【パリ=浅田信幸】ロシアのプーチン大統領は18日、大統領府で上下両院議員を前に演説し、クリミア編入条約の批准を求めました。ウクライナ南部のクリミア自治共和国とセバストポリ市議会からの編入要請について上下両院と政府に通告しました。大統領による通知は、ロシア憲法に基づく領土編入手続きの一つ。ロイター通信が伝えたロシア大統領府発表によると、プーチン氏は17日、クリミアを主権国家として承認し、編入条約草案を承認する大統領令に署名しました。
大統領令は「2014年3月16日の住民投票で表明された人々の意思を考慮し」「クリミア共和国を主権ある独立国家として承認し、セバストポリを特別市とする」としています。
これに先立ち、クリミアの議会は16日、住民投票の結果を受けてクリミア独立を宣言するとともに、ロシアへの編入を正式に要請することを決定。国連と世界のすべての国に「独立国家として承認」するよう求めました。
また、▽ウクライナ国有資産すべてのクリミアによる国有化▽ロシアのルーブルを正式の通貨として導入▽クリミアに駐屯するウクライナ軍部隊の解散―などを決議しました。
一方、米国や欧州連合(EU)は17日、ロシア政府高官らの資産凍結や渡航禁止などの制裁措置の発動を決めました。
オバマ米大統領は同日、住民投票は「ウクライナ憲法と国際法の明白な違反であり、国際社会から認められることはない」と指摘。EU外相理事会も同日、声明を発表し、住民投票もその結果も認めないと強調しました。
編入・併合強行は平和秩序への攻撃
ロシアのプーチン大統領が18日に表明したウクライナ南部クリミアの編入・併合への動きは、ウクライナの主権を侵し、武力を背景にした領土の変更であり、国際の平和秩序への重大な攻撃です。
分離の要求が検討される場合でも、自決権、領土保全、武力不行使などの国際法の原則が考慮されなければなりません。
ウクライナの一部を構成しているクリミア自治共和国の場合、中央政府との話し合いを抜きにした一方的な分離・独立は、明らかにウクライナ憲法違反でもあります。
ウクライナ憲法では73条で「領土の変更問題は国民投票のみで議決できる」と明示しています。ウクライナのトゥルチノフ大統領代行は、「領土・国境線の変更にかんする決定は全ウクライナの国民投票が必要」と述べています。
今回の住民投票は、クリミア半島にロシア軍が展開し、その軍事的圧力が加えられるなかで実施されました。
こうしたもとで行われた他国領土のロシアへの併合。国連憲章の基準に照らせば決して認められるものではありません。 (西村央)
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