主張
武器輸出三原則
軍縮外交の「資産」捨てるのか
安倍晋三内閣は3月中にも、武器輸出を原則禁止した現行の「武器輸出三原則」を撤廃し、新たな武器輸出原則を閣議決定しようとしています。憲法の平和主義に基づく国の基本政策の大転換であり、到底認められません。
紛争の当事国へも
「武器輸出三原則」は、1967年に佐藤栄作首相が三つの地域(▽共産圏諸国▽国連決議による武器輸出禁止国▽国際紛争当事国とその恐れのある国)について武器輸出を認めないと表明したものです。76年には三木武夫首相が政府統一見解として、三つの地域以外についても憲法の精神にのっとり武器輸出を慎むとし、全面的に禁止しました。「平和国家」として「国際紛争等を助長することを回避するため」(統一見解)です。
「三原則」は、83年に米国への武器技術供与を「例外」として認めて以来、なし崩し的に空洞化が進みました。今回、安倍内閣が閣議決定しようとしているのは、昨年末に策定した「国家安全保障戦略」に基づき武器輸出の解禁を「原則」にしようとするものです。
安倍内閣がまとめた新原則の素案は、(1)国際的な平和や安全の維持を妨げる場合は輸出しない(2)輸出を認める場合を限定し、厳格に審査する(3)目的外使用や第三国移転は適正管理が確保される場合に限定する―としています。
(1)の輸出禁止の対象は、「国連決議で禁じられた国」や対人地雷禁止条約などの国際条約に違反する国のみです。(2)の「輸出を認める場合」は、戦闘機やミサイルなどの国際共同開発・生産への参加に加え、国連など国際機関への武器供与も想定しています。
重大なのは、「国際紛争当事国とその恐れのある国」への輸出が認められることです。日本が共同生産への参加を決めている最新鋭戦闘機F35を、周辺国への武力攻撃を繰り返すイスラエルが導入することを念頭に置いています。日本が製造にかかわる戦闘機が他国の人々を殺傷するかもしれません。
安倍内閣は昨年末、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)で、陸上自衛隊の銃弾1万発を韓国軍に提供することを「例外」として認めました。これまで、PKO法に基づく武器弾薬の提供は行わないとしてきた政府の約束を完全に逸脱した暴挙でした。新たな原則の下で、こうした武器弾薬の提供がいつでも可能になります。
「武器輸出三原則」の撤廃は、軍縮問題での日本の国際的信用を掘り崩すことになります。
外務省は、小型武器問題で、「(日本は)武器輸出を行っておらず、輸出を前提とした軍需産業もないことから、国際社会をリードできる」としてきました(『日本の軍縮・不拡散外交』2008年)。同省の軍縮担当官は、「武器輸出三原則」などの施策について「世界の範たるべき」ものだとして、「今私たちが軍縮外交を行う際に、非常に大きな資産となっています。日本が行っているモデルを世界に広めていくことは、軍縮外交の一つの側面」と述べていました(『外交フォーラム』03年9月号、小笠原一郎軍備管理軍縮課長)。
「反対」の声が7割
最近の共同通信の世論調査でも、「三原則」緩和に「反対」は66・8%に上り、「賛成」は25・7%です。日本外交の価値ある「資産」を投げ捨てさせてはなりません。
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