主張

TPP日米協議

国会決議に反した交渉やめよ

 26日からの安倍晋三首相の訪米とオバマ米大統領との首脳会談(28日)を前に行われた環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐる日米閣僚協議は、焦点となった米国産コメの輸入拡大と米国が輸入する日本製自動車・同部品の関税撤廃で隔たりを残し、21日未明まで続いた協議は持ち越しとなりました。実務者協議が続きます。主食であるコメまでアメリカに市場拡大せよという道理のない交渉が難航するのは当然です。交渉を継続すること自体、日本の世論にも国会決議にも反しています。協議継続ではなく、TPPをめぐる交渉はきっぱり中止すべきです。

首脳会談の手土産ねらう

 閣僚協議にあたった日本側の甘利明TPP担当相と米側のフロマン米通商代表部(USTR)代表は、今回の交渉が「日米交渉の最大のヤマ場」(甘利氏)だと位置づけ、日米協議の結果がTPP交渉を左右すると協議に臨みました。安倍首相の訪米と日米首脳会談の日程が迫る中で、それにあわせて協議をまとめようとするやり方そのものが、本末転倒です。しかも日米協議に持ち出されてきたのは、米国産コメを日本の主食用に輸入させるとか、日本製自動車の関税撤廃など、アメリカの農業関係者や日本の大企業の要求をむき出しにしたものです。二つを絡め、短期間でまとまればいいというものではありません。

 日本はすでに国際的な枠組みのなかで「ミニマムアクセス米」として、国内消費の1割近い77万トンのコメを毎年輸入しています(うち主食用は10万トン)。国内ではコメの消費が伸びず、米価が下落して農家が苦しんでいるのに、これだけ輸入するだけでも日本の農業にとっては重大な負担です。

 日米協議でのアメリカの要求は、この輸入枠に加え、米国産コメを主食用に17・5万トン、飼料用などを含め21・5万トン買えというものです。現在の輸入枠に比べ膨大な輸入の押し付けであり、日本の農業への重大な打撃は必至です。しかもTPPはアメリカだけでなく12カ国で交渉しているのに、アメリカにだけ市場を拡大しろというのも道理がありません。

 日米協議のもうひとつの焦点となった日本製自動車・同部品の関税撤廃は、日本からの輸出を増やしたい日本の財界・大企業の要求です。アメリカはこれに対しても関税撤廃の時期を遅らせたり、日本製自動車に使う部品の輸入を増やさせたりするなどを求めているといわれます。いずれにせよ日米の大企業の利益むき出しで、それを米国産コメの輸入拡大に絡めること自体、大企業の利益のために日本の農業を破壊する、交渉の本質を浮き彫りにしています。

国会決議守り交渉撤退を

 アメリカが主導するTPPはあらゆる関税を原則撤廃し、アメリカ流の貿易ルールを押し付けるものです。安倍政権が交渉参加を決めたさい国会は、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物など重要農林水産物は「除外又は再協議の対象とする」ことを決議しています。安倍政権はすでに牛肉、豚肉などの輸入拡大を受け入れたといわれますが、コメまで輸入拡大の交渉を続けることは、決議を全面的に踏みにじるものです。

 安倍政権に国会決議違反の背信の日米協議をやめさせる、国民の世論と運動がいまこそ急務です。