主張
集団的自衛権
国民の反対世論直視すべきだ
安倍晋三首相の私的諮問機関がこれまでの憲法解釈を変更して「集団的自衛権」の行使を容認すべきだとの報告を出し、首相がそれを受け政府・与党での検討に乗り出すなかで、新聞やテレビなどマスメディアの世論調査では、改めて行使容認に反対する国民が多いことを示すものが相次いでいます。ところが一部のマスメディアは、「集団的自衛権行使7割容認」などとまったく逆の結果を伝えています。質問の仕方など世論調査のやり方で違ってくるのは明らかで、世論をゆがめる一部メディアのごまかしの手法です。国民の反対世論は揺らいでいません。
全面行使支持ごく少数
「あなたは集団的自衛権の行使に賛成ですか、反対ですか」という設問に、「毎日」の調査では、「賛成」が39%で「反対」が54%です(19日付)。地方紙などが同日報じた共同通信の調査でも「賛成」は39・0%で、「反対」が48・1%、時事通信の調査でも「賛成」が37・0%、「反対」が50・0%です。国民の多数が集団的自衛権の行使に反対しているのは明らかです。
とりわけ、安倍政権が歴代内閣がとってきた憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認しようとしていることには、「毎日」の調査で「賛成」が37%、「反対」が56%です。共同の調査では「賛成」が34・5%、「反対」が51・3%となっており、「賛成」が38・0%、「反対」が52・1%だった4月の前回調査より「賛成」が減っています。
こうした調査から見れば国民の多数が集団的自衛権の行使にも、そのための解釈改憲にも反対しているのは明らかなのに、なぜ一部のマスメディアの調査では「7割容認」という結果が出るのか。
安倍首相の記者会見のあと調査を実施したのは「産経」とFNNの合同調査ですが、その設問は集団的自衛権について「全面的に使えるようにすべき」か、「必要最小限で使えるようにすべき」か、「使えるようにすべきではない」か、3択で聞くものです。「全面的」と答えた人は10・5%しかないのに、「必要最小限」と答えた59・4%を合わせて、7割が行使容認というのはあまりに乱暴です。
首相の会見前、5月上旬の調査で「71%容認」と伝えた「読売」の調査も、集団的自衛権の行使に「全面的」「必要最小限」などと聞き、「全面的」の8%と「必要最小限」の63%をあわせて71%が「容認」というものでした。集団的自衛権について、いきなり行使は「全面的」か「必要最小限」かと聞けば、「必要最小限」などとあいまいな答えが増えるのもやむをえません。全面的に行使を容認する答えが、「産経」「読売」でも1割にすぎないことこそ注目すべきです。
「戦争する国」への懸念
安倍政権の集団的自衛権の行使は、これまでの憲法解釈を変更する乱暴なものですが、「読売」の調査には解釈改憲への賛否を問う設問さえありません。「産経」の質問は「行使」を支持した人にだけその方法を聞く一方的なものです。
集団的自衛権を行使した場合「戦争に巻き込まれる恐れがある」と思うかという「毎日」の質問に、71%が「思う」と答えています。安倍政権の集団的自衛権行使容認の策動を打ち破るため、解釈改憲とそれによる「戦争する国」づくりの危険を国民のなかに広げていくことが、いよいよ急務です。