主張
小中学校の統廃合
子どものためになるやり方か
文部科学省が、公立小中学校の統廃合の促進を狙った「手引」をまとめ、近く各自治体に通知する方針です。学校の統廃合は、子どもの通学を困難にし、大規模校化で学ぶ条件が悪化する恐れがあるだけでなく、地域社会のあり方にもかかわる問題です。機械的に統廃合を加速させることはあってはなりません。
通学「1時間」まで緩和
文科省が「学校規模の適正化」の基準を見直すのは約60年ぶりです。小学校で6学級以下、中学校で3学級以下の学校について、統廃合の適否を「速やかに検討する必要がある」としています。また、通学について小学校で4キロ以内、中学校で6キロ以内という従来の基準は「引き続き妥当」としつつ、スクールバスの導入などで交通手段が確保できる場合は「おおむね1時間」を目安とするという基準を加えました。遠方の学校への統合を促すための条件緩和です。
しかし、通学が遠距離・長時間になれば、登下校時の安全問題や子どもが疲れて学習に集中できなくなる恐れがあるほか、生徒会活動などの時間がとりにくくなる、放課後の子どもの遊びや自主的な取り組みが制約されるなどさまざまな弊害があります。
また学校は住民にとっても文化的な活動をはじめ地域の交流や防災の拠点となるなど重要な役割をもっています。地域から学校がなくなれば「地方創生」どころか、人口減・超高齢化に拍車をかける悪循環にもなりかねません。
「手引」は小規模校の欠点として、「クラス替えができない」「集団活動の教育効果が下がる」などを挙げ、社会性を育てることが困難になると問題にしています。
しかし、小規模校には一人ひとりに目が行き届き、すべての子どもに活躍の場をつくれるなどの利点もあります。地域の人たちと協力して子どもの社会性をはぐくむ工夫をするなど、小規模化による困難を克服しながら、学校の特徴を生かした充実した教育活動を実践している例は各地にあります。
実際、「手引」自体も「学校規模の適正化」は「行政が一方的に進める性格のもの」でなく、「『地域とともにある学校づくり』の視点を踏まえた丁寧な議論」が必要だとし、基準の機械的適用にくぎをさしています。自治体は保護者や住民の意向を無視して統廃合をするべきではありません。
政府が統廃合を促す背景には教育予算削減の狙いがあります。財務省は、全小中学校が標準規模の12学級以上になれば、全国で5462校が削減でき、教職員も大幅に減らせるとの試算を示し、「積極的に統廃合に取り組む」ことを迫っていました。子どもや地域の実情を考えずに、「財政」を口実にしてまず統廃合ありきという姿勢は、本末転倒です。
一方的押しつけ許さず
今後、多くの自治体で学校の統廃合が議論になることが予想されます。学校の規模や配置は、子どもの教育にとってどうなのかを第一に考えるべきです。「手引」の基準を根拠にして一方的に統廃合を進めることは許されません。
教育委員会や議会での論議、首長が策定する教育政策の「大綱」などに、子ども、保護者、教職員、住民の意見をきちんと反映させ、一方的な押しつけを許さない取り組みが求められます。