強制性を認めた「河野談話」の見直しを安倍首相が主張していることについて、「『河野談話』は強制性を立証する文書を見つけることはできなかったことを前提に、『慰安婦』とされた人たちの証言の真実性にもとづいて、政府として強制性を認めたものです」と指摘し、政府が「談話」を継承する限り、“文書がないことをもって事実がなかった”という議論を「肯定する余地はまったくない」と主張しました。
このなかで志位氏は、「談話」作成に直接かかわった石原信雄元官房副長官が強制性を立証できる物的証拠はみつけられなかったとしつつも、聞き取り調査を踏まえ「意に反して『慰安婦』とされたことは間違いない」と証言している事実を示しました。
安倍首相は志位氏の指摘を否定できず、「この問題を政治問題、外交問題化させるべきではない」と述べたものの、「官房長官による対応が適当だ」としました。
志位氏は「談話」の見直しは、日本の戦争が「不正・不義の侵略戦争だった」という戦後世界秩序の土台を覆し、「日本が世界とアジアで生きていく立場を失うことになる」と厳しく警告しました。
<資 料>
河野談話
慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。
石原信雄元官房副長官の証言
「オーラルヒストリー アジア女性基金」で「慰安婦」問題の強制性について語った石原信雄元官房副長官の証言
「結局私どもは、通達とか指令とかという文書的なもの、強制性を立証できるような物的証拠は見つけられなかったのですが、実際に慰安婦とされた人たち一六人のヒヤリングの結果は、どう考えても、これは作り話じゃない、本人がその意に反して慰安婦とされたことは間違いないということになりましたので、そういうことを念頭において、あの『河野談話』になったわけです。その調査団の報告をベースにして政府として強制性があったと認定したわけです」
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