日本共産党の志位和夫委員長が14日のNHK番組「日曜討論」で発言した全文は次の通りです。司会は島田敏男解説委員と中川緑アナウンサーです。
安倍内閣とどう向き合うか
国民多数の声に背き、異論を切り捨てる強権政治――安倍内閣打倒の国民的大運動をよびかける
中川 日本共産党の志位委員長です。よろしくお願いします。
志位 よろしくお願いします。
島田 安倍政権発足の最初から、志位さんは「自共対決」と言ってきました。この自共の対決という大きな枠組みのなかで、これからどう向き合っていくのでしょう。
志位 安倍政権がすすめている一つひとつを見ますと、集団的自衛権、消費税の大増税、原発の再稼働、沖縄の新基地建設など、どれも国民の5割、6割が反対している、国民多数の声に逆らうものとなっています。
ところが、安倍政権は、国民の批判に耳を傾けるという姿勢がまったくない。集団的自衛権行使について「私たちは納得していません」と訴えた長崎の被爆者代表に、(首相は)「見解の相違だ」と言って突っぱねる。沖縄で、何度、新基地建設反対の審判が下っても、一顧だにせず「計画通りすすめる」という。異論を切り捨てる強権体質というのが際立っていると思います。
私たちは、安倍政権は、平和・民主主義・暮らしを壊す戦後最悪の内閣だと考えています。安倍政権打倒の国民的大運動を呼びかけたいと思います。
どうする集団的自衛権
政府がどうごまかそうとも「海外での戦争」に日本が乗り出すということ――憲法破壊の「閣議決定」の撤回を求める
島田 集団的自衛権行使容認の「閣議決定」。いま政府は、それにもとづいて関連法の改正案づくりを進めています。この法案提出は来年になります。提出の前、また提出された後、共産党はどのように対峙(たいじ)していきますか。
志位 そもそも、集団的自衛権の行使とは何かということを広く訴えていきたい。
集団的自衛権の行使というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力の行使をする――政府がどうごまかそうとも、「海外で戦争する国」に乗り出すということを意味しています。
その具体的危険がどこにあるかと言えば、2001年のアフガニスタン戦争、2003年のイラク戦争のような戦争をアメリカが起こしたさいに、これまでの(海外)派兵法にあった「武力行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」、この歯止めを外し、自衛隊が「戦闘地域」まで行って軍事活動をやる――アメリカの戦争のために日本の若者の血を流すというのが集団的自衛権の正体です。私たちは、国会(論戦)でそれを明らかにしてきました。そのことを、広く国民に明らかにしていきたい。
私たちは、こんな解釈改憲を、一片の「閣議決定」でやるというのは、憲法を壊すクーデターのような所業であり、絶対に認めるわけにいきません。「閣議決定」の撤回を強く求めていきたいと思います。
集団安全保障への参加は
「集団安全保障」を名目にした、イラク戦争のような無法な戦争への共同行動は許せない
島田 志位さんが問題ありとする「閣議決定」のなかには、集団的自衛権の行使容認と並んで、国連安保理の決議に基づく集団安全保障措置、そこへの参加などについても、これまでよりも可能性を広げた部分というのが含まれています。
志位 そうですね。たとえばイラク戦争、これは日本政府は「安保理決議にもとづく行動だ」と言っているわけです。ところが実際は、安保理決議なしにやった無法な戦争です。こういうイラク戦争のような戦争であっても、自衛隊が共同行動をやっていこうという方向ですから、これはとんでもないことです。
島田 ただ、国連の旗のもとで、国際社会で合意形成が成った場合の活動であっても、共産党はやはり反対していくんですか。
志位 私たちは、憲法9条があるもとで、日本の活動は、非軍事、そして平和外交に徹していくということが大事だと考えています。
「安倍外交」をどうみるか
平和外交の戦略なし、侵略戦争の肯定・美化、米国言いなり――三つの問題点が
島田 安倍総理は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」ということで各国を歴訪している。さきほどの安倍総理の発言を聞くと、アメリカとの関係でさえ相対化されるんだと、このような話もありました。この安倍外交、志位さんはどうごらんになっていますか。
志位 私は、三つの問題点があると思っています。
第一は、たくさんの国をまわっているようですが、もっぱらやっていることは、原発の輸出、武器の輸出、そして集団的自衛権への支持の取りつけです。世界とアジアの平和の秩序をどう築くかという平和外交の戦略はまったくない。
第二は、首相の靖国神社参拝が象徴しているように、過去の侵略戦争を肯定・美化する姿勢が、隣国の韓国、中国との関係悪化の日本側の原因になっている。
第三は、アメリカ言いなり外交の矛盾が沖縄で噴き出している。(沖縄)県民の8割以上が反対し、名護市民が繰り返し4回も「ノー」の審判を下している(名護市)辺野古の新基地建設をごり押しするのは、民主主義の国家では許されません。
「アベノミクス」にどう対応するか
日本経済は悪循環の危険水域に――消費税10%を中止し、企業から家計に軸足を移す政策転換を
島田 経済の問題で、安倍総理が進めるアベノミクス、これをどう見ていますか。
志位 この間の円安による物価の上昇にくわえて、消費税の増税によって、日本経済は「好循環」どころか悪循環の危険水域に入っていると思います。
4月~6月期のGDP(国内総生産)は、年率マイナス7・1%落ち込みました。その最大の原因は何かと言えば、家計消費が19・0%も落ち込んでいることにある。なぜ消費がここまで冷え込んでいるかと言えば、働く人の実質賃金が13カ月連続でマイナスになっています。ここが一番の根本です。
ですから第一に、消費税10%は中止する。
第二に、大企業に対する減税ばらまきはやめて、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革によって財源をつくる。
第三に、285兆円にまで膨れ上がった大企業の内部留保の一部を活用して、大幅賃上げと、そして安定した雇用を増やす。
企業から家計に軸足を移す政策転換が必要だと思います。
社会保障費をどうまかなうか
富裕層と大企業に応分の負担を求める 税制改革、国民の所得を増やし税収増をはかる――二つの道で
中川 視聴者からご意見が来ていまして、「共産党は消費増税に反対しているが、では社会保障費はどのようにまかなうのか」(28歳男性)という問いかけです。どうでしょうか。
志位 二つの道でまかなうということを、私たちは考えています。
一つは、「応能負担」、つまり(負担)能力に応じた負担という原則に立った税制改革を行う。富裕層と大企業に応分の負担を求めます。
中川 消費税という形ではなく。
志位 ええ。法人税、あるいは所得税、さらに「富裕税」(新しい資産課税)ということも考えていますが、やはり、持っているところに、能力に応じた負担を求める。いま大企業の(実質)税負担というのは、実はいろいろな優遇税制の制度があって、低いですから、きちんとした負担を求める。
第二の点は、大企業の内部留保を活用して、働く人の所得を増やす、そして中小企業を活発にする。そのことによって内需主導の経済のまともな発展をつくって、そのことで、税収が自然に増えてくるような道もとりたいと思っています。
経団連の政治献金関与再開
法人税減税、原発再稼働、TPP締結、労働法制規制緩和など財界の要求をカネで買う――企業献金禁止、政党助成金廃止を求める
島田 経団連が5年ぶりに政治献金に関与することを先日発表しました。企業献金も政党助成金もどちらも反対して共産党は受け取ったことがありません。この動きをどう見ていますか。
志位 これは論外ですね。いま、経団連が要求しているのは何かと言えば、法人税の減税、原発の再稼働、TPP(環太平洋連携協定)の締結、それから労働法制の規制緩和で「使い捨て」労働を増やす。財界のもうけのためなら国民の暮らしはどうなってもいいという身勝手な要求を並べています。そうした要求をカネで買おうというのが、今度の決定ですから、私たちは絶対に許すわけにはいきません。
だいたい、企業献金というのは政治腐敗の根源だということで、政党助成金を導入するときに、これを「廃止する」というのが約束でした。ところが企業献金はもらう、政党助成金ももらう。この「二重取り」は、どう考えてもおかしい。
企業献金は禁止する。政党助成金も廃止する。これが必要です。
島田・中川 ありがとうございました。
志位 ありがとうございました。
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