原発の新規制基準の審査をめぐり、原子力規制委員会による重大な“手抜き審査”の懸念が9日までに浮上しました。規制委は、原発の重大事故対策が有効かどうかを評価するため、事業者が提出した結果をチェックする独自の解析、いわゆる「クロスチェック解析」をいまだに実施せず、今後実施するかどうかも決めていませんでした。日本共産党の笠井亮衆院議員の調べで判明したもの。
クロスチェックなしでは、有効性の確認が事業者任せになってしまいます。しかも、福島第1原発の事故分析などで用いるコンピューターシミュレーションのソフト(コード)の信頼性も揺らいでおり、審査の根本が問われています。
現在、7電力会社から9原発16基の審査の申請がされ、うち10基の審査が進んでいます。
昨年7月に施行された新基準は、事業者に原発の「重大事故対策」とその有効性を評価するよう新たに求めています。そのため事業者は、全電源喪失や配管が損傷した場合などを仮定し、コンピューターを用いて原子炉の温度や圧力などの変化を計算。その際、消防ホースによる注水などによって、大規模な放射性物質の放出を食い止められるかを確認します。
旧原子力安全委員会や旧原子力安全・保安院は、設置許可や工事計画認可の審査などで、事業者が提出した解析結果の妥当性を評価するため、一部で独自に解析を行っていました。事業者が解析に用いたコードとは異なるコードで解析することで、事業者による解析の不具合や入力ミスなどが過去に見つかっています。
この問題をめぐっては、さらに、解析に用いるコードの信頼性にも疑問符が付いています。東京電力が昨年12月13日に発表した福島第1原発事故の未解明点の調査報告は、2号機の溶融燃料の落下を解析したコードで「再現は困難…モデル改良による解析の信頼性向上の努力が必要」と指摘しています。
ここで指摘されたコードは、申請した事業者の解析でも幅広く適用されています。
福島事故以前より大改悪
元原子力安全委員会事務局技術参与・滝谷紘一氏の話 私が、新基準適合性審査に提出された電力会社の申請書とその説明資料に目を通している中で、過酷事故の解析結果が判断基準を満たしているという結論に疑問を持つ解析ケースがいくつか出てきました。しかし、資料をただ見ているだけでは、疑問点を定量的に明らかにすることは甚だ困難です。そこで、規制委員会がクロスチェック解析を行い、その結果を公表することに大きな期待を持っていました。規制委員会がそのクロスチェック解析をやらないで、電力会社の解析は妥当であると判断することになれば、それは由々しき手抜き審査であると言わざるをえません。
福島事故以前に原子力安全・保安院と原子力安全委員会が安全審査を行っていた際には、事業者による事故解析の妥当性を綿密に調べるために、クロスチェック解析が導入されました。その当時と比べても、大変な改悪になります。
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