主張
歴史教科書
過去の誤りと向き合う教育を
日本とアジア諸国との「和解と友好」にとって歴史問題はきわめて大切な課題です。アジア諸国は日本の侵略戦争と植民地支配により、深刻な被害を受けた国々に他ならないからです。
アジアとの共生に不可欠
その一つの重要な分野に歴史教育があります。近現代史を学び、過去の誤りを知ることは、日本の子どもたちがアジアの人々と共生していくためにも不可欠です。しかし、かつての戦争について「しっかりと教わった」という人は日本では13%で、ドイツの48%と大きく違います(「朝日」14日付)。戦後70年の今年、社会全体で解決にあたる必要のある課題です。
ところが、安倍晋三政権のすすむ方向は正反対です。
今月発表された中学校教科書の文部科学省の検定結果では、国際的にも注目されている日本軍「慰安婦」の実態や証言の記述に、「政府の統一的な見解に基づいた記述がされていない」などの意見をつけ、結果として記述は縮小を余儀なくされました。
「政府の統一的見解」とは、「軍や官憲」による「強制連行を直接示すような資料は発見されていない」という第1次安倍政権の政府答弁書のことです。
しかし政府自身が知っているはずのBC級戦犯裁判や東京裁判の判決には強制連行が明記されています。日本の裁判所も強制連行の数々の事実を認定しています。強制性を認定した河野洋平官房長官談話(1993年)こそ教科書に生かすべきで真実性のない答弁書で検定するなど言語道断です。
大多数の教科書が2000年代以降、自民党などの圧力により、「慰安婦」記述を自主規制してきた問題もあります。「歴史の真実を回避することなく」「歴史教育を通じて…永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」という河野談話の立場をどう誠実に歴史教科書に反映させるのか、国民的に考える必要がある問題です。
さらに深刻なのは、安倍自民党が「日本は正しい戦争をやった」という極右的な立場に立つ育鵬社と自由社の歴史教科書をこの夏、全国で採択させようと狙っていることです。4年前の採択の際にも党をあげてとりくんでいます。
これらの教科書は太平洋戦争を「自衛のための戦争」「アジア解放の戦争」と描き、戦争への反省をGHQが国民に植え付けたものといい、公民教科書も子どもたちを改憲に誘導するなど一般の教科書と一線を画す特異なものです。
安倍政権は今月、教員など各教科の専門家や保護者の意見が尊重されるべき採択について、教育委員会の「判断と責任」を強調する通知をだしました。4年前、教員も校長会もPTA連合会も反対し、住民の6割が採択すべきでないとした育鵬社公民教科書を、教科書を読んでいない教育委員らが強行した沖縄・八重山採択地区を想起させます。教育委員会制度が今年度から改悪された下で、極右的思想をもつ首長が教育委員らに圧力をかける危険もあります。
侵略戦争の美化を許さず
こうした侵略戦争美化の動きは、安倍政権がすすめる「戦争する国」づくりと一体です。この流れを断ち切り、過去の誤りに誠実に向き合う歴史教育をすすめる流れを確かなものとするために、国民的な共同を心からよびかけます。
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