【ワシントン=島田峰隆】沖縄県名護市辺野古(へのこ)に米軍新基地を建設するための埋め立てを仲井真弘多(なかいまひろかず)同県知事が承認したことについて、欧米など著名な学者、文化人、平和活動家ら29人が7日、新基地建設に反対し、沖縄県民のたたかいを支持する連名の声明を発表し、賛同を呼び掛けました。
声明には、歴史学者のジョン・ダワー氏、昨年の原水爆禁止世界大会に参加した米国の映画監督オリバー・ストーン氏や、マサチューセッツ工科大学のノーム・チョムスキー名誉教授、アメリカフレンズ奉仕委員会のジョゼフ・ガーソン氏、ノーベル平和賞受賞者のマイレッド・マグワイア氏、映画監督のマイケル・ムーア氏らが名を連ねています。
声明は、仲井真氏が県外移設を公約していたと指摘し、「承認は県民への裏切りだ」と批判。最近数年の世論調査で7~9割が辺野古への新基地建設に反対してきたとし、「知事の埋め立て承認は沖縄県民の意思を反映したものではない」と強調しています。
沖縄の基地はもともと米軍が住民から土地を強奪してつくったもので、基地があるために今も住民が犯罪や事故、騒音、環境汚染に苦しめられていると指摘。「沖縄の人々は米国独立宣言が糾弾する『権力の乱用や強奪』に苦しめられ続けている」と訴えています。
声明は「沖縄の人々による平和と尊厳、人権と環境保護のための非暴力のたたかいを支持する。辺野古の海兵隊基地建設は中止すべきであり、普天間は沖縄の人々に直ちに返すべきだ」と結んでいます。
世界の識者と文化人による、沖縄の海兵隊基地建設にむけての合意への非難声明(要旨)
私たちは沖縄県内の新基地建設に反対し、平和と尊厳、人権と環境保護のためにたたかう沖縄の人々を支持します。
私たち署名者一同は、2013年末に安倍晋三首相と仲井真弘多沖縄県知事の間でかわされた、人間と環境を犠牲にして沖縄の軍事植民地状態を深化し拡大させるための取り決めに反対します。安倍首相は経済振興をえさに、軍港をともなう大型の海兵隊航空基地をつくるために沖縄北東部の辺野古沿岸を埋め立てる承認を仲井真知事から引き出しました。
辺野古に基地をつくる計画は1960年代からありました。それが1996年に掘り起こされ、前年に起こった少女暴行事件もあり当時沖縄で最高潮に達していた反米軍基地感情を鎮めるために、日米政府は、宜野湾市の真ん中にある普天間基地を閉鎖して、辺野古の新基地にその機能を移転させようと計画しました。辺野古はまれに見る生物多様性を抱え、絶滅の危機にある海洋哺乳動物、ジュゴンが生息する地域です。
仲井真知事の埋め立て承認は沖縄県民の民意を反映したものではありません。知事は2010年の知事選直前に、それまでの新基地容認姿勢を変更し、「普天間基地移設は県外に求める」と言って、新基地反対で一貫していた候補を破って当選しました。近年の世論調査では県民の辺野古新基地への反対は7割から9割に上っていました。今回の仲井真知事埋め立て承認直後の世論調査では、沖縄県民の72・4%が知事の決定を「公約違反」と言っています。埋め立て承認は沖縄県民に対する裏切りだったのです。
在日米軍専用基地面積の73・8%は日本国全体の面積の0・6%しかない沖縄県に置かれ、沖縄本島の18・3%は米軍に占拠されています。普天間基地はそもそも1945年の沖縄戦のさなか、米軍が本土決戦に備え、住民の土地を奪ってつくりました。終戦後返還されるべきであったのに、戦後70年近くたっても米軍は保持したままです。したがって、返還に条件がつくことは本来的に許されないことなのです。
沖縄は1972年に日本に「返還」されたものの、基地がなくなるとの沖縄住民の希望は打ち砕かれました。そして今日も、沖縄県民は基地の存在によってひき起こされる犯罪、事件、デシベル数の高い航空機の騒音や、環境汚染による被害を受け続けています。
沖縄の人々は、米国の20世紀における公民権運動に見られたように、軍事植民地状態を終わらせるために非暴力のたたかいを続けてきました。
私たちは、沖縄の人々による平和と尊厳、人権と環境保護のための非暴力のたたかいを支持します。辺野古の海兵隊基地建設は中止すべきであり、普天間は沖縄の人々に直ちに返すべきです。
辺野古新基地反対 声明発表の欧米29人
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に反対する声明に名を連ねた欧米の29人(1月7日現在)は、次の通りです。
ノーマン・バーンボーム
ジョージタウン大学名誉教授
ハーバート・ビクス
ニューヨーク州立大ビンガムトン校歴史学・社会学名誉教授
ライナー・ブラウン
国際平和ビューロー(IPB)共同会長、国際反核兵器法律家協会(IALANA)事務局長
ノーム・チョムスキー
マサチューセッツ工科大学言語学名誉教授
ジョン・W・ダワー
マサチューセッツ工科大学歴史学名誉教授
アレクシス・ダデン
コネチカット大学歴史学教授
ダニエル・エルズバーグ
核時代平和財団上級研究員、元国防総省・国務省職員
ジョン・フェファー
政策研究所(IPS)「フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス」共同代表
ブルース・ギャグノン
「宇宙への兵器と核エネルギーの配備に反対する地球ネット」コーディネーター
ジョゼフ・ガーソン
「アメリカフレンズ奉仕委員会」平和と経済の安全保障プログラム部長、政治学・国際安全保障学博士
リチャード・フォーク
プリンストン大学国際法名誉教授
ノーマ・フィールド
シカゴ大学東アジア言語文明学部名誉教授
ケイト・ハドソン
英核軍縮運動(CND)事務局長
キャサリン・ルッツ
ブラウン大学人類学・国際問題学教授
ナオミ・クライン
著述家、ジャーナリスト
ジョイ・コガワ
作家、『オバサン』(和訳『失われた祖国』)著者
ピーター・カズニック
アメリカン大学歴史学教授
マイレッド・マグワイア
ノーベル平和賞受賞者
ケビン・マーティン
「ピース・アクション」事務局長
ガバン・マコーマック
オーストラリア国立大学名誉教授
キョー・マクレア
作家、児童文学者
マイケル・ムーア
映画監督
スティーブ・ラブソン
ブラウン大学名誉教授・米陸軍退役軍人(沖縄・辺野古に1967年から68年まで駐留)
マーク・セルダン
コーネル大学東アジアプログラム上級研究員
オリバー・ストーン
映画監督
デイビッド・バイン
アメリカン大学人類学部准教授
ロイス・ウィルソン
世界教会協議会前総会議長
ローレンス・ウィットナー
ニューヨーク州立大学アルバニー校歴史学名誉教授
アン・ライト
元米陸軍大佐、元米国外交官
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