主張
教育への公的支出
国際水準への引き上げは急務
経済協力開発機構(OECD)の最新の調査で、国や地方自治体による教育への公的支出の国内総生産(GDP)に占める割合が、日本は比較できる加盟32カ国中最下位であることが明らかになりました。日本の最下位は5年連続です。公的支出が少ないため、国民の教育費負担が世界の中でも異常な高さとなっています。政府は教育への公的支出を抜本的に増やすべきです。
目標を削除した安倍政権
OECDの調査結果では、教育への公的支出が、日本はGDPの3・8%にとどまり、OECD平均の5・6%を大きく下回っています。
一方、教育への支出のうち私費負担の割合が日本は30%で、OECD平均の16%の2倍近くになっています。大学などの高等教育への支出は私費負担が66%を占めています。これはOECD平均31%の2倍以上にのぼります。
このため日本では、大学に入学した年に払う学費は国立で約82万円、私立では平均約131万円にもなります。返済の必要のない給付型奨学金の創設は切実な要求がありながら、毎年見送りになり、多くの大学生が有利子の貸与型奨学金に頼らざるをえません。大学生は在学中からアルバイトに追われ、卒業と同時に600万~700万円の借金を背負うことになり、返済に苦しんでいます。
OECD加盟国のうち半数の国は大学の学費が無償で、ほとんどの国に給付型の奨学金制度があります。学びたい若者が、お金がないために十分に学べず、希望を持てない日本の現状はあまりに異常です。憲法にもとづき「ひとしく教育を受ける権利」を保障するべきです。
高校以下の教育でも、安倍晋三政権は高校の授業料無償化を廃止して、就学支援金に所得制限を設けたり、35人学級の計画を小学1年でストップしたり、教職員の数を減らすなど、教育への公的支出を増やすことに逆行しています。
OECD加盟国のほとんどは高校が無償で、欧米では学級編成の基準は20~30人です。ここでも日本は世界の動きに反しています。
日本は昨年、教育振興についての基本方針を定める「第2次教育振興基本計画」を策定しました。文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の出した「基本計画」の案は「OECD諸国並みの公財政支出を行うこと」を将来的な目標に掲げました。ところが安倍政権が最終的に閣議決定した「基本計画」は、その目標を削除しました。安倍政権の姿勢は国際的な流れに背くものです。
計画的引き上げで改善を
教育への公的支出をOECD平均並みに引き上げれば、国と地方で約9兆円の増額になります。計画的に引き上げることで教育への私的負担を抜本的に減らし、ゆきとどいた教育を実現できます。
日本政府は、高校・大学の段階的無償化を定めた国際人権規約の条項を承認しました。公立高校の無償化を復活し、私立高校・大学・専門学校の無償化の目標を決めるなど具体化を急ぐことが必要です。35人学級を早急に完全実施し、さらに学級規模を縮小する、教職員の定数を増やすなど、教育条件の抜本的改善も求められます。教育への公的支出を拡充させるよう、大いに運動をすすめましょう。