政府は1日、憲法の平和主義に基づいて武器輸出を全面的に禁じてきた「武器輸出三原則」を撤廃し、武器輸出を包括的に推進する「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。日本共産党の山下芳生書記局長は新原則を厳しく糾弾する談話を発表しました。
新原則は、武器輸出の禁止によって「国際紛争等の助長を回避する」としてきた根幹理念を放棄。日本が「死の商人」国家になる重大な危険をはらんでいます。
新原則は(1)輸出を認めない場合(2)輸出を認める場合(3)輸出先での管理体制―を規定。(1)では紛争当事国の定義を狭め、米国やイスラエルなど紛争当事者への輸出も容認します。
(2)では「日本の安全保障に資する場合」など、政府の判断次第で相手国をいくらでも拡大できる内容。武器の種類についても限定しておらず、部品・関連技術だけでなく完成品の輸出も可能となります。(3)ではF35戦闘機や「ミサイル防衛」装備など日米が共同開発した武器を、米国が日本の事前同意なしに他国へ売却することも可能になっています。
政府はまた、同日の国家安全保障会議(NSC)で新原則の「運用指針」を決定。(1)武器輸出の可否に関して重要な案件はNSCが決定する(2)武器輸出に関する年次報告書を公表する―などを盛り込みました。
「防衛装備移転三原則」のポイント
(1)国連安保理の措置対象国(湾岸戦争中のイラクなど)以外は米国やイスラエルなど「紛争当事国」でも輸出可
(2)「日本の安全保障に資する」と判断すれば完成品(武器そのもの)でも輸出可
(3)米国などと共同開発した武器は「事前同意」なしに第三国(イスラエルなど)に輸出可
「戦争する国」づくりと不可分
新「武器輸出原則」 山下書記局長が談話
日本共産党の山下芳生書記局長が1日、新「武器輸出原則」について発表した談話は次の通りです。
一、安倍政権は1日、「武器輸出三原則」を撤廃し、武器や関連技術の輸出を包括的に解禁する「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。政府は、これまで武器輸出原則の見直しを要求してきた米国や財界の意向にそって、「ミサイル防衛」の日米共同開発や第三国への輸出容認など、「例外」規定を積み重ねて「武器輸出三原則」の空洞化・形骸化を進めてきたが、今回の措置は、半世紀近くにわたって国是とされてきた原則を放棄する大転換であり、絶対に許すことができない。
一、「武器輸出三原則」は、政府自身が「憲法の平和主義の精神にのっとったもの」とくりかえし答弁してきたもので、81年衆参両院の国会決議で「日本国憲法の平和理念である平和国家としての立場」とし、国是としてきたものである。今回の新原則は、「平和国家としての基本理念及びこれまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持」などとのべているが、武器輸出を禁止してきた原則を撤廃する決定が、憲法の平和原則とその精神を完全に踏みにじることは明らかである。
一、新原則は、「紛争当事国や国連決議に違反する場合は輸出を認めない」としているが、従来の原則で禁輸対象とされた国際紛争の「恐れのある国」が削除され、昨年、例外扱いされたF35戦闘機の国際共同生産で問題となったイスラエルなどへの輸出制限もされなくなる。さらに外国政府以外に国際機関も輸出対象に加えるほか、運用指針で海外での米軍機修理等の役務も提供するなど、国際紛争の助長につながる危険性が限りなく増大することになる。
一、「武器輸出三原則」の撤廃と武器輸出を拡大する新原則は、戦後、日本が武器を輸出してこなかったことで果たしてきた積極的な役割や国際的信頼を自ら傷つけ、掘り崩すことになる。今回の決定は、集団的自衛権行使など、安倍政権が推し進める「海外で戦争する国」づくりと不可分であり、厳しく批判しなければならない。
日本共産党は、憲法9条にもとづく日本の世界に誇るべき立場と役割を投げ捨てることになる今回の方針を厳しく糾弾し、撤回を求めるとともに、安倍政権の「海外で戦争する国づくり」にたいして国民とともにたたかう決意を表明する。