安倍晋三首相が狙う集団的自衛権の行使容認に向けた解釈改憲に与党内から「党内論議が足りない」との批判が噴出しています。
「暴走阻止」
自民党は17日に集団的自衛権問題を議論する総務懇談会を開催しましたが、参加した議員の一人は懇談会の様子を「安倍暴走にストップだ」と表現。議論の場は党内派閥にも及び、近く岸田、大島両派も集団的自衛権についての勉強会を開きます。行使容認に慎重な公明党も勉強会を19日に開催する予定で、与党内の慎重論が拡大しつつあります。
自民党内では脇雅史参院幹事長が16日のNHK番組で「集団的自衛権の行使は憲法9条と相いれない」との認識を示し、時間を区切らず「憲法との関係をしっかり論議する」と発言。参院内でも論議を行う立場を示しています。
また大島理森・前副総裁は自身のブログで「憲法9条の解釈は、半世紀以上に亘(わた)る立法府との対話によって、その内容が確定されてきた。憲法9条というのは、軍事力の統制という意味を持っているので、その解釈は、その重要性に鑑みて、『安定性』、『継続性』、『透明性』が求められる」と指摘しています。
世論が警戒
解釈改憲「容認」を主張する「読売」の世論調査(3月15日付)でも、解釈変更による集団的自衛権の行使容認「賛成」は27%にとどまります。また憲法改正「賛成」が昨年3月時に比べ9ポイント減の42%。「反対」が10ポイント上昇して41%となって賛否が拮抗(きっこう)しています。与党内での慎重論の増大の背景には、安倍内閣の憲法破壊の動きに対する世論の警戒感が反映しています。
17日の総務懇談会に参加した村上誠一郎元行革担当相は懇談会後記者団に、「集団的自衛権を憲法解釈で変えることになれば、政権が変わるたびに解釈が変わる。法的安定性を害するし、国民の信頼を得られない。だれがどういおうと、三権分立、立憲主義に反するもので言語道断」と批判。「憲法9条のもと『必要最小限度』で自衛権を認めてきたが、いくら最小限を緩めても直接攻撃を受けなければ武力行使はできないというのが政府の結論だ」とし、解釈改憲は「憲法順守義務に照らしても絶対やってはいけない、憲政史上に汚点を残す」と語りました。
また、自民党幹部の一人は集団的自衛権について、こう言います。
「戦後の秩序を作ってきた集団的自衛権という言葉は、アメリカが自国の都合で、自国の利益を守るためには世界中どこへでも軍隊を出せるとへ理屈をこねて言ったものだ。その国の依頼があればいいというが、かいらい政権に言わせれば、いくらでもできる。そんなことのために自衛隊を海外に出すべきではない」
巻き返しも
広がる与党内の慎重論に安倍首相サイドでは、総裁直属の機関をつくり、石破茂幹事長、高市早苗政調会長を中心に集団的自衛権問題の意見集約を進める巻き返しの動きを強めています。